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秒給0.3円

久しぶりに小説を読んだ。

三島由紀夫の『命売ります』という本で、漫然と生きていることに対してどこか空虚に感じた男が、自らの命を他人に売ることを考え、それを見つけた人たちによって翻弄されていくストーリー。

本当に久々に小説を読んだこともあってか、めちゃくちゃ面白かった。多分常日頃から読書をする経験があるのならまぁまぁ普通の面白さなのかもしれないけど、それでも面白かった。

書かれたのがもう何十年も前の作品なのであまり伏せないけど、自分の命を一度捨てた男がどんどん死を感じなくなるのではなく、逆に死に対して敏感になっていく過程がもう流石文豪だと感服してしまうほどの面白さ。

そして何が面白いって、この男は自分の命に値段をつけない。つまり時価で売っていたこと。

客が支払う金額によって価値を感じるような受動的な生活をしているわけでもなく、ただ淡々と自分の値札を一瞥するかのような態度で他人に生を委ねていく姿に悲壮感はなく、むしろ生を謳歌しているかのような印象を感じた。

まぁ色々あって最後まで考えさせられるのですが、これでもしかしたら読むきっかけになる方がいるかもしれないので黙ってます。

バイトを始めた話をここ数日で何回か書いている。

昨日給料が出た話もした。

時給が1100円。あくまでも60分の自分の労働力に対する値段であって、これをさらに細かくしていくと、1分あたり18円、1秒あたり0.3円が自分の給料となる。

労基的にはアレだけど、15分区切りの時給になっているから実際は15分あたり275円の給料となる。

つまり、自分が働くにあたっての最低ラインとしては0.3円/秒で働いていることであり、どんなことをしていてもそれは変わらない。

たとえ重労働であっても立っているだけでも、その0.3円に変動はない。

でも体感的には0.3円の価値は変わらなくてもそれをどう感じるかは間違いなく違うだろう。

0.3円がめちゃくちゃ充実しているかもしれないし、逆に無駄に感じてしまうかもしれない。

いわばこの0.3円が自分の資本主義におけるバイト先での価値となるだろう。

となると、仮に新卒となって月給が手取りで18万円だった場合、完全週休2日制で9時から17時の労働時間だった場合、1ヶ月を30日として労働日が22日なので8時間労働を22回するから176時間。

18万円割ることの176時間。

時給は1023円だった。

どうして自分のバイト代よりも社員として働く給料の方が時給換算したら低くなってしまうのだろう。まぁ手取りで換算してるからというのは置いておいて、それでもこれは自分でも怖くなってくる。

そう考えたら別に仕事ってそこまで自分にとってのやりがいを得られるわけではないし、それこそ本当に勤務中くらいしか仕事について考える時間は設ける必要がないのかもしれない。

褒められるべきではないけれど、自分は基本的に仕事中とプライベートは完全に分けているしある程度なら仕事中に言われたことは退勤したら綺麗さっぱり忘れられる都合のいい頭を持っている。

メンタルが強いわけでもないし、怒られたらそれなりに落ち込む。でもまぁバイトだしなぁと心のどこかで開き直ることができているのは自分の強みなのかもしれない。そんなことを考える。

実際に怒られる時間を考えると仮に1分怒られても(18円支払ってこの人は怒ってるのか…)と、どこか客観視すると面白いことになってしまう。

汚い話になってしまって申し訳ないけれど、仮に業務中にトイレに行った場合は3分かかったとして自分の尿が54円にまで価値が上がってしまうと言っても過言ではな、過言だった。

分給で考えると自分が選ぶ選択の質を求めてしまうようになった気がしなくもない。

となるとですよ。となるとです。

1000円の本を買ってそれを読むとなると、まぁ3時間くらいはかかるでしょう。時給を1100円とするのであれば、3300円の価値がその読書にはあるのかとなってしまう。

1000円の本を仕入れた結果3300円分の経験が得られた。実質無料、俺銀行俺通貨によればむしろ2300円プラスになってしまった。

まぁその理屈を追求するとなると自分の1日は26400円にしかならないんですけどね。

ちょっと興味本位でイーロンマスクの給料と時給と分給を調べてみた。

どうやら2020年の報酬は7300億円らしく、これもとりあえず月22日働いて9時から17時までの8時間働いていたという前提で換算する。

7300億円割ることの12ヶ月、そして22日、さらに8時間。

時給3億4560万円でした。分給だと576万円ですね。秒給だと9万6000円でした。

1秒およそ10万円。多分外国だからバカンスとかを考えると実質的な労働時間は減るだろうからこれよりも高いはず。

えっ怖。相対的な自分の資産的価値が引くほど下がった気がしている。多分バイトにしてはそれなりにいい時給のはずだけど、失礼だけどとてつもなくショボく見えてしまったのは気のせいだろうか。

ということはマスクさんが10ドルの本を買って1時間かけて読んだらそれはもう3億超えの本になってしまうのでは…そんなバカなことを考えるから自分の分給が18円なんでしょう。

逆に何すれば分給が3桁の100円を超えられるんでしょ。

分給100円ということは時給が6000円。

ということは、(18+x)・60=6000が成立すると。

(18+x)=100なのでx=82

82円分のパフォーマンスを上げるって、無理では?となると新卒の時給が1000とするとその6倍のパフォーマンスをすることができる人間ってどの役職くらすになるのだろうか。むしろパフォーマンスとかよりも責任とかの方が影響するのかも。

うーんわからん。

自分の時給を上げることがもしかするとこの自由主義や能力主義社会における終着点なのかも。そんなことをふと考えた。

とりあえず今日はこの辺で終わっときます。

ではまた明日。『命売ります』、めっちゃおすすめです。

って思ってたけど「これ違うわ!!」と投稿前に閃いたから投稿前の追記です。

この分給を上げるって、別に60分1時間の時給で考えていたからそうなっていただけで、例えば投資をやっていて30秒で1万円の利益が出たらそれは分給5000円じゃないか?

結局この給料の考え方って労働時間と時間内における生産量の関係を給料としているわけで、30秒で1万円の理屈だと秒給は333円へと跳ね上がる。

だとしても分給を2万円とし、時給を120万円とするのは筋が通るわけではないだろう。だって実際にコンスタントに30秒に1万円のペースで稼げているわけじゃないし。

となるとやっぱり自分の能力を示すにはその瞬間の秒給をもとに考えた方が分かりやすいのかも。年収が高くても365日15時間働いてその金額だったとしたらそれこそどうなの?って話だし。

これ残業代で給料を増やそうとすることにも繋がるような、繋がらないような。

ひとまず今この時間においてこの記事を書いている自分の秒給は0円です。

そんなわけで今度こそ終わります。

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