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映画レビュー:24年1月の7本

午前4時にパリの夜は明ける
(2022年/フランス/ミカエル・アース監督)

2024年の映画初め。シャルロット・ゲンズブール。それに尽きる。マジックアワー。

PERFECT DAYS
(2023年/日本・ドイツ/ヴィム・ヴェンダース監督)

虫唾の走る映画。上映中何度席を立とうと思ったことか(観たけど。ぐぬぬ)。庶民はこうあれ、慎ましく、涙をこらえ、たまに自分へのご褒美でガス抜きしてね、知らんけど。という権力者・天上人目線で描かれた日常、ホントクソだわ。また役所広司が巧いからそれに加担してくるのよ。あざとい。ヴェンダース失望するだろこんなの。

ロスト・イン・トランスレーション
(2003年/アメリカ/ソフィア・コッポラ監督)

35mmフィルム上映。これを渋谷の映画館で観る事に意味があるでしょ。至福の時間。曲も良い。鳥肌2回立って、鳥肌立つ映画久しぶりだった。劇中に登場した代官山air(!)メチャ懐かしいし、こりゃパークハイアット特別になるわ。公開当時、ソフィア・コッポラによる文化の盗用(当時はそんな言葉無かったけれど)だなと感じて忌避してたけれど、20年も経つと感じ方も変わるもんだ。判断も変わるね。「いまここ」が絶対じゃないね。「TOKYO」を描く作品としていいPERFECT DAYSのお口直しになりました。

希望のかなた
(2017年/フィンランド/アキ・カウリスマキ監督)

難民、社会問題を、シリアスになりきらずにこれだけ滋味たっぷりに描けるんだもんな~すごいや。日本でこれ撮れる?自分も歳を重ねたからか、カウリスマキのトーンがメッチャ染みる。そして唐突におきまりの犬が出てきて笑える。もう立て続けに観ると「どう犬が出てくるか」が1つの楽しみになっちゃう。

枯れ葉
(2023年/フィンランド/アキ・カウリスマキ監督)

いいわぁ。。誰もスマホいじってないのがいい。それが寓話っぽさと、劇中のラジオから流れるロシアのウクライナ侵攻のニュースとが織り交ざって、独特な雰囲気を作る。また人物に対して水平なカメラ位置取りではなく左斜めからのショットが今作も健在で、犬も健在。そしてやはり無表情の女性はどんどん美しく見えてくる。「愛、連帯、優しさ、死者への弔い、自然、そういうものを描きたい」という監督の言葉が沁みる。

ほかげ
(2023年/日本/塚本晋也監督)

主演俳優たちの独断場。戦後復員した兵隊(森山未來)が、当時の上官だった人物に復讐に行き、それを遂げると「戦争が終わった」と言わせしめる。=人によってはまだ戦争が終わっていない→2024年現在もまだ内心「戦後」のつらさを生きている方はいる→今後の戦争は拒否、というメッセージがハッキリ伝わってくる。「枯れ葉」と「ほかげ」この2作だけを2スクリーンで連日朝から晩まで上映し続けるユーロスペースの反戦表明に敬意。

王国(あるいはその家について)
(2019年/日本/草野なつか監督)

すごい作品だった。演劇的というか、物語の中に、小説の中にたゆたうような体験。映画というよりむしろ体験版小説のような。目をつむって、ずっと聞いていられた。ここで扱われた「王国」「領土」「空間」にものすごく共感できるものの、その感覚に光を当てたことってあまり無かったし、そういう意味では詩的であったし、あそこへの感受性をあぁやって描けるのって、すごーく女性的だなと思ったりしました。


<了>




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