釜山の夜、謎の女について行ってみた。|逆ナンは唐突に
薄暗い部屋に衣擦れの音が囁く。女は一定のリズムで体を上下に動かし、私もそれに合わせる。お互い息があがっているが、それでもなお動きを止めようとしない。恍惚感が部屋を満たす。時刻は零時を回っている。
はるか祖国を離れ、なぜ私は釜山で知らない女とこんな場所にいるのだろう。それも出会って一時間にも満たない女と。
ことの発端は23時、釜山のホテルで眠りから目覚めた私が食べ物を求めて散歩に出かけたことから始まる。(冬眠から目覚めた熊をイメージしてもらうとわかりやすい)
釜山の中心街は夜11時でも活気がある。まだ店の灯りはついているし、電飾も多い。若者や観光客が屋台でおでんをつついたり、コンビニで酒を飲んだりしている。
私もCUマートで買ったブドウグミを頬張りながら往くあてもなく歩いていた。
もう20分くらい散歩したからそろそろホテルに帰ろうか。どうせなら通ったことのない道で帰ろう。
と思って人気の少ない通りに足を踏み入れた矢先、誰かに声をかけられた。イヤホンをしていて聴き取れなかったので尋ね返す。若い女性が韓国語で話しかけてきていた。しかし、日本語さえ稚拙な私が韓国語を話せるわけがない。
その代わり、私にはオーストラリア仕込みの英語がある!私は、
sorry? I don’t understand Korean.(え?韓国語わかんないんです)
と、いつものフレーズで返す。もう韓国にきて5日目だったので韓国語で話しかけられることには慣れていた。
女性は少し困った顔をし、スマホの翻訳機に打ち込み始めた。あまり英語は得意ではないようだ。その間に女性を素早く観察する。
白のダウンジャケットにベージュのパンツ。いたって普通の服装だ。綺麗な髪はポニーテールにされており、若い印象を与える。顔立ちも普通だが、瞳には潤いがあって魅力的である。全体的に愛嬌がある感じだ。
彼女がスマホの画面を見せる。
そこには予想外のことが書いてあった
続く
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