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苦手な音が我慢できない子どものために


普段、私たちは、常に様々な音に囲まれて暮らしています。
現代の生活では、その中に『不自然な音』も沢山含まれています。

でも私たちは、自分が関心のある音以外、
つまりほとんどの環境音を『気にしない』『無いものとする』
と、いう感覚を身につけて、
普通に会話したり、勉強したり、仕事をしたり、
と、いう日常生活を送っています。

しかし、聴覚が過敏な人にとっては、エアコンや電気の音でさえ、
耐えがたい騒音と感じて、苦痛で仕方がないということがあります。
そのような音の洪水の中で、何かをすること自体が、
我慢に我慢を重ねていることになります。


例えば、教室でノートを書いている時に
『もう少し早くできますか?』
と、優しく言ったのに、怒って暴れてしまうということがあったとします。

その時、ほとんどの人は、『もう少し早くできますか?』
と、言われた、その言葉『だけ』が原因だと思ってしまうのですが、
実際は、
・不快な音の洪水
・その中で困難な文字を書く作業
・急かされた過去の記憶の苦しみ
・教室の人工的な匂い、
など、複数の不快さがいくつも重なってしまったということが多いように思います。
その場合、不快な要素を一つでも多く取り除くと、上手くやっていけることがあります。
 

『この子は、ひょっとしたら様々な音への過敏があるかも知れない』
と、いうことを頭に置いて観察していると、見えてくるものがあります。

例えば、その子が掃除機の音が極端に嫌いだとします。
『それぐらい、大した事ではないのだから、我慢しなさい』
と、言われて一生懸命我慢するのだけど、急に耐えきれなくなってしまうことがあるかも知れません。
また、最初から、全く耐えられないと、耳を塞いだり部屋を飛び出したりする子もいます。

その時、『この子は掃除機の音がものすごく嫌いなんだ』と、いうことをしっかりと意識するだけで、解決策を考える事ができます。

その時に、自分が一番嫌いな音、どうしても我慢できない音を思い浮かべます。
黒板をひっかく音かも知れません。
我慢して、その音を繰り返し繰り返し、聴いてみます。
出来れば、その中で難しい仕事を続けてみます。
これは、本当に苦しいというか、無理ですよね。
まず、そういう体験を実際にしながら、何をするべきかを考えます。

『この子は、こういう障害だから、訓練して、この音に慣れさせなければいけない』
と、いう考え方があります。
どんなことでもそうなのですが、子どもに何かさせたいと思う時は、
まず自分でやってみることが大切です。
自分自身が一番苦手な音を繰り返し聴くことによって、
体と心と思考に何が起こるかを観察してみます。

それがとても良い方法だと心から確信することはできないはずだと思います。
そうであれば、子どもを苦手な音から、しっかり守ってあげてください。
 

例えば、子どものいる時には、掃除をしない。
と、いう方法があるかも知れません。

そんな訳にはいかないという場合、防音のイヤーマフやデジタル耳栓などを試してみるのもいいかもしれません。
会話や、授業などはしっかり聞こえますが、不快な雑音は取り除いてくれます。
とても多くのお子さんが、これによって、かなり快適に過ごせるようになるのを観てきました。

私自身も、様々な場面でイヤーマフや耳栓を試してみましたが、
そこで気付くのは、私たちが、普段どれだけ沢山の雑音、騒音に囲まれて暮らしているか、ということです。

学校の中は、案外、騒々しくて驚きます。
特に体育館とかは強烈です。
電車や車もかなりの音である事に気付きますが、スーパーや電気製品店はすごいですよね。
『静かなこと』を売りにするスーパーとかあると、流行る気がするんですがどうでしょうか?
それは、なかなか望めないので、子どもの耳を守ってあげる事が第一だと思います。

『一生、そのままだと大変じゃない?』
と、思われるかも知れませんが、この問題を改善するためにも、
『最初は、不快な音を遠ざける』と、いう事が必要だと思っています。
子どもを苦手な音から守りながら、平衡感覚を育てます。
 

聴覚過敏がある子どもは、聴き取りに苦手がある事が多いのですが、
聴覚が未熟である場合は、平衡感覚に幼さがある事がよくあります。

片足立ちで動かずにいる。
つま先立ちで静止する。
整った字や形を描く。
算数の計算をする。
こういった事が難しい場合、子どもに平衡感覚の未熟さがあると考えられます。
アセスメントをしてみると、回転の方向、空間における三方向の不随意運動の問題を同時に持っている事が、とてもよくあります。

まず、最初に、過剰な聴覚情報から守る。
そして、平衡感覚の成長を促していく。
そのようにすると、聴覚が整った形で成長していきます。

聴覚の過敏も、平衡感覚の問題も、
『これは障害だからこうなんだ』と、思うと、
そこで行き詰まってしまいます。

このような子どもは、幼い子どもがみんなそうであるように、
体の一部にまだ幼さが残っているということがとても多いのです。
そこを見極めて、働きかけていく時、その幼さは発達段階の順番通りに成長していきます。

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