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今日のジャズ: 1月7日、1958年@ニューヨーク

Jan. 7, 1958 “Don’t Blame Me”
by Jean “Toots” Thielemans, Kenny Drew, Wilbur Ware & Art Taylor at Reeves Sound Studios, NYC for Riverside (Man Bites Harmonica!)

ハーモニカがジャズに融合する、それも凄まじいレベルで。それを開拓したのが、このベルギー人、トゥーツシールマンス。

ここでの黒人伴奏者達は、ちっぽけなハーモニカを手にする欧州白人の堂々たる演奏に驚嘆したに違いない。アメリカ的なブルースハープではなく、音階が揃ったクロマチックハーモニカを巧妙に扱い、活き活きとしながら枯れた演奏が、この時点で完成されているのだから、ジャズハーモニカの第一人者は登場時点から凄かった。

欧州人は黒人差別意識が当時の白人米国人ほどなかったことも影響して好演奏に繋がったのではないか。こういった共演や、欧州ツアー時の黒人ジャズミュージシャンに対する好意的な姿勢が、差別に嫌気の差した米国人黒人ジャズミュージシャン達の渡欧を促したのかもしれない。その渡欧組の代表が、ここでピアノを演奏するケニードリューで、1961年から軸足を欧州に移した。

アルバム名は、”Man bites harmonica”、直訳するとアルバムジャケットの写真の如く「男、ハーモニカを噛む」となるが、勝手な解釈で推測するに英語の慣用句”Man bites dog”、「滅多に起こらない事」というフレーズにもかけて「ありえないハーモニカ」というようなニュアンスを含んだ意味もあるのではないか。

因みに、シールマンスのニックネーム、”Toots”は本人のインタビューによると、本名の”Jean”(フランス語読みで「ジャン」)がスイングに相応しくないと感じていた本人に、当時スイングの最前線にいたベニーグッドマン楽団のアルトサックス奏者Toots Mondelloと名アレンジャーのToots Camarataにあやかった共通項の”Toots”が推挙され、それが採用・定着したものだそう。

シールマンスはその後も長きに渡って大活躍、ピアノジャズの巨匠ビルエバンスとの共演や、映画のサウンドトラック、なによりもセサミストリートのテーマ曲を吹いた。自身は同国出身の偉大なギタリスト、ジャンゴラインハルトに憧れ、ルネトーマ同様に巧みなギターを操るが、あまりにも卓越しているハーモニカで大成する。

この曲は”On the Sunny Side of the Street”、”Let’s get lost”や”Say it”等を手掛けた多作家のジミーマクヒューによるもの。

最後に、セサミストリートのクロージングテーマでのシールマンスの演奏はこちらからどうぞ。朗らかでふくよかなトーンは、まさに唯一無二。

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