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今日のジャズ: 10月30日、1958年@ニュージャージーRVG

Oct. 30, 1958 “Harlem’s Disciples”
by Art Blakey, Lee Morgan, Benny Golson, Bobby Timmons & Jymie Merritt at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ for Blue Note (Moanin’)

※5:21からが該当曲です

テクノロジーの進化と共にSPからLPが生まれてレコードの再生時間が延長されると、それまで一曲3分程度のSPが、LPでは片面20分を超え、そこからアルバムという複数曲から構成される楽曲のコンセプトが生まれるようになる。

この曲はジャズの名盤、「モーニン」に収録されたドラムサンダー組曲というB面の冒頭、三部構成曲の締め括りの第三部で、当時の飛ぶ鳥を落とす勢いのバンドの活力に満ちた演奏を聴くことが出来る。「ハーレムの使徒」という曲名。

ブレイキーの音楽と演奏の両面における統制の行き届いたリーダーシップから叩き出される、聴衆の体を無意識に揺さぶらせてしまう強靭でタイトなリズムに乗って、先鋒トランペッターのリーモーガンが鮮烈なソロで心を鷲掴み、1:18からの急展開において、ドラムのリズムに触発されたかのように軽やかに弾むボビーティモンズのスリル感に満ちたピアノの旋律が格好良い。

僅か三分足らずながらその作曲、構成と刺激的な展開は名アレンジャー、テナーサックスのベニーゴルソンによるもの。それを見事に演奏するバンドの力量と、中でも牽引する力強いドラムで強烈な印象を残すブレイキーの演奏は何度聴いても素晴らしい。以下紹介曲もコンパクトな三分弱で同様に強烈なインパクトがありますので興味があれば是非。

さて、モダンジャズ界にこの上ない貢献をしたブレイキーは、1940年代後期にイスラム教に改宗している(イスラム名: Abdullah Ibn Buhaina)。その背景については専門家の方の分かり易い詳細説明をご覧ください。

イスラム教の黒人ジャズミュージシャンは、意外と多くブレイキー以外では以下の通り。当時のアメリカでの黒人分離政策といった背景や、ジャズ界に蔓延っていたドラッグや酒から身を引いて規律正しい生活を送る為の一つの手段としての側面もあったよう。改宗後のイスラム名を使用したのが、以下ミュージシャンで、これまでの紹介曲での演奏と共にお伝えします。

ジャズピアノ界随一のスタイリスト、Ahmad Jamal (piano)

ジャズファンクドラムの筆頭格、Idris Muhammad (drums)

その他、キャノンボールアダレイのバンドに在籍したYusuf Lateef (reeds) がいる。一方で改宗後も英語名を使用したのが、以下の面々。

ジャズメッセンジャーズに在籍したKenny Dorham (Abdul Hamid/trumpet)

コルトレーン黄金のカルテットの一人、McCoy Tyner (Sulaimon Saud/piano)

モダンジャズドラムの基礎を築いたKenny Clarke (Liaquat Ali Salaam/drums)

ソウルジャズ系で活躍したドラマー、Ben Dixon (Qaadir Almubeen Muhammad/drums)

アルトサックスの巨人、Jackie McLean (Omar Ahmed Abdul Kariem/reeds)

他にはピアノのWalter Bishop, Jr. (Ibrahim Ibn Ismail)がいる。これまでの紹介曲に登場したミュージシャンでは、ドラマーが多く見られます。自身のルーツを意識したアフリカに根付いたリズムとイスラム教への共感に要因があるのかもしれません。

さて、本曲に心を揺さぶられた方は、本曲参加ミュージシャンによるリーダー作品もご覧ください。ゴルソン、ティモンズ、モーガンの順番です。

最後に、ブレイキーの心揺さぶるドラミングをもう少し堪能したい方は、こちらもどうぞ。

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