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コンサルタントの加点回帰 Vol.4:素朴な違和感と「患者力」の可能性

本シリーズの第1回でも触れた「患者さんをはじめ社会一般の方々に医療/健康に関する情報を正確かつ分かりやすく届け、適切な判断・行動につなげる」は、私にとってPR・コミュニケーションコンサルタントとしての仕事ではなく、一生取り組んでいくライフワークだと捉えています。実際、患者さんとのつながりや患者力に関するブログ記事を何度も発信していますので、その一部を今後数回に分けてご紹介します。まずは製薬企業からPRコンサルファームに転職したきっかけでもある「医療における素朴な違和感」から始めます。

【タイトル】
素朴な違和感と「患者力」の可能性(2009年9月8日発信)

【本文】
「日本人は世界一厳しい消費者といわれているのに、病気や治療のことはなぜ医師におまかせなのだろう?」「国内医師数、薬剤師数はともに約25~30万人なのに対して、なぜ製薬企業のMR(医薬情報担当者)が約5~6万人もいるのだろう?」「情報通信技術の進歩により、患者さんや一般の方々も医療/健康に関する情報入手が容易になったのに“情報の非対称性”が解消されないのはなぜだろう?」など、“日本の医療”について改めて考えると様々な疑問が湧いてきます。

医療PRの世界に身を置く私が違和感を覚えるのですから、一般の方々であればなおさらだと思います。

もちろん、これらの背景には“医療”の特殊性が存在することも事実です。
実際、私もMR時代に「医薬品は“有効成分”と“正確な情報”が揃ってこそ、製品として成立する」という極めて重要なことを前職の上司から教わり、医療現場では常に最先端の情報が必要とされていることも身をもって経験してきました。よってMRの存在意義を否定するつもりは全くありません。

しかしながら、「もっと患者さんが医療や健康のことを知れば(=患者力が向上すれば)、医師、薬剤師、看護師などの負担は軽減されるはず」「製薬企業がMR活動の比率を減らし、社会一般向けの疾患啓発活動により注力すれば潜在患者さんの早期受診につながるかも」などと漠然と考えていたのも事実です。

当時はそこで止まっていましたが、今は「疾患啓発行動などによる患者力向上」は、①自らの病態を正しく知り、適切な医療を受けたいと考える患者さん ②深刻な疲弊状態にある医療現場 ③医療費抑制策を模索している政府や厚労省 ④マーケティング戦略の根本的見直しが迫られる製薬企業 のいずれにもメリットのある取り組みだと確信しています。

先日、知り合いの患者さんに似たような話をしたところ「そのとおり。患者力で日本の医療は変わるよ !!」という心強い言葉をいただき、大いに勇気づけられました。

もちろん長く険しい道のりですが、医療現場で一つでも多くの笑顔が生まれることを願いつつ、医療PRを通じて患者力の向上に貢献していきたいと考えています。

【2020年8月29日の書き加え】

上記記事を書いた2009年以降、日本製薬工業協会(製薬協)による「患者団体との協働に関するガイドライン」の策定、多くの患者団体の設立・体制強化、医療機関における患者支援部門の設置、「第1回医療者がリードする患者力向上ワークショップ」の開催 など、患者さんの支援や患者力の向上を目的とした取り組みが活発化していることは間違いありません。

また、健康日本21を中心とした健康寿命延伸に対する取り組み、セルフメディケーションの推進など、医療/健康に予防も加えた啓発活動も質量ともに充実しています。

そんな中、PRや啓発活動に取り組んでいくうえで私が特に注力したいのは以下の3点です。

①患者さんや社会一般の方々一人ひとりにとって、自分に合った正確な情報が見つかりやすい仕組みをつくる

②特に治療方針については、患者さんやご家族の人生観や価値観に基づく選択ができるよう、多面的な情報収集ができる仕組みをつくる

③情報を入手した患者さんの行動変容につながるよう、具体的な行動に移すために参考となる情報も併せて伝えるようにする

今回の記事を読み返し、私自身がこの10年間に経験したことや学んだことを今後の活動に生かさなければならないと強く感じました。甚だ微力ではありますが、明るい兆しも見えていますので今後も精一杯取り組んでいきます。

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