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【俳句20句】林檎ふたつ〜『初恋の悪魔』を基に

林檎ふたつ

柏柳明子

われからや僕は読まれなかつた手紙

兄弟のはかなきあはひ星流る

龍淵に潜む鋏に蒼き黙

小鳥来る電卓に数字は積もる

教室の透明人間ねこじやらし

連れてゆくわたし未来の本棚へ

ともだちと平仮名で呼ぶ秋の虹

鼻歌で温める夜食は君の

秋の灯や一緒に居る 息できる

長き夜の貨物列車を見て二人

眠る時ひとりに戻る林檎の香

満月や代りに怒つてくれるのか

入れ替る記憶林檎の皮を剝く

手の熱をうつすよ顰め面の恋

キバナコスモス嗚呼また自転車を倒す

燈火親しむショートケーキは小舟

木犀が降るから夜を恨まない

虫の闇振り返らないから永遠

思ひ出は約束露の道帰る

林檎ふたつ光つてをりし夜の底ひ



【おことわりと御礼】
お読みいただき、ありがとうございました。

本作は2022年に放映されたドラマ『初恋の悪魔』にインスパイアされて作った20の俳句作品です。(無季もありますが)作者の判断で20句の世界の季節を「秋」としました。また、あくまでもインスパイアですので、物語の実際のエピソード通りでなかったり、作中に登場していない事物が俳句内にあったり、時系列通りではない部分が20句中にあります。
ご了承願えれば幸いです。

この物語を世に送り出して下さった脚本家・坂元裕二氏に感謝します。
どうもありがとうございました。

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