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「ジョブ型」雇用、職務記述書、クビ!!

 このたび、『定年いたしません! 「ジョブ型」時代の生き方・稼ぎ方』(梅森浩一著・光文社新書刊)を読了しました。
 ※初版第1刷 2024年8月30日

 著者は、2003年、ベストセラー『「クビ!」論。』で1,000人以上をクビにした経験を綴った外資系金融機関の人事部長経験者で、14回の転職経験のある人です。

 クビにして、自分もクビにされて、何回も転職し、きっと心労のせいなんでしょう、いろいろと重い病気を抱えているようです。

 「定年いたしません!」のタイトルにあるとおり、現在、定年を超えた66歳ですが、65歳の定年後も、3回も転職をしているという強者です。

 私は、かねてより、解雇規制が判例により守られている日本企業と異なり、同じ国内での法人である(同じ判例が適用されるはずの)外資系企業では、「解雇が標準となっている」のが不思議でたまりませんでした。

 そのことが、この本を読んでようやく理解できました。

 外資系企業では、いわゆる「ジョブ型」雇用が一般的になっており、日本企業における「メンバーシップ型」とは異なるのですね。

 で、この「ジョブ型雇用制度」とは、「世界標準の雇用制度」であり、端的に言うと、社員の採用にあたり、「職務記述書(JD:Job Description)型雇用制度」とも言え、その職務記述書の中に、詳細に記述された職務についてのみ、業務を行うことで採用されたということを意味します。

 「メンバーシップ型」とは、「日本企業では一般的に職能(ポテンシャル)をベースに、人材を新卒時に一括採用し、企業内教育をしながら処遇するのを前提としている」ことを意味します。

 一方、「ジョブ型」では、「それに対して海外企業では『職務記述書』をベースにして、それに見合った人材を即戦力として採用する」のような説明がされると、同著には書かれています。

 すると、「ジョブ型」雇用制度の会社内では、次のようなセリフが飛び出すことがあるらしいです。

 「それって、私の仕事ではありません(だからやりません)!」 または 「その仕事、引き受けてもいいのですが、その分の報酬はキチンとプラスしてください」

 つまり、「職務記述書」に記載のない仕事はしない、または、するとすれば、「報酬をプラスしてもらう」ということなんだとか。

 日本企業では、「できません」とか、「やりません」とかは、かなりリスクが伴うものでしょう。それは日本企業では、「なんでもやる、やれる能力がある」のが前提の雇用であり、教育であり、登用であるからです。

 このようなことから、次のようなことが導けるとされています。

 「出口(クビのこと)については、ジョブ型の社会においては職務がなくなるというのが最も正当な理由です。」

 「職務」とは、英語では「Position」(ポジション)と表現されますが、平たく言えば、雇用者側は「あなたの仕事がなくなったので(不要になったので)辞めていただきます」と正当に主張できるということなんです。

 ただし、これは、日本国内では、判例などによる社会通念に反していることは全くの事実ですが、これが実際に外資系企業において機能しているのは、それについて「イエス」であるとの暗黙の了解で採用された「ジョブ型」企業に勤める外資系社員のメンタリティーと、「私は会社(にあるさまざまな仕事)に採用された」と主張できる日本企業の社員のメンタリティーとの差にあると言います。

 日本企業においても、「ジョブ型」雇用は広がりを見せており、日本の社会通念にもとづく判例も将来変更されぬ保証はありません。安穏としていられぬ日がやがて来るでしょう。

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