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怖さを味方に変えた<ある朝殺人犯になっていた>

ある朝殺人犯になっていた 著者:藤井清美さん

失礼を承知で言うと、期待値を十分超える作品である。

初めて読む著者の本。しかも、タイトルはミステリーのようであるがコミック系の雰囲気が漂っていた。フンフン、主人公は相棒とコンビを組んで漫才をしている青年ね、と気楽にページを読み進めた。

漫才のシーンから始まってふっと笑いに包まれた後に、Twitterで10年前のひき逃げ事件の犯人にされるという想像もつかぬ事件に巻き込まれることになるが、これが本格的なミステリーと肩を並べるほど真相がわからないのだ。

真相の解明とともに、本作に引き込まれた理由は、人間の心理性を見事に描き出していること。

主人公の淳弥だけではないと思うが、人間は追い込まれると疑心暗鬼の状態に陥り、誰も信用できなくなる。相棒の昌紀に対しても例外ではなく1つの疑念が渦のように広がっていく。

そして、次々と淳弥の過去が暴かれて疑いが増す中、別れた恋人の佐緒里が思い切った行動に出る。「ネットはわかってんなという事実を集めても、わたしが知ってる淳弥にはならないんだよね」と動画で発言し、淳弥は心が救われる。

目に見える応援や陰で支えてくれた人の存在を知った淳弥は、残された時効に向けて残された情報を必死に探り出していく。

Twitterのアカウントを持っていない私にとってTwitterのやり取りは恐怖感が増幅していったが、終盤に向けて大勢の人が事件解決のために情報を差し出すという展開にTwitterは使い方次第で強力な情報網となると知った。怖いと言って使わないのはもったいないのかもしれない。

ネット社会になった今、自分や家族の情報が簡単にさらされる危険性がある。その怖さを味方に変えた淳弥くんの体験を読んでみて!


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