医者は体力勝負

ひろぴょんが精神疾患で通院していた病院での話。

精神病棟での入院治療が終わり、これからは通院で大丈夫でしょう、となり週に一回のペースで通院を開始した。

その病院はその地区の基幹病院だったため、患者の症状が軽くなるまでを担当し、その後は各地のクリニックに患者をシフトしていく運用となっていた。

そのため、当然のことながら、重度の患者を集中的に治療するのが基幹病院としての役割となる。

ひろぴょんはその病院に3年ほど通院することになったのだが、その間に主治医が4回変更になっている。

とはいっても、別にひろぴょんが「困った患者」だった訳ではない。
何故なら、当時のひろぴょんは「心が死んでいた」事もあり、至って大人しい患者だったからだ。

そして、前の主治医がいつの間にか退職してしまい、別の医師が新たな主治医として紹介されるのである。

「こんにちは」
…こ、こんにちは…
「今日から主治医が私、○○となります」
…はぁ…

突然の出来事に動揺を隠せない。

…あのぅ…
「どうしましたか?」
…△△先生はどうされたんですか…!?
「△△先生は退職しまして…」
…そうですか…

その時は特に何とも思わなかった。
というか、ひろぴょんには「感情が無い」為、これといった感想がないのだ。

しかし、何度か通っているうちに、前の主治医が退職した理由が小耳に入って来る様になる。

どうやら「メンタルをやられたらしい」のだ。

…確かに、△△先生は患者を1人診る度に2~3分席を外し、また戻って患者を診る、の繰り返しだったな…
…もしかして「過活動膀胱」とかになっていたのかなぁ…!?

ふとそんな意識が過った。

ひろぴょん自身、ストレス性の過活動膀胱は何度もやっており、5分もすればトイレが我慢できなくなる(勝手に漏れてくる)経験は嫌というほどしているので、その辛さは想像に難くなかった。

ただ、これはあくまでも「看護師たちの噂」レベルの話である。
真相は分からず仕舞いだった。

そうこうしているうちに○○先生も、その次の□□先生も、次々と病院を退職していった。

…まさか、全員が全員「メンタルをやられた」とは考えにくいよね…!?
…病院内の政治的な背景があるんじゃないの…!?

そんな気もしないでもなかった。

一方、看護師たちの入れ替わりは殆どなかったから、それとなく話を聞いてみた。

…あのぅ、○○先生も辞めちゃったんですか…!?
「分かります!?」
…何かあったんですか!?
「○○先生もメンタルやられちゃって…」
…病院内で何かあったんですか…!?
「ううん、病院内は至って平和なんだけど…」
…けど…!?
「大変な患者さんばかりでしょ、ここ。」

「数か月もすると先生もメンタルやられちゃうのよ…」

どうやら、ひろぴょんたち「重度の患者」の診療をしていると医師たちも無傷ではいられないらしい。

…毒気に当てられちゃう、ってことですか!?
「私たちがそう言ってはいけないんだけど、やっぱりそういうことってあるのよ…」

返す言葉がなかった。

確かに、病院は「体調の悪い人が集まってくる場所」だから、当然、患者のエネルギーの状態も悪い。
それを毎日の様にひっきりなしに応対していると医師やスタッフ達のエネルギーも消耗していく。

というよりも、多分「患者にエネルギーを吸い取られている」のだろう。

患者は病院でエネルギーを吸い取って回復し、退院していく。
その一方で、医師たちはエネルギーを吸い取られて疲弊していく。

そんな図式が見て取れた。

…要は「エネルギーを切り売りしている」様なものじゃないか!?

なんか、医者が「体力勝負」と言う意味が分かった気がする。

…お医者さん、ありがとう…
…お陰様でひろぴょんは完治することができました…

ひろぴょんは何人もの医師達のエネルギーで回復し、今に至っている。
医者こそが最大の「慈善事業」なのかもしれない。

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