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【料理エッセイ】異様に安い海鮮BBQセットを中野ブロードウェイで購入したので、魚焼きグリルで焼きまくったよ!
中野ブロードウェイと言えば、"まんだらけ"だらけなオタクの聖地として有名だろうか? あるいは高級時計ロレックスのお店が密集している場所のイメージの方が最近は強いかな。
住居スペースにはかつて沢田研二や青島幸男が暮らし、村上隆さんのギャラリーがあり、大槻ケンヂの小説『グミ・チョコレート・パイン』に出てくる2階を無視するエスカレーターも魅力的。8段組みのカラフルなソフトクリームだったり、元ジブリスタッフの方がやっている讃岐うどん屋さんだったり、見るべき場所は無限にある。
もともとは乃木希典が自分が死んだ後、奥さんが苦労しないように買っておいた土地だったとか。ところが夏目漱石の『こころ』でお馴染みの通り、明治の精神と共に乃木夫妻は殉死されたので、権利関係が複雑なことになってしまったらしい。
それでも、戦後、高級マンション開発の先駆けである東京コープ販売株式会社が頑張った末、日本初のショッピングモール一体型の住宅として、1966年、中野ブロードウェイはオープンする。
当時の販促ビデオを見るとめちゃくちゃ面白い。ついに近未来がやってきた! って感じの雰囲気に満ち満ちて、こんな素敵な場所に行ってみたいなぁと思わされる。
もちろん、結果、そんな空間は出来上がらなかった。想定していたようにはテナントが埋まらず、出たり入ったりを繰り返し、賃貸も又貸しの又貸しみたいな状態になり、気づけば、カオスになっていた。
日本の九龍城と言っても過言ではないほど、有象無象がひしめき合っている。最高にカッコいい場所である。
なお、このあたりの歴史は『中野ブロードウェイ物語』に丁寧な取材に基づく情報が整理されていて、めちゃくちゃ面白い。興味のある方は一読の価値ありです!
さて、そんな中野ブロードウェイはわたしにとって、歩いて行ける買い物スポットで、しょっちゅう、夕飯の材料を買いに行っている。
八百屋さんも、お肉屋さんも、お魚屋さんも、地下に専門店がひしめき合っていて、軒並み格安なので重宝している。特に18時を過ぎると割引シールが貼られ、300円でお刺身を購入できたりする。
先日もそんな風にお刺身を狙って、いつものお魚屋さんをチェックしていたら、冷凍コーナーにやたら大きなBBQセットが売られていた。珍しいなぁと眺めていたら、値段を見てビックリ! なんと380円!
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どう考えても異様だった。訳ありに違いなかった。
みんな、二度見はするけど、普通じゃなさに躊躇して、手に取ってはいなかった。たしかに安いけど、美味しいのかわからないし、家でどう調理すればいいのかわからないもんね。いったい、誰が買うんだろう? と疑問に思った。
そのとき、ビビッときてしまった。
じゃあ、わたしが買ったろうじゃないか!
勢い任せにレジへと運び、キャパオーバーの品を入れられ、形の変わってしまったエコバックを引き連れ帰宅した。
一度、冷静になって、家で海鮮BBQセットを見てみれば、後悔の念が込み上げてきた。シンプルに面倒くさかった。これ、どう扱えばいいのだろう。なんというか、汗だくで考えたいことでは全然なかった。
とりあえず、冷凍庫に閉まってみた。ギリギリアウトの大きさで、斜めにしないと収納できなかった。あー、もう、忌々しい。買ったのは自分だけれど、誰かのせいにしたかった。
それから、数日、そんな存在があったことなど忘れて過ごした。しかし、ストックしていた棒アイスのシロクマを食べようとしたとき、異変に気づいた。なんと、溶けた痕跡が見受けられたのである。
原因は明らかだった。380円の海鮮BBQセット、それしかなかった。どうやら冷気の流れを遮断していたらしい。
こうなると早くやっつけてしまわなければ。急遽、その日の夕飯は海鮮BBQセットに決まった。
封を開けるとなかなか豪華なラインナップで、それなりにテンションは上がった。
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ホタテ、イカ、エビといい感じ。バターコーンもそそられる。ただ、一点、ブリの輪切りがあるけど、これだけは場違いなんじゃなかろうか?
ひとまず、焼けるものから焼いていくことにした。
魚焼きグリルにホタテを載せた。最大出力で一気に加熱してやった。ちなみにその温度は300度を超えるという。実は魚焼きグリルの加熱力はバーベキュー並みなのだ。
焼き上がったら、醤油を垂らし、貝殻に溜まった汁ごと口に流し込んだ。
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……え、めちゃくちゃ美味しいんですけど!
正直、このホタテ3枚だけでも380円の価値がある。というか、それでもけっこう安いと思う。
期待値が高まる中、エビも焼いてやった。
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もちろん、美味い!
頭の部分にちゃんとミソもあり、柔らかい部分は殻ごとバリバリいってしまった。身の部分は中だけ食べた。旨味がじっくり凝縮していた。
イカは小さく切られているので、フライパンで炒めることにした。ネギと一緒に白ワインとバターであおってみれば、香ばしいおつまみの出来上がり。
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その間、空いている魚焼きグリルでコーンを焼いた。
定期的にスプーンでかき混ぜて、油分を満遍なく行き渡らせたら、あとは表面に焦げ目がつくまで待ってみる。
だんだん、甘い香りが立ち込めてきて、間違いないやつが姿を現した。
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まさか、こんなに家でバーベキューができるとは。恐るべし、380円の海鮮BBQセット。肉がなくても、満足度は相当に高かった。
ただ、問題はブリの輪切りである。
試しに半解凍の状態でにおいをかいでみた。しっかり生臭かった。たぶん、このまま焼いたら、食えたものではないだろう。
お酒を振るか? 霜降りにするか?
いろいろ策を練ってはみたけれど、そもそもバーベキューでブリの輪切りを焼くってシチュエーションが思い浮かばなかった。
結局、わたしの頭の中にあるレシピ帳をペラペラめくり、ブリの項目を見て行ったとき、煮付け以外の選択肢は出てこなかった。
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生姜をたっぷり入れたので、臭みは完全にとれていた。ただ、これを食べるとごはんが欲しくなる。奇しくも海鮮BBQセットのせいで溶けかかっている冷凍ご飯があったので、それをチンした。案の定、相性は抜群だった。
でも、なんか、バーベキューの〆として、いまいち締まりが悪かった。本当は、焼きそばあたりがよかったなぁ。
まぁ、380円でこれだけ楽しめたわけなので、文句を言うのはおこがましいか。いや、だとしても、ブリの輪切りは別になくてよかったのではないか? 大いに持て余してしまった。
ちなみに、その後、中野ブロードウェイのお魚屋さんに同じ商品は並んでいない。果たして、この豪華なセットが380円で売られていたのはどのようないワケがあったのか。
知りたいような、知りたくないような、複雑な心境である。少なくとも、なにもわからないうちは「美味しい思い出」だけで終わらせることができるから。
なんとなく、秘密を握っているのはブリの輪切りなんじゃないかと予想はしているけどね笑
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