見出し画像

ローソンPBのデザインから考える、目指すべきデザインの在り方

こんにちは、PMGのYです!
2020年の春頃、ローソンのPB商品パッケージのデザインが一新されたことは記憶に新しいことかと思います。
私自身も新しいパッケージを見て衝撃を受けた1人です。
今さらではありますが、ローソンPBのデザインについて考えてみたいと思います。

ローソンPBの新パッケージデザイン

昨今、世間一般のデザインに対しての意識が上がっているように感じています。
TwitterやInstagram、YouTubeなどを通じて、個人の意見を気軽に発信する・できることが一般的になったため議論が目に止まりやすくなったことも一因だと思われます。


「ローソンPBの新パッケージデザイン」
当時、ネット上でも賛否両論さまざまな意見が飛び交っていましたが、
私も当時、初見の意見として持ったのは(しずる感がなく、店頭で即時に判別できないデザインになったなぁ)でした。

コンビニエンスストアでの滞在時間は5分未満〜10分未満が統計的にも多く、コンビニにおいては瞬時に欲しいものを手に取れることが最重要だということが一目瞭然です。

画像1

参照:経済産業省「第3回 新たなコンビニのあり方検討会」資料2-4 調査報告資料(ユーザーアンケート・店舗出口調査)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/new_cvs/pdf/003_02_04.pdf

新パッケージは、2〜3メートル離れると一瞬で商品を判別することができません。
「近づけば判別できる」ことは当たり前の話で、今回のリニューアルは”コンビニエンス”の「わかりやすさ」や「親切さ」を切り捨ててしまったことに論争が生まれた根幹があると考えています。

画像2

△ここから一瞬で「スパゲティ ナポリタン」をピックアップすることはできない…

画像3

△ここまで近づいてようやく「スパゲティ ナポリタン」を認識することができる

しかし、1つのデザインとして見れば、おしゃれでかわいいと思いますし、
ローソンにとって大きな挑戦であったことが感じられます。

リニューアルデザインを手掛けたデザイナーさんへのインタビュー記事などが出ましたが、同意できる意見もあれば、それはどうだろうかと個人的に考える内容もありました。
ただ、こういった記事が出て、はじめて真意が伝わるデザインが良いのか悪いのか少々疑問が残ります…

参考:ネットで物議のローソンPBデザイン nendo佐藤氏に真意を聞いた
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/casestudy/00012/00414/

パッケージ変更から売り上げに大幅な影響がなかった(増加したものもある)と記事にありますが、良くもあり、悪くもある結果だと思います。
ブランドの統一性も長い目で見た戦略には重要なことであることはたしかですが、売れる要素の一つとして影響を果たせないのであれば、デザイン刷新の意義が問われることになります。

これらの商品の品出しをする店舗スタッフの視点から見ても一瞬での認識が難しくなっていることを考えると、品出しのスピードや正確さは以前より失われてしまったのではないかと推測できます。
(実際そのような意見を見かけました)

また、ここ10年内コンビニで働く外国人スタッフの割合がかなり高くなっていることは誰もが感じていることだと思います。
日本人ですら、認識が難しいものを彼らがスムーズに判別することができるでしょうか?
こういった視点からも、コンビニにおける商品パッケージの認識のしやすさは重要な要素であることは間違いないでしょう。

肯定的な意見も無視できない

このデザインに対し、肯定的な意見を見てみると、若い女性や自室の生活感を無くしたい層からの支持が一定数見受けられました。
単純にパッケージのデザインがかわいいのでパケ買いしたなどの意見があり、こちらの意見も理解できるものがあります。
店頭での判別のしづらさは置いておいても、無視できない購買のきっかけであることはたしかです。
以前より、ローソンは他社コンビニに比べて女性ウケするブランドづくりが得意だという印象を持っていましたので、今回のこの流れは特別驚くことでもないと個人的に感じています。

コンビニ利用者の男女割合は約7割が男性、約3割が女性です。
女性客の獲得という視点でみると、新パッケージの戦略はひとつの正解として取ることもできます。

画像4

参照:経済産業省「第3回 新たなコンビニのあり方検討会」資料2-4 調査報告資料(ユーザーアンケート・店舗出口調査)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/new_cvs/pdf/003_02_04.pdf

真逆のデザインをいくセブンイレブンのPBパッケージ

この話題で比較で出されるのが、セブンイレブンのPB商品のパッケージですが、こちらは、オシャレさや高いデザイン性よりも、店頭での認知に振り切ったデザインになっています。
ローソンとは真逆の方向へ突き進むデザインで、こちらもこちらで賛否両論ありますが、概ね肯定的な意見が多く散見される印象です。

参考:ローソンのPBパッケージの視認性が話題になる中、
セブンイレブンは「オシャレをぶん殴る」主張が激しいフォントで真逆を行っていた
https://togetter.com/li/1530048

商品名の太字フォントがかなり印象的になり、パッケージに使用されているイメージ写真のしずる感のクオリティが上がっています。
オシャレ…とは言い難いデザインではありますが、現在のコンビニPB商品パッケージでは認知度トップクラスではないでしょうか。
自宅の最寄りコンビニがセブンイレブンのためよく利用しますが、取り間違えをすることはまず無いです。

ローソンPB商品パッケージの現在

ここで、ローソンPB商品のパッケージデザインの話に戻ります。
新パッケージデザインの反響を受けて、2021年に入ってからリニューアルが行われています。
「わかりづらい」という声を受けての変更だそうです。

参考:ローソンの商品パッケージデザインが変更 「分かりやすくなった」と好評、変更の理由を聞いてみた
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2104/28/news079.html
参考:ローソン、不評だったプライベートブランドのパッケージを改善、店舗オーナーにお話を伺ってみた
https://yukawanet.com/archives/lawsonpb20210504.html

以前よりわかりやすさは上がったかもしれませんが、洗練さは損なわれてしまった印象です。
商品写真のしずる感のクオリティがちょっと微妙に感じるのですが、実際、リニューアル後のパッケージの方がわかりやすいとリアルでの評判はかなり上がったようです。

ローソンの長期戦略的として、サッと購入してサッと店を出るというところから、じっくり商品を選ばせるという方向に転換し、他社コンビニとの差別化を図ろうとしているのではないかと感じるものがありますが、世の中的にはまだまだサッと購入してサッと店を出る方の需要が高いことが参考記事の声からも窺い知ることができます。

ローソンのPB商品パッケージデザインの刷新はもしかするとちょっと早かったのかもしれません。
今後、どのように変化していくのかローソンが目指したいものの先が見えるまで注目していきたいですね。

ローソンPBのデザインから考える目指すべきデザインの在り方

デザイナーが作りたいものと店頭で売れるもの、消費者が買いたいものは完全イコールではない。
商品パッケージだけでなく、様々なデザインに通じる根幹だと思っています。

「こうだ」という意見を持つことも大切なことではありますがその考えに固執するのは危険だということも、このケースを通して出た色々な人たちの一連の意見を追って感じるものがありました。
自分の意見だけでなく、自分以外の意見や反対意見も取り入れながら考え方を柔軟にしていくことはとても重要なことで、そこから様々なアイデアが生まれることもあるかと思います。

今回のことから考え方のヒントとして下記を挙げます。

・クライアントの要望をきちんとヒアリングできるかどうか(そのヒアリング内容を踏まえ、クライアントに適切な提案ができるかどうか)
・消費者側の視点とニーズを検証しきれたかどうか
・適切な情報が整理できているかどうか
・すべての世代に対してユーザビリティ配慮の余地があるかどうか
・そのパッケージ(デザイン)の認知能力が高いものになっているかどうか
・強く記憶に残るデザインになっているかどうか

私たちが普段関わるデザイン領域と少し違う分野ではありますが、私たちのフィールドでも考え方を活かすことはできます。

良質な情報を取り入れ、アップデートしながら、自分で考え、自分の意見に昇華し、アウトプットできるようにしていきたいと願っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?