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キャシー・ウッド復活!?_ハイボラティリティ時代の投資法

はじめに

2月末に日経平均株価は史上最高値を記録し、日本の株式市場は高値の更新を続けています。この株高の原動力は半導体関連株で、中でも人工知能(AI)が市場活性化の中心にあります。

その象徴として驚異的な成長を遂げているのが米国の画像処理半導体(GPU)の大手、エヌビディアです。この企業の成長に賭け、2014年に多くの株を買い、昨年2023年から今年2月にかけ売り抜けたことで注目を集める「ハイテクの女王」とも呼ばれる投資家がいます。

投資運用会社アーク・インベストメント・マネジメント(アーク・インベスト)の創業者、キャシー・ウッドです。彼女のこれまでの歩みを振り返りながら、その主な投資のターゲットとする「破壊的イノベーション」とは何か。またその大きな変動を伴う市場への投資法などについて、紹介します。

破壊的イノベーションとは

(キャシー・ウッド ウィキペディアより)

キャシー・ウッドがエヌビディアの成長を予測し、大量の株の購入に踏み切ったのは2014年でした。この年、ウッドは「破壊的イノベーション」への投資戦略を前面に打ち出し、アーク・インベストを設立しました。

破壊的イノベーションについて、ウッドは「テクノロジーで可能になる新技術で、ラーニングカーブ(学習曲線)をなぞりながらコストを削減し、より多くの人にこれらの新技術にアクセスできるようにし、マス市場のチャンスを生み出すもの」だと説明しています。

補足しますと既存の概念にとらわれず、新たな発想の元に新しい製品、サービスを生み出していくものです。これは全く新しい価値を市場に作り出し、これまで存在した製品やサービスの価値を低下させます。それは新たな顧客の創造につながります。

そしてこのイノベーションの核となるのがAIであり、ウッドは今、マルチオミクス・シーケンス(※)、ロボット工学、エネルギー貯蔵、ブロックチェーン、AIなどのテクノロジー、に注目しています。これらはいずれも「私たちの生活を完全に変えるものであり、従来の世界秩序を破壊するもの」とウッドは強調します。

※マルチオミクス・シーケンスは、異なるレベルの生物学的情報を統合的に解析する手法です。例えばがん研究は、遺伝子異変、タンパク質異常、代謝物異常などを統合的に解析し、治療や予後予測に活用しています。またゲノムの突然変異で起こる病気の発見などに効果をあげており、突然変異を編集して治すなど、難病治療の最先端医療技術などに使われています。

ウッドの掲げる破壊的イノベーションは、社会を大きく変えると同時に、その市場への参加によって大きな利益ももたらします。ただウッドのこれまでの歩みを振り返ると、破壊的イノベーションは常に市場拡大と利益に結びつくものではなく、失敗も低迷のリスクも伴っています。

キャシー・ウッドとは

キャシー・ウッドは1955年に米国カリフォルニア州に生れました。父親はアイルランドからの移民で、レーダーシステムのエンジニアだったといいます。ウッドは南カリフォルニア大学を卒業し金融と経済学の博士号も獲得しています。

1977年に大手金融サービスのキャピタル・グループのアシスタント・エコノミストとしてスタート、1998年には仲間とヘッジファンドを立ち上げ実績を挙げました。

2001年アライアンス・バーンスタインに最高投資責任者(CIO)として入社します。そこで破壊的イノベーションによるアクティブな投資運用を展開したのですが、リスクが高いとの批判を受け、同社を退社。
アーク・インベストを立ち上げました。

彼女は結婚し、3人の子供がいますが、2018年に離婚しています。育児をしながらの果敢な投資活動を展開し、その実績から「天才女性投資ファンドマネージャー」、そして「ハイテク株の女王」などと呼ばれ、常に注目を集めるようになります。

半導体の市場拡大とエヌビディアの成長を見通したウッドは、2014年にその1株を約5ドルで手に入れたといいます。同社の株価はこの2024年3月初旬で850ドル余り。
ウッドが売り抜けたといわれる同年2月でも平均して700ドル後半であり、エヌビディアだけでも莫大な利益を挙げています。

エヌビディアへの投資が象徴するように、ウッドの創設したアーク・インベストは「3年後、5年後に爆発的な成長」が見込めるかどうかを投資の焦点にしています。生産性の劇的な向上、大きなコスト低下、他のイノベーションを創出するプラットフォームになりえること――これらが同社の求める「破壊的イノベーション」の要素です。

斬新なリサーチシステム

そして投資の企業選定に際しても、従来のアナリストによるセクター別、時価総額、既存の産業をベースにした企業分析などとは大きく異なる「オープンエコリサーチシステム」を採っています。

この手法はトップダウン(全体像)とボトムアップ(企業単位)の双方を組み合わせたアプローチをし、市場と企業の潜在的成長性を同時に把握します。

テーマごとに配置された専門アナリストは、まず「常識を否定する」ことを求められます。SNSなどオープンソースも積極的に調査に活用され、新たな視点で掘り起こされたリサーチ結果は公開もされています。外部の専門家、一般投資家の意見も反映されたこれらの分析結果は透明性があり、信頼性も生み出しています。

これらの調査情報や金融情報はアーク・インベストの公式サイトにメールアドレスを登録するだけで受けとることができます。

この透明性や気軽さ、それにこれから説明するような高い投資実績が爆発的な人気を呼び、同社は急成長しました。

アーク・イノベーションの浮沈

同社は6つのアクティブ運用型ETFとパッシブ型(インデックス)ETFを展開しています。ただし下記の同社旗艦ファンド「アーク・イノベーションETF(ARKK)」の実績グラフが象徴するように、2014年の開業以来、順風満帆できたわけでもありません。

ARKKはEVのテスラや、暗号資産の取引所サービスのコインベースグローバルはじめITやソフト開発、医療、バイオなど多くのイノベーション銘柄を保有し、急成長しました。

特にコロナ禍の2020年は、株価指数のS&P500の年間上昇率が18%だったのに比べ、ARKK は153%という大きな実績を挙げ、トップパーフォーマンスのグローバル株式ファンドと称えられました。

2014年の設立から2021年初旬までの上昇率は実に500%を超え、投入される資金も激増します。ウォーレン・バフェットの率いるバークシャー・ハサウェイの数倍の成果を挙げ、ウッドに「女性版ウォーレン・バフェット」の呼び名も与えられました。
 
ウッド率いるアーク・インベストは、高リスクだが高い成長が期待できるグロース株で大成功しました。しかし2021年2月をピークに急降下を始めます。失速の原因は主たる投資対象でもあったハイテク株の利益確定売りの集中と、米国の長期金利の上昇でした。市場はリスクオフのムードになり、グロース株から割安なバリュー株への移動という大きな流れが、2022年に入っても続きました。

2022年2月末の段階で、ARKKの過去1年のリターン率は25%以上減少し、同社の他のファンドも軒並み2桁台の落ち込みを記録しました。ARKKの最高値からの下落率ドローダウンは2022年、70%超にのぼり(上のグラフ参照)、今度は「富の破壊者」との呼称も与えられました。
 
ARKKは2023年も当初は低迷しました。しかし2024年の米国利下げの期待が高まるにつれ高リスク資産価格が上昇、それにターゲットを合わせたARKKの運用実績が好転しはじめました。2023年の年間の価格上昇率は67.6%で、S&P500 の24.2%を大きく上回っています。

冒頭に書きましたが、この中でアーク・インベストは上昇するエヌビディア株を売り、ポジションを縮小しています。AI インフラを主な投資ターゲットとする同社の戦略から、AIの象徴ともいえる画像処理(GPU)のトップ、エヌビディア株の売却は、一見疑問を覚えます。

しかし同社、ウッドの狙いは、この1年で230%以上上昇したエヌビディア株の利益確定をし、新たな「破壊的イノベーション」を起こす別のAI銘柄への再投資を目指しているようであり(※)、ウッドの采配とその復活に再び大きな注目が集まっています。

(※)アーク・インベストは、エヌビディアを売却した2月に、画像や動画の整理などができるソーシャルネットワーキングサービスの大手、ピンタレストの株を大量購入しました。ピンタレストは2021年初頭に着けた過去最高値から60%ほど株が値下がりしていましたが、積極的な生成AIの活用や、Googleやアマゾンとの提携による広告事業の拡大など積極的な営業拡大を進めており、ウッドはこの成長性に賭けたようです。

夢への投資方法

動画配信サービスのロクや暗号資産取引サービスのコインベース、事業プロセスの自動化サービスのユーアイパスなど、ARKKの投資先には長年多額の赤字を続けた企業が多くあります。これら長期の赤字会社への投資は「投機」だという指摘も多くありました。そしてその赤字会社が売るのは「夢」だとも言われます。

市場では「夢」で注目された銘柄が、高い株価をつけることも日常です。しかしその夢は多くがしぼみ、株価は低迷し消えていきます。
 
ARKKの投資先で、この「夢」から「破壊的イノベーション」に変貌したのが電気自動車のテスラでした。そしてAIの指数関数的な進歩によって、テスラの自律走行のレベルは高まり、「200ドル未満(2024年2月)の株価が2027年には2000ドル」とウッドは強気の予測を立て、アーク・インベストの投資先の最大ポジションを維持しています。

 今見てきたように、破壊的イノベーションになるのか夢に終わるのかの見極めは、とても難しいものです。ではこのようなハイリスクとハイリターンの投資に挑むにはどうすればいいのか。私の経験から一つの対策法としてドルコスト平均法を以下に紹介します。

ドルコスト平均法

実は弊社代表の坂元は、過去にキャシー・ウッド率いるARKKをドルコスト平均法で購入していたことがあります。再度ARKKのグラフを以下に掲載します。

チャートを見て分かる通り、2020年以降、60ドル以上で買って2022年5月までに売れなかった人は皆含み損を抱えている状態になっています。しかし、坂元の場合はドルコスト平均法で長期投資をしていたため、この暴落を乗り越えて最終的に利益を持ち帰ることができました。

ドルコスト平均法とは、特定の投資対象を一定期間ごとに自分で決めた一定の額分購入し続けるという投資手法です。「定量(口数)」ではなく「定額(金額)」を積み立てるのがポイントです。

最近エイベックスの松浦勝人CEOが毎月1BTC購入するのを100か月継続して評価額が9億円を超えたというニュースが話題になっていました。厳密にいうと、ドルコスト平均法ではなく定量購入法と呼ばれるものですが、どちらも時間分散に分類される似たような投資法です。


(松浦さんのXより)

ドルコスト平均法での試算例

ここで例として2021年1月1日以降、ビットコイン(BTC)を毎月1日に10万円ずつ日本円で購入するとします。便宜上5万円刻みで計算しています。

図1 bitFlyer のBTC/JPY 月足チャート
図2 2021年1月から毎月ドルコスト平均法で投資した場合の表
図3 ビットコイン価格と購入数
図4 ドルコスト平均法の損益

ドルコスト平均法で投資をするにあたっては、長期投資を前提としているので、今後もずっと取引が活発に行われていくと予想される商品を対象とします。

ドルコスト平均法のメリット

・投資を始めるタイミングを問わない
一般的には、安い時に買って高い時に売れば一番利益が出せます。そのためできるだけ安いと思われる価格帯で買うことが求められますが、ドルコスト平均法の場合は長期投資で定期的に買っていくことになるので、どのタイミングで入るか悩む必要がありません。
 
・機械的な投資なのでストレスがない
図3を見てもわかりますが、毎回一定額を購入するため、高値の時には購入する量が少なく、安値の時には購入する量が多くなり、長期投資をすればするほど購入単価が平準化されて高値つかみのリスクも低減します。
 
 また、図4を見ると、2022年中旬~2023年上旬にかけてBTCが低迷していたため含み損を抱えていましたが、2024年に入ってからビットコインが最高値を更新したこともあり、ドルコスト平均法で買っていた人は、390万円投資したものが現時点(2024年3月1日)で886万円と非常に含み益が出ている状況になっています。
 
ビットコインに関しては約4年おきに半減期というイベントがあり、過去のデータ的にも最高値を更新していく可能性がかなり高かったので、ドルコスト平均法の投資対象としては非常に適していると言えるでしょう。

ドルコスト平均法のデメリット

・長期投資が前提なので、長期間資金が拘束される
ドルコスト平均法の真の威力を発揮するのは長期投資をした場合なので、基本的には年単位で投資をすることになります。
 
もちろん必要となればその時に利確なり損切りなりをすることで引き出すことは可能ですが、ドルコスト平均法では長期間資金が拘束されることを念頭に置いて続けることが必要となります。
 
・リスクが抑えられている分、リターンも控えめ
利益を最大化するためには、もちろん安値で大量に買って高値で全部売るというのが一番ですので、それに比べると利益は控えめなものになります。
 
ですので、ドルコスト平均法である程度大きな利益を狙いたい方はビットコインのようなボラティリティ(価格変動)が大きい投資対象を選ぶ方が面白いかもしれません。
 
・取引対象によっては手数料もかさむ
定期的に購入を繰り返すので、一度に大量に買う場合と比べてその分購入手数料がかかる場合があります。
 
以上の特徴を踏まえて、ドルコスト平均法を一度お試しください。  

株式会社myコンサルティング

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