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[140字小説] サヨナラグレー

歩道橋を上ると、いつもより空が近かった。
白を透かしたグレーが目に沁みる。

眼下に広がる景色は、少しだけ濡れていた。
気まぐれな雨に撫でられたらしい。

深く息を吸うと、冷えた空気の向こうに別れの匂いがした。

サヨナラ

何となく呟いた哀れな挨拶は、輪郭を持たないままグレーに溶けて、儚く消えた。


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