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女子高生が結婚式ごっこをするボイスドラマ「それでも私は永久の愛を誓った」

本編

脚本・動画制作
永井茜

出演
天音直央
※声のご依頼はこちらから

イラスト
shihono

使用楽曲
泣かないでよサーチライト/Imaban
Love at Home(妹背をちぎる)/OtoLogic

楽曲・効果音提供
DOVA-SYNDROME
OtoLogic
無料効果音で遊ぼう!
効果音辞典


シナリオ本文

登場人物
愛梨(あいり) 18歳
由紀(ゆき) 18歳

〇 教室

愛梨「…なんだか雨でも降ってきそうな天気だね」
由紀「……」
愛梨「雨が降ってくる前に帰ろっか、由紀」
由紀「…ねぇ、愛梨」
愛梨「? どうしたの、由紀?」
由紀「…あのね……」

(長い沈黙)

愛梨「…だいじょうぶ。ゆっくりでいいよ。わたし、ずっと待ってるから」
由紀「…愛梨、ありがとう…。…あのね、わたし…。卒業したら、外国に留学しようと思うの」
愛梨「え…」
由紀「この間の三者面談で先生に勧められて、お母さんも乗り気になっちゃって。わたし、別に行きたい大学とかないし、それもいいかもなって…」
愛梨「……」
由紀「…ごめんね、急にこんなこと言って! そろそろ帰ろっか!」
愛梨「…待って、由紀!」
由紀「……?」
愛梨「あの…さ…。…結婚式ごっこしない?」
由紀「結婚式ごっこ?」
愛梨「ほら…教室ってなんだか、教会みたいだなって思わない? ここの教卓のところに神父様がいて、座席のところにお客さんがいて…。真ん中の席と席の間なんて、まるでウェディングロードみたいでしょ?」
由紀「…結婚式するなら、絶対にブーケは必要だよね」
愛梨「(喜びを隠し切れない様子で)…! う、うん! 花はないし、なにかブーケのかわりになるようなもの…。カラーペンの束とか?」
由紀「あははっ! 安っぽーい」
愛梨「ドレスは仕方ないとして、ウェディングベールはどうしよっか。あっ、わたしのカーディガンを頭にかぶればいいんじゃない?」
由紀「えー、静電気で髪がボサボサになっちゃうよ!」
愛梨「それもそっか、あははは!」
由紀「あははは…(FO)」

BGM FI

愛梨「……」
由紀「……」
愛梨「…由紀、なんか言ってよ」
由紀「えー! 自分が言い出しっぺなんじゃん! えっと~…病める時も、健やかなる時も、喜びの時も、悲しみの時も…。…続き、なんだっけ?」
愛梨「…富める時も、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助けて…。その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
由紀「…誓います」
愛梨「…誓います。…由紀、左手出して」
由紀「うん、どうぞ」

由紀「…なにこれ? 左手の薬指に、赤ペンで輪っかなんて書いて…」
愛梨「指輪の代わり。本物は無いからさ」
由紀「…ちゃんと水性のペン、使ってくれた?」
愛梨「さあ、どうでしょう~?」
由紀「ええっ!? ちょっと、愛梨~!」

BGM FO

愛梨「あはははっ。(一呼吸)…次、どうしようか」
由紀「あとはそうだなー…誓いのキスじゃん?」
愛梨「……(息をのむ)」
由紀「…ちょっと! 黙ってないでなにか言ってよー!」
愛梨「…ごめん。キスは…省略しようか、うん」
由紀「…わたしはしてもいいよ?」
愛梨「えっ……」

愛梨「……! 由紀…」
由紀「…えへへ、ちょっと恥ずかしいね」
愛梨「……」
由紀「あとは…ブーケトスだね!」
愛梨「…うん」
由紀「よしっ、それじゃ投げるよ! いっせーの…せっ!」

SE:ペンがばらばらに落下する音

由紀「あはははっ! 思ってたより大きい音でた!」
愛梨「あははっ…」
愛梨「……」
由紀「……」
愛梨「…雨、そろそろ降ってきそうだよ。由紀は家が遠いんだから、先に帰りなよ」
由紀「愛梨は?」
愛梨「ここの片付けしてから帰るよ。言い出しっぺなんだし」
由紀「…そっか、ごめんね」

SE:扉の開閉音

由紀「…じゃあね」
愛梨「うん…じゃあね」

SE:足音(どんどん遠くなっていく)

愛梨「(ゆっくり間を置いてから)…あはは、ただのペンでもこうして見ると綺麗なものだね。まるで…本当に花が散らばってるみたい…」

BGM on

愛梨「なんで…なんであんなことしたの…由紀のばか…。わたしはただ…綺麗な思い出を作りたかっただけなのに…。どうせわたしのことなんて置いて、どこか遠くに行っちゃうくせに…。…うぅっ…ひっく…うわぁぁぁぁんっ……」

BGM FO

END


作品について

このシナリオはもともと、私が東放学園映画専門学校という映画学校に通っていた際、授業で撮影する用に書いた短編映画用シナリオ(こちらで見れます)を基にしています。
校舎での授業中に撮影することを想定したシナリオのため「撮影場所は学校」「ワンシチュエーション」「登場人物は少なく」「2~3時間で撮影可能」という縛りがあります。
もともと動きの少ないシナリオのため、ボイスドラマに改稿するのもそこまで苦ではありませんでしたが、音声だけで状況を伝えられるように台詞を追加したりしています。

このシナリオで描こうと思ったのは、友情と愛情が入り混じったような思春期特有の繊細な感性です。
思春期時代の私は性自認がかなり曖昧で、男女の境界を往ったり来たりしていたような記憶があります。
それゆえかなんなのか、当時同性の友達と所謂「百合」っぽい関係になった瞬間が少なからずありました。
ですが当時の私は性自認がふわふわしているだけで、バイセクシャルやレズビアンというわけでもなく、トランス男性だったわけでもなかったので、

「あの瞬間、私はいったい何を思っていたんだろう?」

と今になってたまに思い返したりします。
当時のあの、風が吹けばどこへでも流されていってしまいそうな曖昧で複雑な感覚をシナリオとして残しておきたいな、と考えて書いたのがこのシナリオです。

この話における愛梨は、そんなよるべのない恋をしている最中なわけですが、案外数年後には学生時代の淡い恋なんてケロッと忘れてるかもしれませんし、或いは一生ずるずると引きずっているかもしれません。
由紀はきっと、留学先で恋人を見つけたりして、それなりに楽しく暮らしていくのでしょう。
そんな恋といえるほどの感情なのかどうかも危うい、淡い青春のお話を楽しんでいただけたら幸いです。

ここまで読んでくださってありがとうございました。
ちなみにわたくし永井茜ですが、クラウドワークスにてお仕事中、またココナラの方でシナリオの仕事を承っております。
(クラウドワークスはこちらから、ココナラはこちらからどうぞ。)

映画・ゲーム・音声作品等々のシナリオのお仕事がありましたら、是非お声がけくださいませ~。(プロモーションを含みます)


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