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【料理エッセイ】ベローチェのコーヒーゼリーは最高にちょうどいい

 春とか秋とか、気候が心地よい季節であれば、公園の東屋あたりに腰掛けて、のんびり本を読むのが幸せだけど、こうも暑いとそんな呑気なことは言っていられない。

 ちょっと買い物に行くだけでも汗をダラダラとかき、頭がぼうーっとしてくる殺人的な夏を前にして、外で読書なんてもってのほか。素直にクーラーの効いたところでページをめくらなくてはいけない。

 ただ、家で本を読もうにも、スマホの誘惑に勝てるほどわたしは強い人間じゃない。好きなYouTuberの動画が更新されたと通知があれば、とりあえず確かめるだけのつもりで2〜3時間は平気で視聴してしまう。ソシャゲの宝箱を開けるだけのつもりが、対戦に対戦を重ね、ランキングを切りのいいところまで上げてしまう。

 だから、図書館へ向かうのだけど、考えることはみな同じ。閲覧用の席は見事に満席。特に学校が夏休みに突入したからだろう。勉強に勤しむ若人たちの姿が目立つ。

 かつて、わたしもそうだった。うちは予備校に通えるほどの金銭的余裕がなかったので、地元の図書館に朝から晩まで入り浸っていた。

 最近だと「図書館は自習室じゃない」と他の利用者から苦情が寄せられるとかで、勉強が禁止になっているところも増えているけれど、当時はそんなこともなく、ありがたく公共空間を使わせて頂いた。結局、本が好きになったのも、休憩がてら文学全集を読んだり、視聴覚室で名作映画を観たりしたからで、わたしの趣味嗜好は図書館で育まれた。

 そういう意味では図書館で勉強に励む中高生を個人的には応援したい。こちらはすっかり大人だし、本は他の場所で読むことに致しましょう。

 というわけで、だいたい、チェーンの喫茶店に足を運ぶことになる。

 そうなると甘いものを食べたくなるのが常なんだけど、ここで問題が発生する。ケーキを注文するとき、飲み物を頼まないというのはタブーな気がするのだ。

 基本、ケーキセットで割引されるが合計金額は700円を超えてくる。毎日のように通うとなったら、この出費はなかなか痛い。

 かと言って、飲み物だけというのも少し寂しい。いや、もちろん、全然いいっちゃいいんだけどね。ただ、糖分も補給したいというか、ショーケースに並ぶ姿を見てしまうと誘惑に勝てないというか、とにかく食べたくなっちゃうんだよ!

 そんなとき、助かるのがコーヒーゼリー。ベローチェの人気メニューなんだけど、あらゆる角度から分析したとき、最高にちょうどいい。

 これは勝手な解釈かもしれないが、なんとなく、飲み物を一緒に頼まなくてもいい雰囲気が漂っている。

 なにせ、コーヒーを固めたものだからね。これと一緒にコーヒーを飲んだら、コーヒーが過ぎてしまう。じゃあ、紅茶が合うかと聞かれれば、そんなはずもなく、単体で食べることが論理的に保障されているのだ。たぶん、おそらく。

 加えて、ベローチェの場合はソフトクリームがたっぷり載っているので、甘さと苦さ、両方の魅力を兼ね備えている。喫茶店で味わいたいものがこれひとつで堪能できる。

 しかも、値段が約400円とリーズナブル。中高生には毎日食べるのは大変かもしれないが、こちらは大人。これぐらい、なんとかなるぜ。

 そんなわけで、最高にちょうどいいベローチェのコーヒーゼリーをしょっちゅう食べている。

 最初は本を読むためにも喫茶店へ行っていたのだけれど、段々、コーヒーゼリーを食べるついでに本を読んでいるような感じになってきた。

 たまに売り切れていることがあって、そのときはけっこう悲しい。プリンが残っていたら、それを代わりに頼む。これはこれで絶品なので、意外と幸せ。

 仕事がない日は家でお昼を済ませた後、ふらふらっと散歩に出かけ、喫茶店でコーヒーゼリーを食べながら本を読む。夕方、日が沈んできたらお店を出て、お肉屋さんと魚屋さんを回るのだ。

 できれば、珍しいものが食べたい性格なので、変わった品がないかとチェックしている。昨日は鮎が安くなっていた。1匹200円。塩をふって焼くだけでいいと言っていたので、やってみた。美味しかった、卵もたっぷり持っていた。

 お肉屋さんでは鳥モツが売っていた。大きなキンカンが綺麗に輝いていた。

 キンカンとは雌の鶏の卵巣や卵管にある卵の素になる部分。ただでさえ卵の黄身は濃厚だけど、それがさらにギュッと凝縮した感じで、美味く火を入れるとトロッとしたものがあふれ出てくる。

 今回は生姜煮にした。鳥レバーと一緒にサッと炒めて、醤油・酒・みりんで味付け。すりおろした生姜をたっぷり加えた。

 夏の夕飯はいつも出たとこ勝負。あれを作ろうと考え始めると疲れてしまうし、生鮮食品はすぐ悪くなるし、一期一会の食材とアドリブでセッションしている。

 そのため、失敗することもあるけれど、今回はうまくいった。

 本当、これだけ暑いと夏が嫌になるけれど、夜、予想外に成功した料理をつまみにビールをぐびっと飲み干せば、それなりにけっこう楽しい。

 モーパッサンの『女の一生』は「人生ってのは、皆が思うほど良いものでも、悪いものでもないんですね」という一言で終わる。

 似たようなことをつぶやきたくなる。

 夏ってのは、皆が思うほど良いものでも、悪いものでもないんですね。




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