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どの文学賞を受賞すると作家になれるの?④ 賞金に幅があるライトノベルの文学賞

情報サイト「プレジデントオンライン」に、日本で最も権威のある美術展の日展と、上下関係が厳しく、金銭体質と言われている書道界の実態を追ったレポートを書きました。お時間のあるときに読んでみてください。

「週刊文春」の取材を受け、宝塚歌劇団を傘下に持つ阪急阪神ホールディングスのコーポレートガバナンス(企業統治)についてコメントさせていただきました(2024年1月4・11日号)。タイトルは「宝塚『闇の金』」です。お時間のあるときに読んでみてください。

「プレジデントオンライン」という総合情報サイトで、宝塚歌劇団と阪急阪神ホールディングスが改革すべきこと、急務の問題について記事(第2弾)を書かせていただきました。お時間のあるときに読んでみてください。

「プレジデントオンライン」という総合情報サイトで、女性の社外取締役や女性のアナウンサー、アスリート、タレントとの関わりについて記事を書かせていただきました。お時間のあるときに読んでみてください。

「プレジデントオンライン」という総合情報サイトで、宝塚歌劇団の劇団員の死や宝塚歌劇団の記者会見、阪急阪神ホールディングスの会長や社長の減給処分について記事を書かせていただきました。お時間のあるときに読んでみてください。

ライトノベル関連の文学賞は数が多いだけに、賞金の額も300万円から1万円の商品券までピンキリである。

小説を書きたいというニーズは高く、小説投稿サイトの「小説家になろう」には97万強の作品が掲載されている。

小説投稿サイトはピーク時には100以上あり、現在でも数十のサイトがある。重複して小説投稿サイトにアップされている小説もあるが、100万件を大きく上回る作品がネット上にあり、無料で読めるものも多い。

こうした小説投稿サイトに掲載されている作品の中心がライトノベルだ。このジャンルでは、集英社とKADOKAWAがパイオニアになってきた。

集英社が1983年から主催している公募型文学賞のノベル大賞は、同社のライトノベル文芸誌の『Cobalt』やライトノベル・レーベルの読者を対象にした作品を募集しており、一時、コバルト・ノベル大賞と名称を変えていた。

集英社は、現在リニューアル中の集英社ライトノベル新人賞も創設しており、このレポートでは、集英社のノベル大賞は「エンターテインメント小説(ノンジャンル)」に分類している。ノベル大賞は唯川恵、藤本ひとみ、島村洋子、山本文緒、角田光代ら一般小説の分野で活躍している作家を数多く輩出してきた。

KADOKAWAは富士見ファンタジア文庫をベースに、ファンタジア長編小説大賞(現・ファンタジア大賞)を1989年に創設。神坂かんざか 一、秋田禎信よしのぶなどの作家を世に送り出している。

この大手2社が中心となってライトノベル分野を切り開いてきたが、インターネットで作品を公表、販売する小説家が続々と登場。市場が伸びていることもあり、新旧入り乱れて、出版社各社が文学賞を新設し、作家・作品の争奪戦が繰り広げている。

ライトノベル作家の層が厚く、賞金額が少ない文学賞でも作品を集めやすいからだ。その中で、KADOKAWAは賞金300万円の文学賞をいくつも出し、少額の文学賞も企画しているので、高いシェアを維持できている。ライトノベル部門の文学賞と出版社、賞金は以下の通り。


ライトノベル部門の文学賞

賞の名称            主催者(出版社)      賞金
ファンタジア大賞        KADOKAWA       300万円
電撃小説大賞          KADOKAWA       300万円
スニーカー大賞         KADOKAWA       300万円
MF文庫Jライトノベル新人賞      KADOKAWA       300万円
角川文庫キャラクター小説大賞  KADOKAWA       150万円
角川ビーンズ小説大賞      KADOKAWA       100万円
角川ルビー小説大賞       KADOKAWA       100万円
カクヨムWeb小説コンテスト   KADOKAWA       100万円
魔法のiらんど 小説大        KADOKAWA       100万円
ビーズログ小説大賞       KADOKAWA          50万円
魔法のiらんど 恋愛創作コンテスト KADOKAWA        30万円
eロマンスロイヤル大賞      KADOKAWA        20万円
カクヨムWeb小説短編賞     KADOKAWA          10万円
集英社オレンジ文庫ノベル賞   集英社          300万円
集英社ライトノベル新人賞    集英社       リニューアル中
ジャンプ恋愛小説大賞      集英社         100万円
ジャンプホラー小説大賞     集英社         100万円
集英社みらい文庫大賞      集英社          50万円
ジャンプ小説新人賞       集英社          50万円
コバルト短編小説新人賞     集英社          20万円
ナツイチ小説大賞        集英社          10万円
ファンタジー小説大賞      スターツ出版       50万円
スターツ出版文庫大賞      スターツ出版       30万円
野いちご大賞          スターツ出版       30万円
野いちごジュニア文庫大賞    スターツ出版       30万円
ベリーズ文庫大賞        スターツ出版       10万円
ベリーズカフェ恋愛小説大賞   スターツ出版       10万円
ベリーズカフェファンタジー小説大賞 スターツ出版     10万円
マカロン文庫大賞        スターツ出版        3万円
ノベマ! キャラクター短編小説コンテスト スターツ出版 商品券1万円
日本ファンタジーノベル大賞   新潮社         300万円
小学館ライトノベル大賞     小学館         200万円
講談社ラノベ文庫新人賞     講談社         100万円
幻狼大賞            幻冬社コミックス    100万円
ポプラキミノベル大賞      ポプラ社         10万円
『この文庫がすごい!』大賞   宝島社          10万円
HJ小説大賞           ホビージャパン     300万円
ノベルアップ+小説大賞     ホビージャパン      50万円
オーバーラップ文庫大賞      オーバーラップ      300万円
オーバーラップWEB小説大賞    オーバーラップ      150万円
アース・スターノベル大賞 アース・スター エンターテイメント200万円
ネット小説大賞          小説家になろう      100万円
GA文庫大賞             SBクリエイティブ     100万円
ツギクル小説大賞        SBクリエイティブ      10万円
New-Generationアイリス少女小説大賞  一迅社      100万円
アイリス異世界ファンタジー大賞    一迅社        30万円
一迅社文庫アイリス恋愛ファンタジー大賞 一迅社       30万円
恋愛小説大賞          アルファポリス       10万円
ホラー・ミステリー小説大賞   アルファポリス       10万円
キャラ文芸大賞         アルファポリス    総額100万円
エブリスタ小説大賞(出版社と賞を選び、エブリスタに投稿した小説をエントリー。次の4つの賞がある。集英社、竹書房、ポプラ社、宝島社) 
                エブリスタ          10万円
氷室冴子青春文学賞       エブリスタ          20万円
ノベルバノベルズ登竜門コンテスト ビーグリー       50万円
らぶドロップス恋愛小説コンテスト ビーグリー       20万円
ムーンドロップス恋愛小説コンテスト 竹書房        20万円
最恐小説大賞            竹書房        10万円

ホビージャパンは雑誌や小説、コミックスの出版、模型、玩具、ゲームの開発・輸入・販売を行っており、2019年に小説投稿サイトの「ノベルアップ+(プラス)」を開始している。

オーバーラップはコミック、アニメ、映像、音楽などの企画・制作を行ない、ライトノベルには早い段階から参入している。

SBクリエイティブはソフトバンクグループの関連会社で、デジタルコンテンツ事業、出版事業を手掛ける。IT関連の書籍を主に発行していたが、ビジネス書、科学新書、ライトノベルにも力を入れている。

コミック雑誌、コミックス、ライトノベルなどを制作する一迅社は、一迅社文庫アイリスを立ち上げており、アイリス少女小説大賞などを新設。講談社の関連会社である。

KADOKAWAがライトノベルで強みを発揮

KADOKAWAには、ライトノベル・新文芸と読者をつなぐ「キミラノ」というレコメンドサイト(利用者の好みにあった商品をおすすめするサイト)を立ち上げている。

2019年3月にスタートした時点ではKADOKAWAの6レーベルだけだったが、「キミラノ」に参加している出版レーベルは現在29。運営の中心になっているのがKADOKAWAということもあり、KADOKAWA系のライトノベルは13レーベルに上る。

新文芸というのはKADOKAWAが名付けた文芸のジャンルで、インターネット上に発表された作品を書籍化したり、電子書籍化して出版する作品のことだ。ネットだけに公開されるネット(オンライン)小説、ボカロ小説、フリーゲームの小説化といったものが新文芸に該当する。

ボカロ小説とは、ヤマハが開発した音声合成ソフトのボーカロイド(ボカロ)を使って制作・発表された楽曲を原案にして、創作された小説を指す。

KADOKAWAの5大ライトノベルレーベルであるMF文庫J、角川スニーカー文庫、電撃文庫、ファミ通文庫、ファンタジア文庫の他に、MFブックス、角川ビーンズ文庫、カドカワBOOKS、電撃の新文芸、ドラゴンノベルス、ビーズログ文庫、ビーズログ文庫アリス、ノベルゼロの8レーベルが「キミラノ」に参加している。

他の出版社が展開している出版レーベルで、キミラノに入っているライトノベルは以下のようになっている。

キミラノに入っているKADOKAWA以外のライトノベル

講談社  講談社ラノベ文庫、Kラノベブックス、Kラノベブックスf
集英社  ダッシュエックス文庫
小学館  ガガガ文庫
双葉社  モンスター文庫、Mノベルス、Mノベルスf
ホビージャパン  HJ文庫、HJノベルス
SBクリエイティブ  GA文庫、GAノベル
オーバーラップ  オーバーラップ文庫、オーバーラップノベルス、オーバーラップノベルスf
TOブックス   TOブックス

TOブックスは小説、児童書やコミックスを企画・編集し、電子書籍化などを行なっていて、「コミック コロナ」などのレーベルを持つ。

KADOKAWAは2013年10月に連結子会社9社を吸収合併し、一体化戦略でライトノベル分野での総合力、強みを発揮しやすくなった。

連結子会社の角川書店、角川マガジンズ(旧角川マガジングループ)、富士見書房(角川書店の子会社)、アスキー・メディアワークス(旧メディアワークス)、エンターブレイン(旧ベストロン映画、旧アスキー映画)、角川学芸出版(旧飛鳥企画)、中経出版、メディアファクトリー(旧リクルート出版)、角川プロダクション(KADOKAWAグループに属する各社のライセンス管理・営業を行っていた会社)を合併した。

角川プロダクションを除く8社は、社内ブランドという位置付けになり、それぞれ一部門として、商品とサービスを提供する体制に衣替えした。

KADOKAWAが7~8割のシェアを持っていたライトノベル市場の成長力が注目され、他社もこのジャンルに関心を持ち、新規参入や再参入が相次いだ。
講談社、PHP研究所、SBクリエイティブ、ホビージャパン、京都アニメーションなどが独自の出版レーベルを創設して参入している。

ライトノベルのキャンバス文庫(1993年創刊)を発行していた小学館は2005年にキャンバス文庫を終了させたが、2007年にガガガ文庫を創刊して再参入を果たす。

KADOKAWA以外で300万円の賞金を出しているのが集英社、新潮社、ホビージャパン、オーバーラップ。200万円が小学館、アース・スター エンターテイメント。

アース・スター エンターテイメントは、カルチュア・コンビニエンス・クラブの関連会社のカルチュア・エンタテインメントの傘下で、コミックス、ライトノベルを手掛けている。カルチュア・エンタテインメントの関連会社には徳間書店や主婦の友社などがある。

ノベルバノベルズ登竜門コンテストを主催しているのは上場会社のビーグリー。同社はコミック配信サービスを中核に、コンテンツプラットフォーム事業を展開し、小説投稿サイトのノベルバや、女性向けの漫画雑誌や単行本を発行するぶんか社を傘下に収めている。

そのビーグリーは2021年12月に、日本テレビホールディングスの持分法適用関連会社になっている。

どの文学賞を受賞すると、作家になれるか。

賞を受賞すれば、小説家、作家と名乗ることはできるが、食っていけるか、作家として認めてもらえるかどうかは別問題だ。

芸能プロダクションが運営する「お笑い学校」を卒業し、舞台に立てば、お笑い芸人と自称できるが、アルバイトをして食いつなぐ芸人も多い。

著名な文学賞や、活躍している作家を多く輩出している文学賞を受賞すると、読者から指示される小説家になれる可能性は高い。いずれにしても自分の作風にフィットした文学賞を狙う必要がある。

私も、エンターテインメント全般を対象とする文学賞(ノンジャンル)に挑戦した。400字詰原稿用紙で何枚まで、と分量の制約があり、文字量を削って文学賞に応募したが、1次で落選してしまった。文学賞で箔を付けるという夢は断たれた。(敬称略)


アマゾンのキンドル出版で、2023年8月、ペーパーバックと電子書籍の小説が発売されました。「権力は腐敗する」「権力の横暴や不正を許さない」をテーマにしており、お時間のある方はお読みください。
『黒い糸とマンティスの斧』 前原進之介著

2023年9月25日発売の「週刊現代」で『黒い糸とマンティスの斧』が紹介され、9月27日にネットで配信されました。「現代ビジネス 黒い糸とマンティスの斧」で検索すると、記事が出てきます。時間があるときにお読みいただければ幸いです。


この連載記事は、以下のような流れになっています。
1 小説を書きたいと思い立った「いきさつ」
2 どうしたら小説が書けるようになるの?
3 小説を上手く書くために小説講座を探そう 
4 どの文学賞を受賞すると作家になれるの?


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