【俳句20句】林檎ふたつ〜『初恋の悪魔』を基に
林檎ふたつ
柏柳明子
われからや僕は読まれなかつた手紙
兄弟のはかなきあはひ星流る
龍淵に潜む鋏に蒼き黙
小鳥来る電卓に数字は積もる
教室の透明人間ねこじやらし
連れてゆくわたし未来の本棚へ
ともだちと平仮名で呼ぶ秋の虹
鼻歌で温める夜食は君の
秋の灯や一緒に居る 息できる
長き夜の貨物列車を見て二人
眠る時ひとりに戻る林檎の香
満月や代りに怒つてくれるのか
入れ替る記憶林檎の皮を剝く
手の熱をうつすよ顰め面の恋
キバナコスモス嗚呼また自転車を倒す
燈火親しむショートケーキは小舟
木犀が降るから夜を恨まない
虫の闇振り返らないから永遠
思ひ出は約束露の道帰る
林檎ふたつ光つてをりし夜の底ひ
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