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読書感想文がいまだに書けないけど感想と紹介は書けた

 読書感想文が嫌いだった。

 1200字なんて今になれば大した文量ではないし、ちょっと本気を出せば30分もかからずに
書き終わる。それに文字を書くのは好きだし現に今こうして毎日noteに自分の書きたいことを書いていることが定着してしまった。

 それでもどうして嫌いだったのか、自分がその本を気に入った理由を言語化することが苦手だったからなのか、はたまた自分の感動は自分の中だけに閉じ込めておきたいと思ったからなのか、それとも1200字程度ではその本の良さを書き切ることが出来ないと思っていたからなのか。今でもわからない。

 中学生のころは真面目に考えて書いていた。それがどうした、高校に入ってからは毎年読書感想文が宿題に出るシーズンになればメルカリに自作小説のカテゴリに「読書感想文ガチャ」として何本か書いた読書感想文を入れて売っては送ってを繰り返していた。数日で運営からBANされた。ちょうど宿題代行が流行ってニュースになっていた時期だった気がする。

 悔しくて次の年は「誰でも書ける読書感想文の書き方」と銘打った小冊子の中にこれを適当に写せと書いて隣に読書感想文を載せたものを売り続けていた。当然のようにBANされた。

 それ以来ものぐさな同級生から依頼を受ける作文ゴーストライターとして今でもちょくちょく収入を得ている。自分が落選して自分が書いた友達の作品が入賞していてむなしくなった経験はあるだろうか?

 さて、どうして読書感想文について書こうとしているのか。

 その答えはこの本にある。

 先日発売されて2日後にやっと我が家に届いたにゃんたこ先生のエッセイ本、『世界は救えないけど豚の角煮は作れる』の本の感想を書く予定だったから。

 あのプライムと名乗っていたくせに発売日から2日も遅れて配送してくれたAmazonに感謝をしつつさっき読み終わった。

 本当はこの本についての感想を書くつもりだった。でもこんな自分ではそれらしき感想を書いても薄っぺらいものにしか感じられなくなってしまう。

 いやはや、これこそ自分が11月の終わりに予約して待ち続けていたものだったんだ。

 このにゃんたこという人について少しだけ説明すると、Youtuberをしている女性としか今は説明が難しい。

 まぁとりあえず観てくれとしか言いようがない。

 これまでに自分が紹介したyoutuberの傾向が掴めてきた人も多いんじゃないだろうか?

 まぁ1人しか紹介してないから多いも何も無いんだけど。

 今酒ハクノっていうバーチャルyoutuber、いわゆるVtuberってやつをしている人なんですけど、この人を褒めちぎってるいわばダイマ記事です。酒カス系Vtuberの彼女、コンスタントに面白いのでおすすめです。この記事から飛べるのでよかったら観ていってください。ハマる人には、ハマる。

 さて、体感4年前あたりからにゃんたこの動画は観ている。古参ファンを名乗ってもいいだろう。どうも、古参ファンです。

 まだまだ酒のさの字すらない世界に生きていた中学生?高校生?の自分にとっていつかしてみたいことリストの中に「かちわり氷の中に酒入れて飲むやつ」・「ビニール袋に直接ハイボール入れて飲むやつ」をぶちこんでしまった原因になった人です。

 どうして彼女の動画を好んでしまったのか? その理由は至って簡単で、どんなに退廃的で自堕落で明日の自分のことを顧みないことをしている動画でも、字幕に書かれた言葉たちが陰鬱な午前1時過ぎの自分を適当に肯定してくれていた気がしていたから。

 それから今に至る。

 まだあと数ヶ月酒が飲めないけれど、彼女と同じ空気を呑んでいることはあるだろう。とんでもない酒豪なのか、酒カスなのかは分からないけど、どこかで見かけたら適当に買った缶酒片手にお礼を言いたい。

 食堂でバイトしてる話はご存知でしょうか?

 まぁ、してるんですよ。もし気になっている人がいたら100日くらい前の記事を読んでもらえると分かるかと思います。ここで引用するほどのもんでもありません。

 そんでもって割と前ににゃんたこのパーカーを着ている学生が注文してくれた時、思わず「にゃんたこ、いいですよね」って言ったんです。同族嫌悪みたいな目をされたので悔しかったから注文された豚カツ、とびきり古いカツとしなびたキャベツを盛りました。きっと今なら時効でしょう。

 さて、そんなにゃんたこが書いた初のエッセイ本。

 もっとちゃんとそれっぽい感想文を書きたかったのになんでこうなった。

 色々引用したい文章とか山ほどあったのに、それを自分が使ってしまうと途端ににゃんたこの形をした何かに変わってしまいそうで少し切なくなる。

 別に独特の表現がされているわけではない。村上春樹に寄っているわけでもない。流行りの大きい文字でそれっぽい本の形をしたカタログになっているわけでもない。(個人的には文字が小さい普通の本だったところが好きです)

 それでも、それでもこの文章はにゃんたこのなのだと分かるにゃんたこチックさが散りばめられた本。

 どのタイトルを巡ってもどこか自分もそうかもしれないと錯覚できる安心感が約束されていた。

 この話が好きだ。このシーンが感動した。みたいなことを読書感想文なら書くだろう。大体そうする、自分はそうしてきた。でもこの本はそんな安っぽいありきたりな言葉でまとめるには気が引ける。

 そんなパック詰めされて捌かれきった脂もトリミングされてる豚肩ロースみたいな文章はいらない。角煮にして美味しいのは身でも脂でもない。角煮そのものなのだから。

 強いて好きな話を挙げるならどうしようか。欠損が美しさを際立たせている。みたいなことを書いていた『欠けたものほど美しい』、一瞬を閉じ込める芸術について書かれた『ウィリアム・ターナーと救済』とかが自分にとって一際強く輝きをもって飛んできてくれた。

 ネタバレになるようなことは書きたくなかったけど、この言葉を添えればどうして自分が彼女のことが好きなのか分かってもらえるだろうか?

「永遠を生きることのない私たちは、生きることで一歩ずつ、死に近づいていく。そんな私たちに、芸術だけが永遠を与える。芸術だけが死を閉じ込められる」

「芸術は救済だ。そして、永遠の証明だ」

 そうだよ、これだよ。この一発で憧憬や情景を脳に叩き込んでくれるものが欲しかったんだ。

 日常のなんてことないことに感情と思考を織り交ぜたヴェールが被さり、にゃんたこのエッセイは完成する。

 そうして今日も、最近あんまり更新されなくなっている彼女の動画を待ち焦がれている。

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