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伝わる!ナレーション原稿(コメント)の書き方

映像といえばビジュアルの方にばかり注意が行きがちですが、映像作品は、映像と音声の2つの要素で構成されます。
音声は、映像と同様に映像コンテンツを支える重要なファクターです。
中でも、ナレーションは重要です。
映像を生かすも殺すもナレーション次第という場合もあります。
今回はナレーション原稿、いわゆる「コメント」の書き方をご紹介します。

ナレーション≒コメントとはなにか

テレビ番組など、情報やメッセージを伝える映像コンテンツにとって、ナレ原=コメントは極めて重要な要素となります。
一方で、ナレーションだけで全てを説明しようとすると、なぜか単調で飽きやすいコンテンツになったり、説得力に欠けたものになったりします。
言葉だけで成立する活字メディアと違い、映像メディアは絵(ビジュアル)と音と言葉(意味)が組み合わされて一つのメッセージを放ちます。
そのため、ナレーションが全面に立ち過ぎると、絵や音が添え物のように見えてしまいます。
コメントは、活字メディアの文章と異なり、絵や音とどのようにバランスをとり、補完し合い、相乗効果を生み出すかを計算しながら書くことが求められます。

正しい日本語を書く

まず何はともあれ、映像にあてるナレーションである前に、正しい日本語であることが大切です。
当たり前のことですが、昨今の放送に流れている番組でも、日本語として間違っているナレーションが多々あります。
特に注意したいのは、以下のような点です。

➀主語と述語がきちんと呼応している
「中村教授によると、〇〇〇〇〇~と言った」
のように、主語と述語が呼応していないと、分かりにくい文章になります。
この場合は、「中村教授は、〇○〇〇〇と言った」もしくは「中村教授によると、〇〇〇〇〇ということだ」となります。

②主語と述語、修飾語と被修飾語をなるべく近づける
「田中さんは、後藤さんが、木村さんはずるい人間だ、と言うのを黙って聞いていた」
これは、文法的に間違いではありませんが、音で聞くと大変理解しにくい文になっています。
この文では、田中さん→聞く、後藤さん→言う、木村さん→ずるい人間だ、という関係になります。
それぞれセットになる単語が
なるべく近づいていると、意味が伝わりやすくなります。
「木村さんはずるい人間だ、と後藤さんが言うのを、田中さんは黙って聞いていた」
とすれば、声に出して読んでみても、意味がすっと頭に入ってきます。

音で聞いて分かりやすい日本語で書く

ナレーションは、音に出して分かりやすいかどうかが、最も重要です。
ここが活字の小説やエッセイ、記事などと異なる点です。
声に出して理解しやすい文章にするために、以下のような点を気をつけると良いでしょう

➀一文は短く
どのような文章を書く時にも言えることですが、一文を短く切っていく方が、分かりやすくリズムの良い文になります。
特に声に出す場合は、復文や重文で書くと、文の構造が複雑になってしまいます。

②漢字の熟語より和語を多く使う
育成する→育てる、多数の→多くの、旧来の→古くからの、など、声に出して読む場合は、なるべく熟語より和語、音読みの言葉より訓読みの言葉を多く使う方が聞き取りやすくなります。

ナレーションは映像と現場音を補完する

ナレーションは、映像と現場音との組み合わせで初めて成り立ちます。
主人公へのインタビューや会議シーンの会話のやりとりなど、ロケ現場で録れた音は、リアルな説得力を持ちます。
そうした現場音をうまく活かしながら、全体を通して心地よい音の流れを生み出すように、コメントの量と内容を設計します。

大雑把に言えば、本人の口から言わないと説得力のないことは、インタビューや現場音を使います。
例えば、主人公が体験したことについての感想や印象などは、本人の口から聞きたいものです。また会社社長としての社の方針や見解なども、本人が言うからこそ情報としての価値が出てきます。

一方、取材すれば誰でも伝えられる情報などは、ナレーションにした方が分かりやすく伝わります。
例えば、事件の経緯や人物関係、数字やデータなどの客観的な情報などは、練られた無駄のないコメントを訓練されたナレーターが読むことで、理解しやすくなります。
また、インタビューや現場の声を使いたいが、それだけでは意味が不十分な時に、前後にナレーションで状況説明や補完情報を打ちこみます。
こうして生の現場の声を、より説得力のあるものにしたり分かりやすくしたりするのも、ナレーションの大きな役割です。

紙芝居にならないように書く

初心者が陥りがちなのが、いわゆる「紙芝居」と言われるタイプの編集とナレーションです。
これは、ナレーションだけで全て理解できるようにコメントを書き、その内容にはめ込むように映像をつないでいくやり方です。
これは、内容を理解はできますが、たいがい面白みのないものになります。
活字ないし音声のみで理解できるので、映像が添え物になってしまうからです。
映像には映像なりの編集の文法があります。
映像だけを見ても、ある程度面白みが伝わる編集がまず先にあるべきです。
そこに寄せていくようにナレーションを補完的に打つのが、魅力的な映像作品の作り方です。
多くの場合、ナレーションはあくまで「脇役」と心得るべきです。

グラフは丁寧に説明を

映像作品の中で、グラフや図表を使う時には、ナレーションに注意が必要です。
グラフや図表は多くの場合、情報がたくさん詰まっています。
それを限られた秒数の間目で見ただけですべてを理解するのは、至難の業です。
それを補足するのがナレーションの重要な役割です。
このグラフは何を表したグラフなのか。
グラフのどの部分に注目してほしいのか。
そこから何が分かるのか。
そういったことを順を追って説明していきます。
そうでなければ、見る人は「難しいものを見せられた」と思うだけです。
もちろんその一方で、グラフや図表を作る時に情報を最小限にとどめたり、矢印や点滅などで注目点を示したりすることで、視覚的にどこを見て良いのか誘導してあげる工夫も大切です。

まとめ

ナレーションは、映像につけるという点で、活字メディアでの文章とは異なるテクニックが必要です。
➀まずは正しい日本語で
②音で聞いて分かりやすい言葉で
③映像と現場の音を補完する
④紙芝居にならないように
⑤グラフや図表は丁寧に説明を
こうした点を気をつけてコメントを作成していけば、より分かりやすく、魅力的な映像作品ができるでしょう。


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