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るるぶには載ってない店がめちゃくちゃ良かったりするのは周知の事実。


「僕は将来、一級建築士になるんだ。」


今私の前には、自分の夢を熱く語る1人の青年がいる。

「熱く語る」と聞くと、テーブルから身を乗り出しながら興奮を隠しきれず語るようなイメージを抱かれると思うが、彼は違った。

時折奥ゆかしいジェスチャーを混ぜながら、

しっかりと腰を下ろし、

私の瞳を捉えながら、

ゆっくりな口調で語るのだ。


例えるならば「たき火」というより「炭火」と言ったところだろうか。

荒々しい勢いは無くとも、私は彼の言葉に「籠るような芯のある火種」を感じたのだ。

なぜ一級建築士になりたいのか。

一級建築士になる事でどう社会に貢献できるのか。

どんな社会が幸せの形だと思うのか。

そもそも幸せってなんなのか。


そんなことを店に来てから永遠と話す彼があまりにも面白くて、

甘いものには目が無い私が、途中運ばれてきたホットケーキを食べることを忘れそのまま話を聞き続けた。

ここまで自分の気持ちを、しっかり「言葉」に変換できる人に私は敬いの感情が溢れ出る。

いや、そんなかしこまったものではないな。

めちゃくちゃカッコイイやん・・・泣

そう思う。


理由としては、

気持ちを伝える術として、私たちは「言葉」を生み出し、それは太古昔から受け継がれ今も尚日々成長している。

・・・・・と、思われているが、

これは個人的な見解に過ぎないが、「気持ち」も「言葉」も成長は右肩下がりだ。

自分の感情に向き合うこともなく適切な言葉を使おうと、いや、そもそも適切に思いを伝えようとする意識が薄れてはいないだろうか。


日記だって、手紙だって、自分探しだって、学生デモだって、時の遺産になりつつある。


ニュアンスで伝わればいい。

たぶんきっとこんな感じ。


若い世代において、これが今の人々の根底にある考え方の様に思われる。

ネットも普及し言語伝達を学ぶツールは成長させたように感じるが、一方「 そこに重きを置く人」が、残念ながら私の身の回りには少ないように感じてしまう。


だからそこ、彼のように自分というものを語れる人に、私は魅力を感じるのだ―――。



ふと視点を下へやると

「バターがない。」

「え?!」

「バターがない!!!!!!!!!!!!!」


突然前触れもなくバターの有無にうろたえる私に彼は驚いた


あちゃ~~~~~~~~~~~~!


バダーがすべて溶けきるほど、私は彼の話に聞き入っていたようだ。コーヒーも弱化冷めている。

これはガックシ。

普段から抜かりがない私は、ホットケーキが運ばれたら直ぐに、中心に十字の切込みを入れ、溶けるバターが満遍なく行き渡るように細工をするのだが、ダレたバターは偏った染み込み方。

やってしまったと思いつつも、この偏りが生んだ一片の染みが、ピンポイントで美味しい所を教えてくれている様で胸を弾ませる自分もいた(笑)

容量が悪い私は食べることに気持ちがシフトしてしまうと相手の話がびっくりするほど入ってこない。前前前世は確実に「聖徳太子」ではないことだけは明確だ。

ジュッ…

染みを狙いナイフを入れると、バターが染み込んだケーキから漏れた微かな音を私は聞き逃さなかった。

はぁぁぁああっっぁっぁあああぁあ//////////////

これは確実美味いヤツだ。。。。。

バターの染み込みは二段重ねの下段にまで行き渡り、指したフォークから今にもほろりとぐずれてしまいそうだ!!!!!!

手で受け皿を作りながら、私は口の中にそっと運び入れる。

パクッ

~~~~~~~~~ッッッッ//////////////!!

脱 力 す る 美 味 さ


にやにやというよりも、にへにへしてしまう。

噛むという概念を忘れ去れるほど、シットリそして溢れるバター…♡

バターのみでも十分シトシトになっていたこともあって、付属のメープルシロップを欠けなかったがこれがまたいい。

ほのかな甘味とバターの贅沢さがこの一切れに凝縮され、こうも失敗が成功に転ぶのか!!!!と自らにスタンディングオーベーションだ。


最ッッッッッ高…………(目頭を押さえる)




素朴なホットケーキの美味しさに忘却する私を見て、全く自分の話を聞いていないことに気づかれたのか、彼はこんな質問を投げかけてきた。


「ところでひかりさんの夢はなんだい?僕に是非聞かせて欲しいな。」


・・・・・。


紙ナプキンで口元を拭い、こう言った。


「私の話もなかなかに長いけどいい?」

少しほころびながら「もちろん…!」


そう答えた。



コーヒーを2回もおかわりしてしまうほど盛り上がった彼とも別れ、山手線に乗りながらこんなことを考えた。

言葉はエネルギーだ。

風力だったり火力だったり、自然はエネルギーを発電できるけれど、人も言葉の力がエネルギーとして発電されている。

言葉のエネルギーは、電子レンジを動かしたりお風呂を沸かすことは出来ないが、日は今日よりも1歩先へ、明後日は今日よりも2歩先へと前を向ける様な、生きるエネルギーになっている。

長い歴史を振り返っても、幾度となく自分を見つめ、思いを言葉にし、話し合いを続けてきたでは無いか。

人類存続の危機に直面している今、私たち個々がなにが出来るのだろうか。

それは、

何をすることが最も大切なのか、何がこの問題の打開策となるのかを今1度考える事だと思う。

老若男女問わず、外出を伴うことなくできる事だろう。

安易で楽観的思考や後ろ向きな思考

こういった思いは行動に出てしまう。

後悔をこのすことなく慎重に生きることが自分のためでもあり、世界のためになると私は思う。

これを機に、

誰かと気持ちを交換し合う重要性や楽しさに気づけたとき、是非ともこの上野の外れにある、ヴィンテージな喫茶店に足を運んで欲しい。

あまりの居心地の良さに、あなたは時間を忘れて話し込んでしまうだろう。


あっ、ホットケーキを頼んだ際はバターが溶けてもいいように、十字の切込みをお忘れなく。


今日行ったお店は「ペガサス」でした!



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