ワインセーバーでワインは守れるのか。


友人がワインセーバーを買おうか悩んでおり私にメッセージが来ました。

「ワインセーバーッテイミアルノカイ?」


その答えを探すべく私は実験を企てた。

実験概要

実験は簡単。
なるべく販売までの酸化状態に差が出ないようなワインを2本買います。
片方はワインセーバーを使いながら飲み、片方は使わずに飲んでいきます。

さてどうなるのでしょうか。

もう少し詳細を加えておくと、
今回用いたワインセーバーは1500円ぐらいのポンプ式の空気抜きタイプのもので、ワインは2018年のチリ産カベルネソーヴィニヨンのスクリューキャップ。
ちなみにこのワインセーバーのブランド名は頂き物でもあるのでわかりません。ご了承ください(頂き物で実験するなとは言わないでください)。

ここでスクリューキャップを使ったのは、もちろんスクリューの方がコルクより差が出にくいですし、なにより抜栓後の状態のキープが楽だからです。

そして片方は開けて一杯飲んだ後、ワインセーバーを用いて密栓。
もう片方は一杯飲んでそのままスクリューキャップで密栓。

これを一週間毎日テイスティングしていこうと思います。

テイスティング結果

初日。
2本とも特に大きな差はなく、
だいたいのテイスティングは以下の通りに。




2日目。
全体のチャーミングな印象やグリーンさとベリー感が顕在。
特に2本で大きな差は見られません。

おそらくヘッドスペースがまだまだ空いておらず触れる空気自体の量がそこまで多くないことが要因だと思います。
この実験では日にちが経つごとに量が減り、加速度的に差が出てくるはずですが。

3日目。
色調に変化はなし。ルビー色のまま。
一方で香りの方は初めの2日に比べて果実系の香りが控えめになり、香りの強さ自体も抑えられてきました。
まだ特に差は出ず。まだ全く問題なく飲めます。このままいくと大きな差が出るまでに一週間以上かかるかもしれません。

1日体長不良で飲めませんでした。
ということで1日飛んで5日目。

依然として色は紫がかったリムで酸化感を感じませんが、スクリューキャップの方は口に含んだ時の果実の香りがだいぶ失われてきました。
酸化によるまろやかさや全体のバランスの良化というのは特にはないですが、タンニンは少し荒々しさが取れてきたかもしれません。

一方で空気抜きのキャップを使っている方に大きな問題が発見されました。
元々開けるときに空気を一度入れるのですが、2日も経つとその時にプシュっという音がしないのです。
つまり一時的に空気を抜くことはできてももしかすると少しずつ入っているのかもしれません。

スクリューキャップの方が落ち着いた香りの印象で香りの強さの印象がやや抑えめだったのに対し、こちらはまだ軽やかな果実感が少し残っている印象です。
一方でタンニンは心なしか柔らかくなっている印象ですね。
そのぶん酸が浮いている感じがあり、全体の軽さみたいなものが粗目立ちしている感じがあります。

未だどちらもアルコールの酸化によるアセトアルデヒドの存在もまだ確認できないですね。
あとはいずれもピーマン香のようなグリーンなニュアンスが減ってきているのは気になる点でしょうか。

では6日目を見ていきましょう。
ついに現れました。
スクリューキャップの方に酸化系統の香りです。
まだこの段階ではツンとするというよりは他の香りをマスクしているような状態です。
また口に含んだときにも少しバランスの取れていない酸があります。
一方で少しMoldyな感じ、カビっぽさ、土っぽさのようなものも感じ取れるようになりました。

それでは空気抜きを使った方ですね。
正直言って大差ないです。
すこーし酸化が遅い分、逆に香り自体の強度は抑えめになっている印象でしたが、口に入れるとスクリューキャップ同様のヒリつくような酸がみられました。

このあたりが飲める人の境目になるような気がします。
私は無論飲みますが。

そして最終日7日目。
完全に酸化が香りに表れています。
アセトアルデヒドや酢酸メチルというよりは酢酸というイメージのツンとした香りが出てきた印象です。
味わいは少し塩気を感じるような酸があります。なんとなく酢を使うと減塩できるというのがわかる気がします。
また香りも大方失われ、口に含むとほのかにスミレぐらい淡い花のイメージが出てくるぐらいです。

スクリューキャップに比べて空気抜きをしたほうが、ツンとした香りの印象は少なめで口に含んだ時にもスクリューキャップよりは果実感があります。
ただ味わいには特に差は感じられません。

さすがに1週間経つとどちらも限界が近かったですね。


総評

「スクリューキャップとワインセーバーでは大差ないです。」

ワインセーバーは2日間放置の開栓から音に気をつけていたのですが、実は1日でもプシュッとはなっていませんでした。

つまりそれ相応の空気は入ってしまっていると言えるでしょう。

それでもスクリューキャップに対して健闘しましたし、むしろ互角以上の結果を残したとも言えます。

おそらくスクリューキャップでは瓶内に入っている空気、ワインセーバーであれば瓶内に入ってくる空気によって酸化はされるものの、一度酸化によって消費されたものが外の空気とさらに置換されて、さらに酸化が進むということはあまりなかったのではないかと思います。

そして今回の実験を経て私は思いました。

「コルクのワインにはワインセーバーを使おう。」

おそらくコルクを逆向きに適当に挿しているよりはきっと酸化されにくいはずです。

なにせほとんど空気を通さないと言われるスクリューキャップと同程度には酸化防止に役立つのですから。

そしてスクリューキャップのワインには無理に使う必要はないが、別に使ったってなくなるわけじゃないし使っておこう。

そして最後に、ワインはモノにもよるが開栓後1週間ぐらいは持つということも再確認できました。

ワインはその日のうちに飲まないといけないと思って買いにくいと思っていた方も1週間あれば飲めるんじゃないかなと思うので、ぜひトライして味の変化を楽しんでみてください。


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