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ヤムーの大冒険 第1章 3話 はじめての仲間〜2日目〜

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ヤムーは考え込んでいました。
この大冒険は自分を強くするためのものです。
チャッピーと2人で行く事になると、強くなれないんじゃないかと。
チャッピーは不安そうにヤムーの顔を覗いています。
ヤムーは考えた末、チャッピーを大冒険に連れて行く事に決めました。なぜなら仲間を作ることはこれから厳しい自然の中で生きていく為には、大切なことだと判断したからです。

「分かったよチャッピー、一緒に大冒険に行こう!もう泣きべそなんてかかないでくれよ!」っとヤムーは笑った。チャッピーも少しだけ頰を赤らめながら、照れ臭そうに微笑んだ。
「もう羽は大丈夫かい?」「もうへっちゃらだい!」っとチャッピーは小さな羽を何度か上下に刻みよく動かしてみせました。
2人は大冒険のはじまりの前に何度もハグをしました。

ふたりは冬瓜畑を後に南へ向かいます。
ヤムーが南へ向かうのには、もうひとつ理由がありました。ヤムーが幼い頃に母親から聞いた話ですが、この南の方角には川が流れていて、母親が子供の頃にその川沿いの石の洞窟に住んでいたそうです。
もしかしたら離れ離れになったヤムーの父親やお祖父さん、お祖母さんや仲間たちがまだ暮らしているかもしれないのです。

ふたりは春一番の風を全身で感じながら、永遠と続く小松菜畑沿いを南に向かいました。
チャッピーはまだ飛べない鳥です。
少し不安そうな表情で、ヤムーのすぐ後ろに続きました。
この辺りは小松菜の栽培が盛んで、ビニールハウスの中を覗くと所狭しと小松菜の芽が顔を出しています。
この畑のおじいさんはいつも働き者で、ボロボロの作業着にクシャクシャの笑顔で畑を行ったり来たり汗まみれになって頑張っています。
ヤムーは人間は怖いし大っ嫌いですが、この畑のおじいさんと庭の主人だけは唯一信頼できる人間だったのです。

ビニールハウス畑の脇をふたりはひたすらひたすらに南へ向かい、ついに畑の隅っこまでたどり着きました。気づけば空は茜色に色づいています。

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「チャッピー、もうすぐ夜になる。ここらで食事をして睡眠をとろう。」ヤムーは落ち着いた口調で諭すように言いました。
チャッピーは小松菜をヤムーは小さめのクモを2匹食べながら、たわいもない話で盛り上がり、ふたりは終始笑い合いました。
そして、チャッピーは生まれて間もなく母親を亡くし、お姉さんとも離れ離れになっていること。
羽の怪我はカラスのボスであるジャックグロウに突つかれたということ、少し踏み入った話までしました。
ヤムーはとても悲しい気持ちになりました。
せめてチャッピーのお姉さんを見つけ出したいと強く思ったのです。
ヤムーも叔父さん以外の家族はいないことや、この大冒険は自分が強くなるための旅であることまで、包み隠さず話しました。
2人とも疲れていたのか、まんまるな満月がスマホのライトみたいに明るい光を放つ空の下で眠りについていました。
それとヤムーは少々イビキがうるさいようで、チャッピーは何度かそれに起こされたとか、、

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