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Nue
2021年11月6日 04:19
次に顔を上げたとき、わたしは中空にいた。ふわり、ふわりと、パジャマが風をはらんでいる。わたしの乗っていた鉄の箱が眼下にあった。どうして?強烈な風のせいで、目を開いていることさえままならない。想像力が翼を広げたのか、なんて空想はすぐに吹き飛ばされてしまった。イカロスの伝説を思い出す。誰がもいだか翼はなく、わたしは空気抵抗と重力のせめぎ合いへと投げ出される。落下する人間とイカロス。なんてありきたりな
2021年11月7日 15:51
やっぱりまだ、死にたくないな。無数の記憶が頭に浮かんでは消えていった。自由落下なんていうくせに、わたしに生を選ぶ自由は残されていないようだ。泣いているのか叫んでいるのか、自分でもまったく分からなかった。いくら涙を流したって、この風ではまっすぐ地面へ落ちていくことさえできない。それにいくらわたしが叫んだって、その声を聞く他の誰かは世界中のどこにもいない。 地表まではまだ遠い。わたしが飛び立った
2021年11月11日 03:49
わたしは一度通り抜けた雲の中を落ちていった。世界と世界の間に挟まったのだと思う。落下を続けるうちに、上下の感覚が曖昧になっていった。一度まっすぐに上っていった道程を、今度は生身のままで引き返していく。天からも地上からも、わたしという存在が拒絶されてしまったようだ。わたしの居場所は、かつては白い部屋だった。そう、今朝までは。また元通り、すべてが終わってから、またあの掛け布団に潜り込んで、鬱々とした
2021年11月21日 05:50
猛烈な眩しさに引き戻される。はたと思い至る。わたしは宙に浮かんでいた。この表現は正しくない。だってわたしはさっきからずっと、意識を取り戻す前から、空を漂ったままなのだから。落下速度、それが唯一の違い。背中が何かに強く引き付けられるような感覚があった。 振り返ると、わたしの背中から生えていたのは、翼ではなくパラシュートだった。いったいいつ、わたしが非常用パラシュートを身に付けていただろうか。振