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ジャズ記念日: 12月16日、1961年@ニュージャージーRVG

Dec. 16, 1961 “Blue & Sentimental”
by Ike Quebec, Grant Green, Paul Chambers & Philly Joe Jones at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ for Blue Note (Blue & Sentimental)

カウントベイシー作曲の、その曲名の通り、「憂鬱」で「感傷的」なメロディーとアルバムの表題曲演奏。特にテナーのアイクケベックの想いのこもった渋いテナーと同年にレコードデビューしたてのグラントグリーンによるブルース心溢れるギターが、相性も良く、演奏に心を預けると、寒い時に体を温めてくれるお茶のように身体に染み入ってくる。

このジャンルを名付けるとするならば「温もりジャズ」。派手さはないけれど、じわじわと心を包み込んで落ち着きと安らぎをもたらしてくれる、そんなジャズ。これまでの紹介曲の中では、こんな演奏が当てはまる。

晩年のケベックのメロディー重視・温かみのあるブロー主体のスタイルは完成の域に達しているが、その後シングルトーン主体で押すスタイルに転じるグリーンのギターは、伴奏という役回りもあってか、独特のブルースが込められた和音が多用されているという事と、その和音の使い方もアルペジオ的な要素もあって、ぎこちなく聴こえるが技巧的だという事が分かる。

この二人を支えるのは、マイルスの敏腕リズムセクション。とはいえ、ここではケベックの意思を尊重してか、かなり控え気味。グリーンのギターソロ時の伴奏も必要最低限に絞って、若手を無下に刺激する事なく、演奏を親心的なアプローチで徹底的にサポートしているのが、微笑ましく感じられる。

これもアーティスト輩出でブルーノートレーベルを支えたケベックのデビューしたてのアーティストを支えようとする意思を汲んでいるのかもしれない。

3:02からのグリーンのシングルトーンで構成されたソロは、若さがあってR&Bを彷彿とさせるライン取りが登場するものの、全体を通しては雄大で説得力があり聴き応えがある。そして5:21からの繰り返しソロフレーズはその後に確立する独特のシングルトーン押しのスタイルが垣間聴ける。

ケベックを筆頭とする、カルテットの優しさに終始溢れる一曲となっていて、それはアルバムを通した一貫のテーマのよう。まさに初冬に、コタツかストーブの温もりを感じながら聴きたくなる、心安まる作品。

本アルバムは、録音から二年半後、ケベックの逝去から五ヶ月後の1963年の6月にリリースされていて、ブルーノートレーベルへの貢献を認知した追悼の意味を込めての判断かと推測する。

さて、ケベックの温もりに溢れた演奏に興味を持たれた方や、ブルーノートレーベルへの貢献に興味がある方は、こちらもどうぞ。

最後に、本作七か月前にグリーンが加わった溌剌としたオルガントリオ参加作品をどうぞ。

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