ケーキを焼いて
あなたがやって来たのは、ちょうど私があなたのためのケーキに粉砂糖を振りかけようとしていた時だった。
玄関の方から急に声がしたから、私は粉砂糖を勢いよくふるってしまった。
キッチンには風に乗って砂糖が舞う。
手土産の紅茶を持ってきたあなたはいい匂いだと言う。
そうやってあなたと話していると、風に乗った粉砂糖が口に入って、なんだか空気が甘く感じる。
このことを知っているのは私だけ。
だから私はひとりでクスクスと笑う。
それを見て不思議そうにするあなたのことも。
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