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ジャズ記念日: 12月26日、1962年@ニュージャージーRVG

Dec. 26, 1962 “Mad About the Boy”
by Benny Golson, Tommy Flanagan, Ron Carter & Art Tayloy at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ for Argo (Free)

テナーサックスのベニーゴルソンのリーダー演奏でルディバンゲルダー録音、シカゴ拠点のアーゴレーベル作品。

ゴルソンの地を這うような低音と音色は唯一無二。そしてメロディー重視のスタイルは以下紹介曲のケベックに通じるところがあって心の落ち着きが良い。そんな地味な演奏を埋め合わせるように、普段は地味な伴奏者が張り切るかのように目立っているのが、本曲の演奏の面白さ。

ピアノのトミーフラナガンによる冒頭からの粒立ちの良い端正な導入、1:34からのソロ、その後のバッキング、ドラムのアートテイラーによるピアノソロの終焉を告げる2:36のフィルイン等々、ゴルソンのソロの背後で終始、演奏に活力を与えている。

そんな中で 4:53から唐突に始まる一人だけ世代が若い新主流派、ロンカーターのベースソロが、モダン過ぎて浮いている感がするが、それが意図された主旋律をなぞる演奏だと分かると納得がいく。

曲はミュージカル用に作曲されたポピュラーソングで、その曲名からか、リーバイスのTVコマーシャルに採用されたという記録がある。

レーベルはシカゴ拠点のArgo。R&Bの大手チェスレコード傘下のジャズレーベルとして立ち上げられて、現在はユニバーサルがそのカタログの権利を所有している。チェスの影響でR&B色が強いのが特徴。

そのシカゴ出身のジャズミュージシャンに興味のある方は、こちらをご覧ください。

ゴルソンは作曲家としても有能で、交通事故によって夭折した天才トランペッターのクリフォードブラウンに捧げた追悼曲”I Remember Clifford”が、スタンダード化している。

ゴルソンが大衆の目に触れる機会があるとすると、それはトムハンクス主演映画「ターミナル」で、主人公がJFKの空港ターミナルから解放された後、一心不乱にマンハッタンのジャズクラブに向かい、サインを貰うミュージシャンとして本人役で登場している姿。興味がある方は、こちらの抜粋映像をどうぞ。

主人公の父親が以下の写真に写っている57人のジャズミュージシャンのサインを収集していたが、ゴルソン一人をだけを残してこの世を去ったため、主人公が父親と約束したその夢を果たすべく、マンハッタンに行くという設定。

A Great Day in Harlem(1958年8月12日)

この写真は男性向けファッション雑誌のエスクワイヤのに掲載されたもの。

1959年1月号 "The Golden Age of Jazz"

57名、誰がどこにいるのか、は以下の写真でご確認ください。そして、ゴルソンは何処にいるのでしょう。懐かしい感じですが、ウォーリーを探せ、みたいですね。

立ち位置≒音楽スタンスの印象を受けます

これまでに取り上げた紹介曲で本写真に含まれているミュージシャンは以下の通り。

ジョニーグリフィン

ソニーロリンズとウィルバーウェア(ベース)
※写真で以下と同じサングラスをかけているかも

アートブレイキー

ホレスシルバー

コールマンホーキンス(テナーサックス)

チャールズミンガス(ベース)

セロニアスモンク

ジーンクルーパ(ドラム)

カウントベイシー

ハンクジョーンズ(ピアノ)

これだけでも錚々たる顔触れですが、加えてディジーガレスピー、レスターヤング、アートファーマー、パパジョーンズ、ジェリーマリガン、オスカーペティフォード、ミルトヒントンらまで顔を連ねているのだから貴重な一枚です。この全員のサインを実際に集めていたら、どれほどの価値が付くのでしょうか。

因みにこの写真が撮られた約一週間前、1958年の8月に本撮影場所と同じマンハッタンで収録された曲はこちらです。この写真の頃の空気感や雰囲気が作品から味わえるかも知れません。残念ながら、この直後に帝王マイルスはツアーに出ており、本写真には不参加となっています。

さて、ゴルソンのテナーにご興味がある方は、こちらもどうぞ。

最後に、本作同様のフラナガンとテイラーの組み合わせによる演奏はこちらもどうぞ。

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