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「最近うれしかったこと」を起承転結で話しなさい

高速道路を走る車内。運転しているぼくの斜め後ろの席、チャイルドシートに座る息子が眠っている。妻はスマホに向かってクライアントへのお礼のメッセージを打っていた。

「あー、ちょっと眠たくなってきたかも」
1時間ほど前に実家で昼食後に食べさせてもらったケーキが今ごろ効いてきたようだ。
「じゃあしりとりしよ!生き物だけで!」
と妻が言ってしりとりが始まった。

10分ほど車を走らせただろうか。生き物縛りに苦戦し負けたぼくを、バックミラー越しにニヤニヤしながら妻が目を合わせてくる。
「次は何にしよー。あ、じゃあ『最近うれしかったことを起承転結で話しなさい』。はいどうぞ!」
「それ面白そうやな。じゃあいくでー…」

【起】

ぼくはぶっく。京都に住む28歳の男だ。ぼくには1歳5ヶ月になったばかりの息子がいる。

【承】

どんな子どもでも「そういうものかな」と思うのだが、息子は母親(つまりぼくの妻)が大好きだ。妻が洗面所に化粧をしに行けばついていって動物の本を差し出し、台所に行けばついて行って消防車のおもちゃを妻の近くで走らせる。

しかし、わざわざぼくのところへやってきて、動物の本を差し出したり近くで消防車のおもちゃを走らせたりすることはあまりない。いや、滅多にない。

息子が生まれてから、息子と一緒に密な時間を過ごしたのは、ぼくと妻のどちらかというと妻だ。だから息子が2人を比べた時に妻の方へ走っていくのも納得している。納得してはいるが、「自分だって頑張って時間つくってるんやけどな…」と心のどこかで思ってしまう。

「つり合っていないな」

心の中にイメージした天秤は妻の方へ大きく傾いている。

【転】

そんな息子も、1歳を3ヶ月ほど過ぎた頃には行動も言葉も大きく成長した。他人から見れば未熟に見えるその様子も、親から見れば驚くほどの成長に感じる。

日々成長していく息子を楽しくもほんのちょっぴり寂しく見守っていたこの頃、天秤の傾きに変化がやってきた。

息子がぼくのところへ動物の本を持ってきたり、ぼくのそばで消防車のおもちゃを走らせたりすることが徐々に増えてきたのだ。時にはぼくの手を握って自分の行きたいところへ引っ張っていくこともある。

きっと些細なことだと、取り立てて書くことでもないだろうと思われるかもしれない。たしかにこれはほんの些細なこと。でも、ぼくにとっては些細なことなんかじゃあない。

自分の足元に「とたとたとた…」と音を立てて走ってくる姿も、ぼくの人差し指を握る小さな掌も、ぼくにとっては特別で、目の端がじわっとなるような光景だ。

天秤はまだ妻の方に傾いている。でも傾きは緩やかになっている。それがたまらなく嬉しいことだ。

【結】

最初から天秤の傾きが緩やかだったなら、これほど嬉しさを感じられなかったかもしれない。傾きが大きかったからこそ、この緩やかさに心が動くんだろう。

きっとこの天秤はこれからもぼくの方に傾くことはないだろう。それどころか、また妻の方に大きく傾くこともあるだろう。

それでもたぶん、前よりは、寂しくなくなっているだろうな、と思えた。


「どう?」
「ええ感じやん」
眠気はもうなくなっていた。まっすぐ伸びる道路の先には、オレンジ色の太陽が光っている。
ぼくは少し背筋を伸ばしまっすぐ前を見つめた。

ひとりごと

2週間ほど前に妻から「『最近嬉しかったこと』を起承転結で話しなさい」と言われ、そこで話したことをここにまとめてみました。妻に話した時よりも文体はだいぶ格好つけていますが、内容は本当のことをそのまま書いたつもりです。

なぜ小説っぽい書き方なのかと言われれば、「ただ嬉しかったことを淡々と書くより楽しそう」だったからです。読むばかりではなく、書いてみるのも楽しいもんですね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。みなさんも最近嬉しかったことを起承転結でまとめてみてはいかがでしょうか。やってみると前後の出来事も思い出せて楽しいもんですよ。


ぶっく📚


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