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160ピース

バレンタインデーのとき、長女がいた部屋、そして、長男がいた部屋を、少し大掛かりに片付けた。そして、次女は、もともと長女がいた部屋に、今、陣取っている。


長女の持ち物を整理していたら、いろいろなものが出てきた。そして、廃棄しようとすると、家内が静止してきた。捨てる前に、本人に聞くべきだと助言してきたのである。

もっともな、話だ。

そして、LINEで、廃棄物リストとコメントを送ることにした。すると、長女から、だいたい、こんなコメントが返ってきた。

心の中の、リトルkojuroが、呟いた。

ほら、いらないんだよ。だいたいは。

じゃ、出ていくときに、捨てればいいのにね。


さらに、いろいろ整理していると、中には、こんな、思い出の品が、出てくることも、ある。

出てきたのは、埃がかぶった、ニスを塗りつけてくっついた160ピースパズルの完成品だったが、埃を拭き取り、ちょっとした額に入れてみた。

そして、これは、必要なんじゃないかと、LINEにコメントを入れてみた。すると、こんな返信が来た。

心の中の、リトルkojuroが、寂しそうに呟いた。

もう、普通の、思い出なんだよ。

あの時のことは、忘れたのかも知れないな。



我が家は、子供たちと私で、必ず行く、年中行事があった。

それは、映画だった。

決まって観に行くのは、「ドラえもん」と、「名探偵コナン」と、「クレヨンしんちゃん」、そして、「ジブリ」だった。みんなで、何年くらい、行っただろう。

「ドラえもん」は、前売りチケットを買うと、ドラえもんのちょっとしたフィギュアを貰えるのだが、それを、毎年連ねて、車のルームミラーに、くくりつけていた。

数年前に、家内が、さすがに運転の視界を遮るからということで、家族で話し合って、はずした。そして、私は、捨てられずに、一度、家に入れて保管することにした。

随分紫外線に当たり、汚れてはいるが、いい思い出が、たくさん、詰まっている。


そして、このパズルは、そういう中で、2011年に、長女が中学2年生のときに、最後に一緒に見に行った映画だった。

あの時、なぜか、私と2人きりだった。

長女は、映画を凄く気に入り、パズルまで買って、作っていたのだ。

飾ることは、なぜか、なかったのだが。


映画を見終わった長女は、私に聞いてきた。

どうして、主人公の女の子のあだ名は、メルなの?

私は、フランス語で、「海」って、何て言うか、ネットで調べてみれば?

そう、言った。

調べ終わった長女は、フランス語なんて、難しい。わかんないよ。

と言ったが、私も、そこで、言葉を返した。

俺の時代よりも5年、いや、10年とか20年も前の高校生は、今と進学率も、教養も、全く違う世界だった。当時の高校生は、それだけの教養を、みんな、身に付けていたんだよ。

高校は、義務教育ではないからね。俺の時代と、そう変わらない時代に、高校にさえ、行けない人も多かった時代がある。

すると、長女は、

ふーん。その時代に生まれていて、高校生になっていたら、私も、それなりの教養だったのかな。

笑いながら、そう、言った。


長男の思い出も、長女の思い出も、次女の思い出も、ある。

次女は、早くからスポーツで忙しかったので、短くは、あったが。


心の中の、リトルkojuroが、そっと、呟いた。

思い出に浸りすぎると、また、寂しくなるぞ。


私は、私の机の横の、柱のところに、このパズルを飾ることにした。

私の机は、雑然としていて、この絵が掛かっているのは、特等席ではない。上に、色々と重ねて、その場しのぎのものを、引っかけてしまうのだが。

今年の夏は、ジブリの映画などを、また、普通の日常として、観られるのだろうか。

家内は、もともと、眠ってしまうからと言って、映画を、観ない。映画は、私と、子供たちの、専売特許だった。

つきあってくれる子供たちは、もう、いない。

でも、たとえひとりであっても、いい。

できれば、夏、レイトショーを観に行きたいものだと思いつつ、机の電灯を、静かに消した。



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