「ふるさと納税とは」〜うまく活用して日常に彩を〜
株式会社myコンサルティング
財務部長 馬場将行
夏の暑さもようやく和らいだと思ったら、もう肌寒さを感じる日も増えてきました。この時期になると、テレビやネットでふるさと納税に関する広告が増えます。
この広告は年が明けると全く見なくなるので、私はこの広告を見ると一年も終盤に差し掛かったのだと感じます。今の日本ではふるさと納税の広告は年末の風物詩です。
さて、皆さまはふるさと納税についてきちんと理解をされていますでしょうか。
「得をすると聞いたことはあるけど、よくわからないからやっていない」という方も多いのではないでしょうか。
今回はふるさと納税の仕組みと皆さまへのメリット、また増税や物価高で生活が苦しいこのご時世こそ、ふるさと納税をすべき理由を説明します。
1. ふるさと納税の趣旨
ふるさと納税は住民税の一部を、自分の「ふるさと」に支払うことができる制度です。2008年5月にスタートしました。本来住民税は自分が住んでいる自治体に(厳密にいえば、その年の1月1日時点で住民票のある自治体)に支払います。
ふるさと納税はその「ふるさと」として自分の好きな市区町村を選択できます。感謝の気持ちを込めて自分が生まれ育った自治体や学生時代に暮らした縁のある自治体を選んでも構いませんし、応援したい自治体を選んでも構いません。ただし、自分の住んでいる自治体(本来の納税地)にはふるさと納税をすることはできません。
なお、「納税」とついていますが、確定申告では「寄付」となります。
制度の趣旨は、大都市と地方自治体との間の税制格差を是正するということにあります。例えば東京23区や横浜市、川崎市、大阪市は全国的に税収の多い自治体です。
日本を代表する大企業からの地方法人税が入るほか、その大企業に勤める比較的収入の多い人たちが住んでいます。収入が多ければ住民税額も増えるので、法人と個人の双方から納税してもらえます。
しかし、地方ではそうもいきません。少子高齢化と過疎化が進み、せっかく育った子どもたちも進学や就職で地元を離れてしまいます。地元に根差して頑張っている企業もたくさんありますが、それでも大都市に本店を構える大企業と比べると、税収の面では劣ってしまいます。
ふるさと納税は大都市圏に暮らしている人々が支払う税金を、地方に支払ってもらい、地方自治体の財源にしてもらおうという狙いです。
2.ふるさと納税はどうしてお得なのか
「納税地を選べるのは分かったけれども、それがどうしてお得に繋がるのだろうか」
このように思われた方もいらっしゃるでしょう。ふるさと納税がお得と言われるのは、次の理由からです。
① ふるさと納税額が来年の税金から控除される
「控除される」とは、「引き算される」と言い換えてもらって結構です。ふるさと納税をすると、来年に支払う税金から2,000円を引いた金額が控除されます。例えば、ふるさと納税を5万円すると、来年に支払う税金が4万8千円安くなります。
・ふるさと納税をした自治体が5つ以内
・ふるさと納税以外で確定申告をする必要がない
この要件を満たせば、「ワンストップ特例」という制度が利用でき、寄付をした自治体から届いた書類に身分証などを貼付して送り返すと、確定申告をすることなく来年度の住民税からふるさと納税分が控除されます。
上記の条件に満たさない方は、寄付をした自治体から送られてくる寄付金証明書(領収書)を用いて確定申告をしましょう。住民税と所得税から控除されます。
控除されるのがワンストップ特例を利用した場合は住民税、確定申告をした場合は住民税と所得税ですが、控除される総額に違いはありません。
ただし、今説明をした税金の控除だけではただ来年の税金を先払いしただけです。しかも、2千円損しています。
ふるさと納税がお得と言われるのは、次の理由からです。
➁ ふるさと納税をした自治体から返礼品をもらえる
ふるさと納税をすると、その自治体の名産品や縁のあるものがもらえます。例えばその地域特産のお肉や野菜、果物、お米、海産物もあれば、愛媛県の今治市では、今治タオルをもらうこともできます。それらの返礼品はふるさと納税の申し込みの段階で選ぶことができるので、納税というよりはまるでネットで買い物をしているようです。
国が定めている返礼品の上限は、寄付金額の3割です。つまり、1万円を寄付すると、3千円相当の返礼品を受け取ることができます。5万円を寄付すると、1万5千円分の返礼品がもらえます。
先ほど、ふるさと納税を5万円した人は来年の税金が4万8千円控除されると言いました。2千円は負担のように感じますが、1万5千円分の返礼品がもらえます。
もらった返礼品の価値:1万5千円
実質的な負担額:2千円
15,000円-2,000円=13,000円
結果として13,000円得をしています。
ふるさと納税の上限額
2,000円の負担で返礼品を受け取ることができるふるさと納税の上限額は、収入や家族構成によって異なります。正確な金額は税理士に計算を依頼する必要がありますが、およその金額はふるさと納税のサービスを提供している事業者のサイトで調べることができます。
「ふるさと納税 限度額」で検索をすると、簡単にシミュレーションをすることができます。
以下が楽天ふるさと納税のサイトで出したおよその限度額です。
・年収300万円 独身 扶養家族なし…約29,000円
・年収500万円 独身 扶養家族なし…約63,000円
・年収300万円 既婚(共働き) 扶養家族あり(20歳)…約19,000円
・年収500万円 既婚(共働き) 扶養家族あり(20歳)…約48,000円
・年収3,000万円 独身 扶養家族なし…約1,060,000円
あえて最後に年収3,000万円の高収入の方の例を出しましたが、この制度では収入が多い人(納税額が大きい人)ほど2,000円の自己負担で返礼品がもらえる限度額が大きくなります。
3. どこで、何をもらえばいいのか
ふるさと納税は自治体のホームページからできますし、さとふる、楽天ふるさと納税、ふるさとチョイスなどの事業者のページでもできます。
事業者のページでは複数の自治体が掲載されていますし、お肉やお米といったカテゴリーから選ぶことができます。
楽天ふるさと納税では楽天ポイントを貯めることができますし、その他のサイトも共通ポイントや独自のポイントを発行しています。ANAふるさと納税ではマイルをためることもできます。
掲載されている自治体に違いはあれど、ご自身がよく利用されるサービスやポイントを考慮して選べばいいのではないでしょうか。
ふるさとチョイス
トラストバンク社が運営をしている「ふるさとチョイス」というサイトがあります。このサイトは他社と異なり、とても面白い取り組みをしています(下図参照)。
他社のサイトの実態はネットショッピングになっているのに対し、ふるさとチョイスでは地方の自治体により多くのお金が入るような取り組みを行っています。返礼品として「チョイスPay」という電子ポイントがもらえるサービスがあり、ポイントをその地域の加盟店で使うことができます。
単なる納税で終わらせずに、その自治体を訪れてもらって消費をしてもらう、魅力を知ってもらう。ふるさとチョイスが行っている案件には他にも地域のイベントに使用されるクラウドファンファンディングのようなものもあります。
せひ「ふるさとチョイス」と検索し、サイトを見てください。見ているだけでとても楽しい気持ちになります。
【今までのふるさと納税】
【ふるさと納税払い チョイスPay】
返礼品は、あなたの好きなものを選んでください。
今の季節だと、カニやみかんが返礼品として人気です。また、お米や野菜など年中申し込めるものもあります。宮崎の市町村だとマンゴーを選べます。どうせ納税するお金と思えば、普段は買わないようなプチぜいたく品をもらうのもいいでしょう。
発送先は自分の自宅以外にも指定ができ、私の両親は私にさくらんぼを送ってくれました。離れて暮らす息子、孫娘を思ってでしょう。とても美味しくいただきました。
なお、我が家はふるさと納税の返礼品として選ぶのはトイレットペーパー、お米、野菜です。普段の生活で必ず使う日用品、食料をふるさと納税でもらい、生活費の節約をしています。
トイレットペーパーは1度に100ロールくらい届きますが、腐るものでもなく、普段から重宝しています。お米も最近は娘もたくさん食べるようになったので、大変助かっています。置き場所(保管場所)がないと妻からお叱りを受けますが、家計が助かっているということで許してもらいましょう。
自炊をしない方でもご安心ください。自治体によっては大手のビール24缶セットなどもあります。他にもティッシュペーパーなどもあるので、何か日常で使用できるものが見つかるでしょう。トレーニングをしている人には、SAVAS(明治)のプロテインなどもあります。
4. おわりに
ふるさと納税を巡っては、特に大都市から不満が噴出しています。自分たちの自治体に納められるはずの税金が他の自治体に行ってしまい、自分たちは減収になるからです。
「〇〇億円の税収減となりました。その金額があれば学校の改修ができます。」
「地方は返礼品競争になっており、納税や寄付の趣旨とはずれている。」
たしかに現状では金持ちほど有利なカタログショッピングのようになっており、海産物や特産牛がある自治体に人気が集中しています。ただし、「税金を大都市から地方へ」という制度の趣旨には合っているのではないでしょうか。
また、返礼品は地元の産業を元気づけることもできます。お米や野菜を選んだ場合、地元の農家の売上に繋がります。
福島第一原発の処理水の海洋放出に中国が反発をし、青森県では輸出できなくなったホタテが余ってしましました。
それがニュースで報道された直後からふるさと納税が急増し、返礼品として出荷されているという心温まるニュースもありました。
ふるさと納税の制度の不備について検討、見直しをするのは政府や地方自治体の仕事です。私たちからすると政府が定めた制度を利用しているにすぎません。
今は社会保険料の負担がどんどん増え、もし賃金が上がったとしても、手取り額はほとんど上がりません。そのような時代でも、少しでも合法的に自分たちの生活を豊かにすることはとても重要なことです。
これを機にぜひふるさと納税について興味を持ってただき、事業者のサイトを訪問したり、実際にふるさと納税をしていただく一助になれば幸いです。
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