ジャズ記念日: 11月3日、1957年@ビレッジバンガードNY
Nov. 3, 1957 “Softly, as in a Morning Sunrise”
by Sonny Rollins, Wilbur Ware & Elvin Jones
at The Village Vanguard for Blue Note (A Night at the Village Vanguard)
「タモリではない。ロリンズである」本アルバムジャケットの、タイトル画像の部分だけ切り取って見てみると何故かそう言いたくなる。
音楽、特にジャズやオーディオに造詣の深いタモリさんのことだから、本名盤は間違い無く知っているはず。本人が何処まで似ていることを意識しているかは、知る由もないが、ロリンズは「笑っていいとも!」にゲスト出演していたという記録があった。タモリさんの見た目はそのままだが、その時のロリンズはかなり様変わりしていた。
さて、1935年にオープンして今でも変わらない場所で営業を続けるニューヨークの名門老舗ジャズクラブ、ビレッジバンガードでの数多あるライブ録音の記念すべき第一作目が、このアルバム。
ライブ録音が実現したのは、テクノロジーの進化の恩恵による。巨大で持ち運べない録音機器が技術の進歩で持ち運び可能となり、ドラムの音の増幅が不要な130人収容という小規模なバンガードの会場でも録音が可能となった。
鬼気迫るエルビンの煮えたぎるヤカンのような圧のあるドラムと、メロディーとリズムで主導権を握る勢いのアグレッシブなウィルバーウェアのベースの力強いビートで、これ程までにも伴奏者から煽られても流されずにマイペースを貫いて朗々と吹き上げるロリンズは畏敬の念を感じるほどの凄味がある。以下、本収録時の演奏者の写真。
以下のトミーフラナガンの本作3ヶ月前の作品のようにエルビンに触発されて普段とは異なる演奏が繰り広げられた名作は多々あれど、本作のロリンズは全く動じるところが無い。ドラムのみならず、その背景のドスの効いた唸り声を含めたエルビンの激しい息遣いから来るプレッシャーは相当なものだと思うが。
このトリオは、コードに縛られてしまう制約を嫌ってピアノを排除して、自由度が高い演奏を狙っての構成だが、それだけに一人一人に音の重みがのしかかる。ロリンズによると「メロディが綺麗なのにヴォイシングが複雑なので、手の施し甲斐のある」曲とのこと。名門ジャズクラブで遠慮すること無くその場の流れに沿ってインプロビゼーションして対峙する三人が紡ぎ出す音楽、これこそ、まさにジャズの真骨頂。大音量で目を瞑って聴いてみると、音を通して飾り気のないビレッジバンガードのステージの当時の雰囲気が味わえる。こんな貴重な記録を残してくれたブルーノート、そして、この日の前日に33歳の誕生日を迎えていたルディバンゲルダーに感謝。
この作品に触発されたと思われるのが、リーコニッツの約四年後の以下紹介作品。同じトリオ構成でドラムは本作と同じエルビンだから、比較してみると面白い。コニッツもエルビンに惑わされない芯の強さがあるが、エルビン触発度合いはロリンズより高い印象。
後ほど登場する3月7日紹介曲が、同年、同じトリオのフォーマットでのロサンゼルス録音だが、その朗らかでユーモアに溢れるムードとは打って変わって、本作は遊びの隙が無いシリアスな極致で、曲名の「朝日のようにさわやかに」とは対極の「深夜のように陰鬱に」の様相。
曲は、1928年のオペレッタ、”The New Moon”で発表されたオスカーハマースタイン二世とシグムンドロンバーグのコンビによるもので、”Lover, Come Back To Me”も同布陣によるもう一つのスタンダード曲。
さて、神がかった本年と同じ1957年のロリンズの演奏は、こちらもどうぞ。どれも名演名盤です。先ずはコンテンポラリーレーベルの鮮明な音と西海岸の開放感あふれる演奏。こちらはキレの良い白人ドラマーのシェリーマン。
その約半年後、東海岸におけるブルーノートレーベルでのRVGによるゴリゴリ系録音のシリアスなジャズ。こちらのドラムはダイナミズムに溢れるフィリージョージョーンズ。
そして、ベースのウェアに興味を持たれた方は、本作から約二ヶ月後に収録された以下紹介曲をどうぞ。
最後に、これまでに紹介したビレッジバンガード録音のライブ作品をどうぞ。
ビルエバンストリオによる大名盤。地下鉄の音が聞こえますか?
上記作品から6年の時を経てメンバーが変わっての快活なトリオ演奏。エバンスと相性の良いフィリーのドラムが聴きどころ
ベテランドラマー、アートテイラー率いる若手奏者を従えたバンドの新旧入り乱れた熱気が伝わる90年代の名演
ああ、バンガードに行きたい、、、
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