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【イベントレポート】多様なやさしさの在り方を視覚・聴覚・嗅覚でとらえる「ダイバーシティアート やさしさの花」展

「やさしいことを一つすると、一つ咲くやさしさの花」をテーマに、やさしさの在り方を問いかける展覧会「ダイバーシティアート やさしさの花展 」がITOCHU SDGs STUDI Oで開催されています。会期は9月22日〜10月16日。

主催の「一般社団法人LITTILE ARTISTS LEAGUE(リトル・アーティスト・リーグ)」(代表 ルミコ・ハーモニ ー)は、社会課題をアートで解決するグローバルアートチーム。次 世代を担う子どもたちがアートを通じて多様な表現力とグローバル思考を育むことをミッションに、多彩なアートプロジェクトやワークショップを展開しています。

本展覧会は、抽象的で定義しにくい「やさしさ」の在り方を問いかけ、目に見えない「やさしさ」の色や形、香りを体験できるアートプロジェクトです。

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【やさしさの花回廊】「やさしさ」を色や形、言葉で可視化した空間

会場に足を踏み入れると、目の前に広がるメイン展示の「やさしさの花回廊」。展示作品の「やさしさの花」は、画用紙に絵の具を垂らして半分に折り、画像紙を開くと絵が出来上がるデカルコマニー手法をベースに制作されています。筆を使わず、誰もが簡単にアートを生み出せるのが特徴です。重度障害者の子ども達とのワークショップの中で生まれ、ダイバーシティアートとして確立しました。

従来の絵画は、絵が上手い子や一生懸命努力した子こそが、素晴らしいが作品を生み出せると考えられます。もちろんその才能や努力は評価されるべきものではありますが、一方でスタート地点にさえ立てず、取り残されてしまう人々の存在もあります。「やさしさの花」は、たとえ筆を持てない子であっても、本人が感動するような作品を生み出す可能性に満ちたアート作品です。同時に、誰もが同じステージに立てるチャンスを平等に与えてくれるのです。

さらに展示作品の「やさしさの花」には、さまざま国籍や文化的バックグラウンドを持つ人々が考えるやさしさの定義やエピソードが文字として添えられています。

やさしさとは、目に見えないけれど、ちゃんと心で感じられるもの。他人が考える「やさしさ」の定義を文字でなぞりながら、ふと自分にとっての「やさしさ」の在り方を思い巡らせたくなります。

絵の具の色や配置、量によって唯一無二な仕上がりを見せる「やさしさの花」は、まさにダイバーシティを考える上でも重要な役割を果たしてくれるもの。心のおもむくまま、偶然が生み出すアートの魅力を感じてみてはいかがでしょうか。

【色を音に変えるプロトタイプ】「聴覚」でアートが楽しめる世界を創る

本展覧会では、色とりどりの「やさしさの花」を「聴覚」で楽しむプロトタイプの展示を行なっています。今回開発したシステムは、「やさしさの花」に描かれている「色」をデバイスで検知し、その色に応じた「音」を奏でる仕組み。RGBカラーモデルの色分解した数値を音に割り当て、色を音に変換しています。

開発のきっかけは、以前開催した「やさしさの花」展覧会で、視覚障害者の方とアート鑑賞を試みたことからだったそう。作品について説明を受けたり、特別に作品を触らせてもらうことでアート鑑賞はできたものの、「色」の認識にはハードルの高さを感じたといいます。そのため、「色を音に変換できたらこの華やかさが伝わるかもしれない」という想いが、本システムの開発につながります。

本展ではシステムを使って「やさしさの花」の色を音に変換する様子を映像で初公開。実際に目が見えないお子さんにもシステムを体験してもらい、色を音に変換した音色を楽しむ様子もご覧いただけます。

【香りの森】やさしさに香りがあるなら、どんな香りだろう?

展覧会スペースの奥には、嗅覚でアートを楽しむ「香りの森」コーナーが設けられています。6種類の「やさしさの花の香り」が展示されており、ドームを開けて実際に香りを嗅ぐことも可能です。

香りの森が生まれた背景には、「やさしさに香りがあるとしたら、どんな香りだろう?」という何気ない問いからだったそう。アロマティーク調香デザイナーの近田梨絵子さんとともに、やさしさのエピソードとリンクした香りづくりに取り組みます。今回は近田さんが代表のJOAA日本オーガニックアロマ協会の生徒さんたちの活躍の場として、同協会に所属する香りアーティスト6名が香りを手がけています。

ストーリ仕立ての6種類の香りは、「みんなのキモチがわかり過ぎるうさぎが咲かせた『やさしさの花』の香り」や「ありのままを受け入れるトカゲに咲いた『やさしさの花』の香り」など、多種多様なやさしさの在り方を香りで表現しています。

香りに使用しているのが、近田さんが手がけるアロマブラン「Muku(ムク)」の純国産オーガニ ックエッセンシャルオイル。日本国内の原材料にこだわり、廃棄されてしまう資源を再活用しているのが特徴です。

今回はオレンジスイート、柚子、ひのきなどの和精油を中心に、ラベンダーやゼラニウムなどの西洋の香りもブレンドされているそう。柚子の精油は廃棄予定の皮から、ひのきは間伐材として廃棄されてしまう資源から抽出しており、地球へのやさしさも同時に感じられる香りに仕上がっています。

香りのワークショップで学んだ、香りを通じて人と人が分かり合える心強さ

会期中はさまざまなワークショプが開催 される中、今回参加したのが自分なりの「やさしさの花」の香りをつくる「FRAGRANCE WORKSHOP(フレグランスワークショップ)」。「やさしさの花」から連想する香りを自らの手で調香し、世界の一つだけのアロマスプレーを完成させます。講師は、「香りの森」を手がけたアロマティーク調香デザイナー・近田梨絵子さん。ワークショップでは、近田さんが手がける「Muku」の精油を使用しました。

香りづくりの第一ステップは、展示作品「やさしさの花」を見て思い浮かぶ言葉を書き出すことから。感覚を研ぎ澄ませ、イメージに合う言葉を探っていきます。その後、作品のストーリーから感じたことを文字でつづり、香りのイメージを固めていきます。

イメージを言葉にする作業は思ったよりも難しく、日常生活の中で、いかに感性にふたをして暮らしているかに気付かされる瞬間でもありました。とにかく頭で考えすぎないこと。感じたままを表現するとは、普段使わない筋肉を使っているような感覚でした。

香りのイメージがつかめたら、15種類の精油から3〜4種類を選んで、香りをブレンドしていきます。今回選んだ香りはゼラニウムとひのき、ラベンダー、メイチャン。柑橘のさわやかさの中にほんのり甘さを含んだ柔らかな香りに仕上がりました。

出来上がった香りには、目で見ずとも、耳で聞かずとも、自分なりの「やさしさの花」が存在しています。相手にわかりやすく言葉を尽くさなくても、香りを嗅いでもらうことで、その人が思う「やさしさ」を表現できるのです。

近田さんは、これまで香りのワークショップを開催する中で、香りを介して人と人が分かり合う瞬間をたびたび目にしてきたといいます。出来上がった香りをお互いに嗅ぎ合い、うなずき合うだけで、言葉を介在しない共感や理解が自然に生まれるだそう。

無理に言葉を重ねなくても、誰もが理解できる言葉選びに気をとられなくても、他者とつながり合える喜びや安心感。香りを通して、複雑なものを複雑なまま、わかりにくいものはわかりにくいまま、ありのままを表現する勇気を授けてもらったような気がします。

それはかくあるべきにとらわれず、自分自身を受け入れる寛容さであり、そのやさしさが他者に広がり、やさしさの花を咲かせるのかもしれません。

会期中には多彩なワークショップやイベントが開催されています。
(ご予約はコチラから:https://kindness-2022.peatix.com

【展示会情報】

■期間:2022年9月22日(木)~2022年10月16日(日)11:00~18:00
※休館日:毎週月曜日(月曜日が休日の場合、翌営業日が休館)
■会場:ITOCHU SDGs STUDIO (東京都港区北青山2-3-1 Itochu Garden B1F)
■料金:入館料無料
■関連イベント:ワークショップやトークイベントなど
(予約サイト:http://kindness-2022.peatix.com
■特別サイト:イベントの概要や歴史に加え、さまざまな方のやさしさのエピソード記事をご覧いただけます
https://www.littleartistsleague.org/kindness
■関連商品:会場内にて販売。売上の一部は、病児の子達のワークショップ無料招待などに活用されます。


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