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私と東村さん

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高校時代、仲良かった事務室の東村さん。その人との日々を思い出したので残したいと思います。いつかの自分に向けて、忘れてしまわないように。
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#小説

EP.1-14

「わ!お久しぶりです〜!」
「変わったねぇ。でもすぐわかったよ。」
「垢抜けたでしょ」
「可愛い。びっくりした。高校の時も可愛かったけど」
「ありがとう〜」

私は久しぶりに東村さんと会った。
私は初めて東村さんと外で会った。
私は東村さんと2人で会っている。

なんだかいつもと違くて恥ずかしくなってきた。

「タバコ吸うんだね」
「あ、はい」
「俺も」
東村さんはマルメンを取り出して
一本のタバ

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EP.1-13

東村さんからはそれからもちょくちょくメールがきた。
面倒臭かったし
焼肉奢ってくれないから
私はそっけなく返信をしていた。

自分のホームページの“裏りある”には
東村さんが鬱陶しいことを書き連ねた。
誰に話すこともない。
私と東村さんが連絡を取り合っていることは
誰にも言っていない。
私と東村さんが仲が良かったことは
誰も知らない。

そんなある日、私はいつものカフェで大学の課題に取り組んでいた

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EP.1-12

バイトの休憩時間。非常階段でタバコを吸いながら
携帯を開いた。

「私バイトがあるから」
携帯をのボタンをニチニチと打つ。
私は両手打ちだった。

「金曜日の夜は?」
「焼肉連れて行ってくれるならいいよ!叙々苑!」
「そんなとこ連れて行けないよ」
「じゃあまた!」

調子乗ってた私はそう返信して携帯を閉じた。
バイトの休憩時間が終わる。
私は制服に着替えて匂いを消すため手を洗いに行った。

EP.1-11

東村さんは事務室にいた。
「おー!久しぶり」
「こんにちは」
「元気?」
「元気です」

そんな簡単なやり取りをして
書類を受け取った。

放課後の時間だったこともあり
一緒に帰った。

「今度ご飯でもいこうよ」

そういわれた私は

「いいですね」

と答えた。

調子にのっていたから
【高いお肉でもおごってもらお】
くらいにしか考えてなかった。

連絡先を交換して
途中の駅で別れた。

しばら

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Ep.1-7

そういえば、

東村さんと一緒に帰ったことがあった。

たまたま帰りが一緒で、私は途中下車して買い物しなくちゃだったから電車に乗るとこまで。

「援交にみられるかな」

「かもね」

「ぼくとこれからどうですか?」

「キモー!」

そんなやり取りをした。

学校を離れると

気さくになるというか

モードが切り替わる東村さん。

この時は、身体の関係とかよく分からなかったから

キモー!の程度も

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Ep.1-5

高校2年生になった。

4月。東村さんは、異動がなかったようで

いつものように事務室にいた。

「今年もよろしくね。」

「こちらこそよろしくお願いいたします!」

という挨拶を交わした。

私は、

お昼休みには配電室の

放課後には生徒会室の

鍵を借りに事務室へ行くことになった。

途中から先輩方が配電室の合鍵を作っていたことを知っていたけれど、

私はとても真面目だったので

毎日、事務

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Ep.1-4

学校生活は毎日忙しかった。

文化祭が終わると、じゃんけんで負けた私は委員会の三役になった(書記)。

今度は配電室だけではなく

生徒会室や放送室の鍵なんかを借りるようになった。

東村さんがいるときは東村さんが対応してくれた。

いつもニコニコしてて

「おつかれさま」

と言ってくれてた、、、気がする。

でも、鍵を借りたり返したり

そのやりとりだけだった。

文化祭実行委員会は来年度まで

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Ep.1-3

通っていた高校は私立だったけれど、

校舎が全体的に古い。そしてしきたりも古かった。

ノックをしないでドアを開けたら最初からやり直し、先生の機嫌が悪かったらその場で怒鳴られる。

私は、先生から怒られることは見放されることだ、と思っていたので、そういったシキタリを忠実に守った。

けれど、事務室のドアを私はノックしないで入る。事務室の扉は自動ドアになっていたからだ。

「こんにちは。」

「こん

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Ep.1-2

高校1年生の4月、文化祭実行委員会に入ることにした。

中学時代の私を捨てて、新しい自分になるためには

新しいことを始めるのが一番だったから。

配属先のチームが決まると、文化祭に向けてどんどん忙しくなった。

私のチームは入り口の看板作り。

看板作りは配電室を借りて行うため、

配電室の鍵を借りるため、私は事務室にいくことが増えていった。

中学時代、体育会系の部活動に入っていたこともあり

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Ep.1-1

東村さんは私が通う高校の事務さんだった。

高身長の細身で、顔は小さいのに高い鼻が特徴的の中年男性。

いつもA棟1階の事務室にいた。席は受付に近かった。

私は高校に入学してすぐに両親が離婚したため、中間テストが始まる5月には入学前に提出した住所を変更する必要があった。

そのときに始めて事務室にいった。

その時に対応してくれたのは、確か女性だった。

何かを察したのか

「あなたも大変ね。」

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