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【取材記事】カカオ農家の問題にフォーカスしたサステナブルなスイーツ事業「幸せの生ガトーショコラ」がもたらす「社会貢献」と「おいしい価値」

Nama Gâteau Au Chocolat は、神奈川県小田原市にあるオンライン限定のガトーショコラ専門店です。世界的にも問題視されているカカオ農家の「貧困問題」と向き合い「Happy cacao project」として「幸せの生ガトーショコラ」を製造・販売しています。ベルギーの国際的材料メーカー「ピュラトス社」独自のサステナブル・プログラム【カカオ・トレース】のチョコレートを100%使用し、問題解決に繋げています。今回は創業の経緯やプロダクトへのこだわり、SDGsとの関わりや今後の目標などを代表の柳下様にお伺いしました。

お話を伺った方

柳下 龍介(やなぎした りゅうすけ)様
Nama Gateau Au Chocolat 代表取締役
自動車販売会社で営業とマーケティング担当として勤めた後、IT業界のベンチャー企業でオンラインマーケティングを経験。その後、自動車販売会社の立ち上げに携わり経営戦略やマネジメントを学ぶ。現在はNama Gateau Au Chocolatのプロジェクトに挑戦中。
プロジェクト全体のディレクションとマーケティングを担当。



カカオ農家の問題に携わるため創業を決意。セールスマーケターが、なぜ「生ガトーショコラ」に挑戦したのか?


mySDG編集部:創業の経緯から教えてください。

柳下さん:事業のスタートのきっかけは、カカオ農家さんの問題にフォーカスしたことからです。前職のIT業界のベンチャー企業ではバングラデシュに支社があり、出張で現地へ行く機会がありました。
その時、現地の人々が抱える雇用問題・貧困問題を目の当たりにしたんです。バングラデシュは開発途上国のひとつで様々な問題を抱えています。以前から途上国問題に関心があったこともあり、途上国問題に関わる事業に取り組みたいと思ったことが、現在の事業につながっていきます。

mySDG編集部:途上国の問題はいくつかあると思いますが、なぜカカオ農家さんの問題に取り組もうと思ったのでしょうか。

柳下さん:カカオ農家さんの問題は途上国問題の代表例であると思っています。昔からこの問題を知っていて、何か手助けをしたいと強く思っていたんです。
それから、ビジネスとしての持続性も重要だと思います。実現可能なサステナブル事業の商材として「カカオ」は難易度が適度で挑戦しやすかったんです。チョコレートであればユーザーにも届きやすい商材だと思いました。

途上国の農家さんへのサポート方法として、農家さんから直接カカオを購入するか、カカオ栽培に関われないかと当初は考えたんです。しかし、それにはノウハウも資金も足りず、直接的に関わることは難しくて。それならば、サステナブル・プログラム【カカオ・トレース】(以後、カカオ・トレース)にジョインして、カカオ農家さんに還元性のある商品を作ろうと、現在の事業に取り組んでいます。

mySDG編集部:フェアトレードチョコレートをそのまま板チョコの形で販売する方法もありますよね。柳下さんはなぜ【カカオ・トレース】のチョコレートをガトーショコラにしようと思ったのですか?

柳下さん:前職では自動車関係や、IT関係の企業にいまして、マーケティング業務に従事していた経験から、マーケティング視点でチョコレート市場に可能性を感じていました。しかし、市場の規模が大きい反面、競合が多く、他製品と差別化することが難しいというデメリットがありました。

競合との差別化を図るため、サステナブルなスイーツであることのブランディングを行いながら、商品の品質向上もするために、現在のスイーツ事業のシェフである増井睦さんに加わってもらいました。
最近では「ガトーショコラ」の認知度が高まっていますので、特別な価値と魅力を訴求できるように「生(なま)」という言葉をキーワードに商品開発とブランディングを行いました。
日本人は「生」という言葉に対して「高級感」や「特別感」を連想すると思います。サステナブルであり、リッチでおいしいスイーツが「おいしくて幸せな体験」と「貢献できている体験」が組み合わされば、特別な価値提供ができるのではないかと考えました。

そして、サステナブルなスイーツというだけでは、ユーザーのニーズに応えることが難しく、選んでいただけないと思いました。食べておいしい、おいしいから贈り物に使いたい、など特別な価値提供をすることが、とても重要なことだと考えています。

mySDG編集部:マーケティングの観点から、カカオを使ったスイーツの「生ガトーショコラ」を選ばれたのですね。

柳下さん:はい。商品やサービスを開発する時には、自分のリソースとよく向き合います。シェフの増井さんのように、商品やサービスを作るときに必要である「専門性のある人」や「チーム」が自分の周囲にいるのか、自身の能力を活かせる業界か。資金面なども含め、様々な面から考慮して選んだのが、サステナブルなスイーツ「生ガトーショコラ」だったのです。
また、製造やオペレーションの管理の難度が低く、賞味期限が長く在庫ロスがでにくいことなども良い点でした。

通常パッケージ

柳下さん:私たちは事業を通し、SDGsやサステナビリティへ貢献していくことを、とても大切にしています。カカオ・トレースのチョコを商品に使用するだけでなく、商品を梱包する箱や食品ロスなどにも取り組んでいます。

現在のパッケージはシンプルなデザインで、環境に配慮された素材を使い、無駄な紙資源は使っていません。商品案内と私たちの取り組みは、QRコードから見ることができます。
また「生ガトーショコラ」は、基本的に「受注生産」なので食品ロスが生まれづらくなっています。


サステナブル・スイーツ「生ガトーショコラ」に小麦粉を使わない「想い」と、おいしい「理由」


mySDG編集部:ふるさと納税の返礼品にも選ばれている「生ガトーショコラ」ですが、これには小麦粉・砂糖・添加剤・保存料が不使用なんですね。

柳下さん:小麦粉を使わないことには「想い」がありまして、私たちはチョコレートを沢山使いたいんです。チョコレートを沢山使うことで、カカオ農家さんに、より多く還元されるサステナブル・プログラムに参加しているからです。
「生ガトーショコラ」を楽しむかたにも、カカオ農家さんの存在を感じてほしい気持ちがありましたので、チョコレートの含有率を上げ、チョコレートの味を深く味わえるようにしました。おいしさの追求面でも、小麦粉不使用にすると、よりリッチな口当たりに仕上がります。

砂糖に関しては原料のチョコレートに「てんさい糖」という体にやさしい砂糖が使われています。製造時に砂糖は不使用ですが、控えめな甘さがあります。

mySDG編集部:ちなみに、添加剤や保存料も不使用にした理由はなぜですか?

柳下さん:SDGsやサステナブルに関心の高い方は、食品添加物を気にする方が多い印象です。サステナブルな商品を選びをするかたをターゲットにしているので、添加剤・保存料を使わない製法を選びました。私自身も添加剤や保存料があまり好きではないですしね。

シェフ増井さん

柳下さん:「幸せのガトーショコラ」の商品開発には、「アマン東京」や「シャングリ・ラ東京」など、5つ星ホテルで経験を積み、現在「KANAYA RESORT HAKONE(カナヤリゾートハコネ)」料理長の、増井睦さんが手がけてくれました。一流の技術を持ったシェフが考案した、とてもおいしいガトーショコラです。

mySDG編集部:先ほどお話に出た増井さんですね。素晴らしいご経歴ですね。味の特徴などはありますか?

柳下さん:味の特徴は、甘さ控えめで「カカオの風味」や「チョコレート本来の味わい」を活かしています。甘党の方には、甘みが物足りないとのお声をいただくこともありますが、多くの方からは、「甘さを十分に感じる」とご感想をいただきます。当初、お子様には少しビターかな?と思っていましたが、お子様も気に入っているとの声をよくいただきます。また滑らかにとろけていくような「口溶けの良さ」が特徴です。

mySDG編集部:カカオ87%のチョコレートが好みで、白砂糖や水あめの甘さが苦手な私にはちょうどいい甘味かもしれないですね。

柳下さん:カカオ・トレースで生まれた「ベルコラーデ」というチョコレートは”クーベルチュールチョコレート”という国際規格の品質の高いものです。「幸せのガトーショコラ」はこのチョコレートを使用しています。
カカオ専門家が手がけたチョコレートは香りが芳醇で味わいに深みもある美味しいチョコレートだと感じます。


mySDG編集部:使用しているチョコの「ベルコラーデ」は、とても品質がいいのですね。なぜそんなに高品質なものができるのでしょうか。

柳下さん:カカオをチョコレートにするには、「発酵」や「乾燥」など、幾つかの工程があるので、正しい知識や技術がないとおいしく作れないんです。
カカオ・トレースのチョコが高品質な理由は、専門家から農家さんに、カカオ農法に技術トレーニングや支援を行って、カカオ豆の品質と価値を高めているからです。さらにカカオ豆収穫後の工程を一元管理することで品質の良いチョコレートの精製ができています。


個性的なOMOストア、CHOOSEBASE SHIBUYA(チューズベース シブヤ) で唯一の店舗販売。


CHOOSEBASE SHIBUYA (チューズベースシブヤ)

mySDG編集部:先日から出店されている渋谷のストア「CHOOSEBASE SHIBUYA (チューズベースシブヤ)」さんでは唯一、店舗での販売なんですね。「幸せの生ガトーショコラ」が、オンライン販売も含め1日1000個も売れたことがあるとか。ストアの提案として、『「モノを買う」のではなく、「気付き」や「賛同」・「応援」を入り口に、“意味に出会い、意志を買う”』というのも興味深いですね。

柳下さん:はい。出店させていただくことで、多くの方に知っていただけるメリットがあります。チューズベースシブヤではより多くのかたに、カカオの問題を知っていただくため、問題や取り組みが視覚的にわかりやすいパッケージを新しく作ってご提供しています。

CHOOSEBASE SHIBUYA 特別パッケージ

mySDG編集部:チューズベースシブヤさんはOMOストアなんですね。「幸せの生ガトーショコラ」は、通常の販売はオンラインのみですか?

柳下さん:そうです。自社のECサイトをメインに、楽天市場などの他社ECサイトなどでも販売を行なっており、高評価もいただいています。また小田原市のふるさと納税返礼品にも選ばれています。元々、オンライン販売がメインで製造と発送店舗が小田原市にあります。

mySDG編集部:渋谷には足を運べない遠方の方なども、全国の方が購入可能で便利ですね!


「Nama Gâteau Au Chocolat」事業の目的がSDGsへ直結。小田原市SDGsパートナーとしての活動も。


mySDG編集部:Webページにも掲載のある、現在取り組んでいるSDGsの目標について、困難や課題などはありますか?

柳下さん:私たちのミッションは、途上国問題へフォーカスすることなので、SDGsへの取り組みは事業の大きな目的の一つです。特に、SDGsの目標の中の1番と2番の問題にアプローチしていきたいと思っています。

事業の目的がSDGsへ直結しているので、取り組むことへの苦労というのはないですね。私たちは小田原市SDGsパートナーとしても活動していまして、パートナーとして学校の授業で講師をしたり、イベントの講和をしたりします。その中で、カカオ農家さんの貧困や児童労働の問題を伝えています。逆にSDGsがあるおかげで、私たちが取り組んでいる問題を知ってもらう様々な機会をいただいています。

mySDG編集部:なるほど。取り組み内容がSDGsとリンクしているんですね。

柳下さん:さらに、私たちの知らなかった問題を知るきっかけになったので、SDGsに取り組んで良かったと思います。
当初、私たちはカカオ農家さんの貧困や児童労働の問題にしか着目していなかったのですが、SDGsの枠組みの中に入ることで、ごみ問題などの環境問題にも関心を持つようになりました。そのおかげで商品パッケージや梱包資材も、環境に優しいものを選び、無駄な資源を使わないように取り組むことができました。また、洗剤を植物由来の環境にやさしいものに切り替えたり、業務で使用する紙を再生紙のものにしたり、日頃の事業活動の中でも、すぐにSDGsに取り組めることは多くあると思っています。

mySDG編集部:そうですね。17の目標はそれぞれ具体的な目標として、やることが書いてあるので、取り組む項目としてヒントになることがありますね。

柳下さん:私はSDGsのコミュニティに入っているので、他社さんの取り組みを見て、自社の参考にさせてもらっています。きっと、誰でもSDGsに取り組めると感じています。

mySDG編集部:素晴らしいですね。企業でも個人でもそれぞれができることがあると思いますので、大きなことでなくてもいいですから、行動することが大事ですね。


SNSでは農家さんの生活やカカオの栽培風景も紹介。今後の目標は 「Happy cacao project」 の名のもとにカカオ農家さんに直接的に関わること


Happy cacao project 仕組み

mySDG編集部:カカオ農家さんと共にある「幸せの生ガトーショコラ」ですが、どういった方に食べていただきたいですか?

柳下さん:サステナブル・スイーツなので、サステナブルやエシカルなどに関心の高い方にはもちろん、そうでない多くの方にも私たちの商品を召し上がっていただきたいです。SDGsや途上国問題に、今は関心を持っていないとしても、私たちが「おいしい価値提供」をしていく中で知っていただき、関心を持っていただけたら嬉しいと考えています。

当店のInstagramTwitterは一般のスイーツブランドと違い、商品を紹介する投稿だけでなく、SDGsの内容や農家さんの生活、カカオの栽培風景も紹介するようにしてます。

いただいたコメントの中には、商品を買ったことをきっかけにSNSを見て、SDGsを知ったという方もいました。そうした方をもっと増やしていきたいですね。

mySDG編集部:最後に今後の目標をお願いします。

柳下さん:先日TV番組の「青空レストラン」にも取り上げていただきましたが、オンライン販売がメインなので、全国へ認知を広めていきたいですね。

現在は、カカオ・トレースとパートナーシップを結ぶことでカカオ農家さんの「貧困」や「児童労働」の問題に間接的に取り組んでいますが、将来的には直接的に問題に取り組めるようになりたいと考えています。農家さんたちをサポートするためのノウハウを学び、オリジナルのサポート・プログラムを作ったり、参加しているプログラムと協業したりして、もっとカカオ農家さんたちが幸せになれるように活動していきます。

私たちが掲げている「Happy cacao project (ハッピー カカオ プロジェクト)」は、食べていただくかたに、”美味しい幸せ”を届けて、その幸せをカカオ農家さんへ”繋げる”こと、カカオ農家さんの”問題をなくす”ことを目的にしています。
この「Happy cacao project」が独自のサステナブル・プログラムとなり、より多くのカカオ農家さんへ幸せを還元できるように頑張っていきたいです。

mySDG編集部:本日は”おいしい”貴重なお話をありがとうございました!

「Happy Cacao Project」 ーあなたの「美味しい」が カカオ農家の「生きる力」につながるー



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