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マンキュー経済学 ミクロ編 1章まとめ

N.Gregory Mankiw著の「Principles of Economics Micro」の訳書を読んでいるので、備忘録として各章ずつまとめていきます。修正点などあればコメントで指摘して欲しいです。また、少しでも読むに足ればスキしてもらえると嬉しいです。

なぜ人事の私がこの本を読んでいるかというと、人事は社内で多くのTo Doをこなす事が多いですが、その中でどんな施策を行う事が良いのか意思決定を行うシーンも多く、ミクロ経済学はその意思決定において、貴重な気付きを与えてくれるからです。
他の人事という役職の人間や組織づくりを行う人間が「一般に分かりやすいタイトルを付けた本」だけでなく、このnoteを、できれば本書を読んでくれる事を期待します。

第一章はイントロダクションではあるが、この本の後半の予告編のように経済学の10大原理が記載されています。この本の後半でしっかり説明されるので気楽に読んでも良いと述べられています。
各原理については具体例を掲載しているが、不要であれば読み飛ばしても良いです。

ここで出てくるKeywordsは以下の通りで、空でこの言葉の意味と例を述べることができれば次の章に進んでも困らないように思います。

第1章 経済学の10大原理

Scarcity 希少性
Economiics 経済学
Efficiency 効率(性)
Equality 公平(性)
Opportunity cost 機会費用
Rational people 合理的な人々
Marginal changes 限界的な変化
Incentive インセンティブ
Market economy 市場経済
Property rights 所有権
Market failure 市場の失敗
Externality 外部性
Market power 市場支配力
Productivity 生産性
Infration インフレーション
Business cycle 景気循環

1.人々はトレードオフに直面している

まず学生の例で説明している。
学生が所持している時間という資源について考えた時に、経済学を勉強することにも時間を使えるし、はたまた心理学の為に使うこともできる。
このように、ある事の為に使用する時間は他の事に割くことができないというトレードオフの関係に人々が直面していると著者は触れている。

また、個人単位ではなく社会についても触れている。
社会は常に効率性公平性の2つのトレードオフに直面している。この時に効率性とは資源を最大限獲得している事を示し、公平性とは資源がバランス良く配分されている事を示す。
社会の場合、救済の必要な(資源が不足している)人々に対して、支援を行うが、この資源自体を個人所得税のように、救済が不要な人々からより多く徴収している。これによって、公平性という観点でいえば資源はバランス良く配分されていると言える。しかし、これは高所得をもたらす労働の報酬を下げてしまうので、懸命に働く事を怠るようになり、資源を最大限獲得しなくなるので効率性は下がってしまう。

トレードオフを認識することは経済学を学習する上で重要となる。

2.あるものの費用は、それを得るために放棄したものの価値である

トレードオフに直面している以上、何かを決定するためには費用と便益を比較する事が重要となる。だが、行動に関しての費用というものは往々にして測定する事が難しいものが多い。
ここでは学生が大学に行くことを具体例に説明をしている。短く述べると大学に通うという行動をとる時には、かかる金銭だけでなく時間にも焦点をあてる必要があり、本来労働によって得られるはずであった賃金こそが大学に行く事の最大の費用であると述べられている。

このように、何かを得る為に放棄したものを機会費用という。意思決定時にはこの機会費用を意識する事が重要である。

3.合理的な人々は限界原理に基づいて考える

この段落では、合理的な人々が限界的な便益限界的な費用を元に意思決定をしていることが述べられている。ここでいう限界とは、ギリギリの意味合いではなく、「端」のようなイメージであり、微修正などの「微」の認識である。経済学者は既存のプランに微修正を加える事を限界的な変化と呼ぶ。

まだ理解がしきれていない場合は以下の具体例を読むと良いです。

例えば航空会社が10万ドルで200席の飛行機を飛ばすことができる時に、1人の客から回収する各席の費用は平均500ドルとなる。つまり500ドルより安井価格でチケットを売ればマイナスになってしまうと考える。
しかし、席が10席余った状態で離陸を迎えたとき、搭乗口に300ドルであれば支払いたいと考えている人々がいたとき、合理的に判断をすれば300ドルでチケットを販売するべきである。
なぜなら、乗客1人あたりの平均費用がたとえ500ドルであったとしても、限界費用(搭乗口まで来ている人を誘導するための人件費や、機内で購入するかもしれない飲食物の個数について微修正に関わる費用)はわずかであり、300ドルはその限界費用を大きく上回るからである。

意思決定をする為には、限界原理に基づいて考えることは重要である。

4.人々は様々なインセンティブに反応する

インセンティブとは、懲罰や報酬のように人々に何らかの行動を促す要因のことである。

比較的イメージしやすい内容かと思うが、もしイメージしづらければ以下のシートベルト法の具体例を読んでほしい。

事故時の死亡率を減らすために車両にシートベルトを搭載する事を義務付けるシートベルト法が可決・施行された。
これは事故率を増加させ、歩行者の死亡率を増加させる結果となった。これはどのようなインセンティブが発生したのか。
そもそも事故に気をつけて慎重に運転することはドライバーの時間とエネルギーを消費する。シートベルトを着用することにより事故を起こしたときの死亡率は下がり(事故の費用は下がり)、慎重に運転する事の便益を低下させてしまう。これによって、スピードを上げて軽率な運転が増える。
(そして、シートベルト法施行に無関係な歩行者が事故に巻き込まれ死亡するリスクは向上した。)
シートベルト法は安全を高めたのではなく、事故を増加させるという要因となった。

5.交易はすべての人々をより豊かにする

交易は人々が得意分野の専門家になることを可能にする。他の人々と交易する事で、多様な財やサービスをより低い費用で得ることが可能になる。

具体例ではないが、これは反対のケースを考えると理解しやすい。
交易をしないケースを考えた場合、人々は競合環境から離れる事ができる代わりに、衣食住すべてを時給しなければならなくなる。これは豊かから遠ざかる結果になる。
交易によって、自分が苦手とする分野を補う事ができ、相場よりも高い費用を払う必要がなくなる。

6.通常、市場は経済活動を組織する良策である

かつて中央集権的な計画経済システムを採用していた国のほとんどが、今日ではそのシステムを放棄し、代わりに市場経済システムを構築しつつある。

市場経済においては、中央集権的な場合での意思決定者は、何百万もの企業や家庭の意思決定によって代替されている。
企業や家庭は分散されているにも関わらず、価格とそれぞれの利益が上手く意思決定を導いている。

(この著書の中ではアダム・スミスの「見えざる手」の話が記載されている。アダム・スミスの副次的定理として、価格に関与する税が資源配分に悪影響を及ぼす事が指摘された。これは価格体系を歪めてしまう為であると記載されている。)

市場経済とはこのように、市場において財・サービスをやりとりする多くの企業や家庭による分権的な意思決定を通じて資源が配分される経済を指す。

市場経済は、各家庭や企業が利己的に動いているにも関わらず、全般的な経済的福祉を高めるように経済活動を組織する事に貢献している。

7.政府が市場のもたらす成果を改善できる時もある

政府が必要な理由次の2つである。
1.所有権を保護する制度を市場経済が必要としている為
2.市場経済で意思決定を調整する「見えざる手」全能では無い為

1の具体例としては以下である。
農夫は自分が農耕した作物を盗まれるとすれば、農耕を行わなくなるし、顧客がお金を払う保証がないのであれば、レストランは料理を出さない。
このように、個人の有する所有権を保護する事が重要となるからである。

2の具体例としては以下である。
例えば、村に井戸が1つしか無いとした場合、競争相手がおらず価格は不当に引き上げられる可能性がある。こういった時に、「見えざる手」は調整する能力を持たず、政府の介入が必要となる。

政府が市場のもたらす成果を改善できる。のではなく、できる時もある。としている事に留意したい。

8.一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依る

国や時代によって、生活水準に大きな違いがある事は、生産性の相違によって説明できる。
生産性とは1人の労働者が1時間あたりに生産する財・サービスの量を示している。生産性が低い国においては、ほとんどの人がより低い生活水準を甘受しなければならなくなるのである。

9.政府が紙幣を過剰印刷すると、物価が上昇する

ここでは経済における全般的な価格上昇であるインフレーションについて記述している。

大幅で持続的なインフレの多くは、貨幣供給量の増大が原因であり、貨幣が大量に印刷されると、貨幣の価値は下落してしまう。この本の中では、1920年代初期のドイツでの物価上昇を例として説明していた。

10.社会は、インフレと失業の短期的トレードオフに直面している

9で述べたインフレーションについて、経済学者の多くが共通として持つ考え方をここで説明している。

①貨幣量の増大は、全体としての支出を刺激し、財・サービスへの需要を増大させる。
②増大したうようによって、次第に企業は価格を引き上げていくが、その途上において企業は雇用を増やす、生産する財・サービスの量を増やす。
③結果として、貨幣量の増大は、雇用の増加を生み、失業の減少をもたらす

上のように考えると、インフレーションと失業はトレードオフの関係にあることが理解できる。
(インフレが進めば、失業は減る。インフレが進まないと失業は減らない)

最後に

ここまでが経済学の10大原理の紹介でした。
この本を読み進めていく中で、この原理に立ち返ることは非常に多くなるらしいです。後半の章を読む前にどの原理に基づいて解説をしているのか考えながら読むと良いかもしれません。

次回の第2章では「経済学者らしく考える」という内容に入ります。

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