ビジネス書や自己啓発本、恋愛マニュアルを読んでも意味がない理由

書店に行けば、
成功者の体験談や「勝ち組」になるための法則が紹介された本がずらりと並んでおり、
それらの本が定期的にベストセラーにランクインするのを目にします。
しかし、いくらこれらの本を読んでも、
実際に人生が大きく変わる人は少ないという現実があります。
にもかかわらず、多くの人々は読み続け、
新しい本を次々に購入するというサイクルから
抜け出せずにいます。

なぜでしょうか？
その背景には、日本社会における競争と成功の構造が深く関わっているのです。

競争社会における「欠損」の影響

日本社会では、
大学受験、就職活動、転職、起業、恋愛といった
さまざまな競争があります。
これらの競争で勝ち抜くためには、
特定のスキルや資質、運が必要とされます。
しかし、実際のところ、多くの場合は
競争に勝つか負けるかは、
「欠損」があるかないかで決まることがほとんどです。
ここで言う「欠損」とは、
必要な能力や特質が欠けている状態を指します。

大学受験では、
テストの点数に欠損を生まなければ合格します。
苦手科目や当日失敗した科目の有無が
進学できる大学のレベルや
受験の合否を左右します。

就職活動でも、
学歴や容姿やコミュニケーションに
欠損を生まなければ内定がもらえます。
コミュニケーション能力や容姿が劣っていると、
内定を得るのが難しくなります。

起業においても、
その時、その業界の必要十分な
価格や品質、マーケティングの
競争力を維持できれば成功します。
ビジネスの競争力を欠いた状態で市場に参入すれば、成功するのは極めて困難です。

欠損を持っていることが競争に敗北した原因で
欠損を改善することが競争に勝つ方法なのです。
勝った人の共通点を探すことよりも
負ける理由を潰すことが勝つための近道なのです。

ビジネス書は
競争において勝つための「コツ」や
成功者の共通点や法則を教えてくれるものの、
個々の人間が持つ「欠損」については触れません。その結果、読者は自己の欠点に気づかず、
ビジネス書が提供する表面的な知識に頼ってしまうのです。

日本社会が生み出す「欠損」とその隠蔽

さらに日本社会は、欠損があっても
それに気づかない仕組みを内包しています。

例えば、多くの日本人は
中学校レベルの英語や数学で学習でつまずきます。
50点60点しか取れません。
教科書を理解できません。
それでも2科目受験3科目受験や
指定校推薦などで
そこそこの大学に進学できるシステムが存在します。
そして、そのまま社会に出れば、
ルーティンワークやマニュアルに従った仕事が中心であるため、
知的な挑戦がほとんどない環境
英語や数学の欠損がバレない環境に置かれます。

実は多くの日本人が、
小学校レベルまでの内容しか完全には理解していないにもかかわらず、
自分を大卒として一人前のビジネスマンだと錯覚してしまうのです。

例えば、恋愛においても、
身長や年収、学歴、容姿などの要素が
すべて平均以上である人は少数派です。
真ん中より上の要素を4つもつだけで
16人に1人の逸材です。
クラスの男に一人か二人だけの高スペックです。
しかし、社会の風潮としては、
これらの要素が揃っていないと
「欠陥品」とみなされがちです。

実際には、ほとんどの人が
いずれかの要素において欠損を抱えており、
その欠損による敗北が原因で
学歴や年収、恋愛の結果が大きく変わるのです。

大学受験の英語、国語、数学
就職活動の会話力や予定のマネジメント力
恋愛での容姿、服装、話術や遊びの知識など
欠損によって露骨に競争に勝てなかった経験があり
その結果が今の年収や学歴や交際人数などの
ステータスに反映されているのに
ほとんどの人は自身の欠損に気づかないのです。
自分は一通りのことを
普通にできる人間だと思っているのです。

自分が上手くいったパターンと
その共通点ばかり覚えて、
勝てた理由を探し
勝者の味を楽しみます。
負けた時に
自身を見つめ直し
欠損を改善しようとしないのです。

自己認識の欠如とビジネス書の限界

多くの人々は、
自分が「一人前」であると思い込み、
自己の欠損に気づかないまま生活しています。
しかし、ほとんどの人は実は一人前ではないので
欠損によって競争に敗れたり
人生が頭打ちになります。
そのような人々にとって、
ビジネス書は一種の救いの手のように
見えるかもしれません。

あなたが評価されない世の中はおかしいのだ

これさえやれば勝ち組になれるのだ

ほとんどの人が知らないエリートの習慣

このような豆知識をビジネス書は教えてくれます。

しかし、ビジネス書は
不特定多数の読者を対象にしたものであり、
個々の欠損に対する具体的な解決策を
提供するものではありません。

例えば、ある人がビジネス書で
「成功者は皆、朝型の生活を送っている」
との記述を読んだとします。
その人は、朝型の生活を始めれば
成功できると考え、
実行に移すかもしれません。
しかし、その人が持つ本当の欠損、
例えばコミュニケーション能力の不足や、
ビジネスセンスの欠如、
給与が上がらない中小企業で勤務していること、
出世できないノンキャリで採用されていること、
などが解決されない限り、
どれだけ朝型の生活を実践しても、
成功には結びつかないでしょう。

ビジネス書は間違ったことを言っているわけではありません。
しかし、個々の読者が直面している問題を解決するための手段としては不十分です。
その結果、読者は
「次の本こそが答えを教えてくれるに違いない」
と考え、ビジネス書を買い続けるというループに陥ってしまうのです。

解決策としての自己認識の向上

このような「ビジネス書ジャンキー」のループから抜け出すためには、
まず自己認識を深めることが不可欠です。
自分がどのような欠損を抱えているのかを
正確に理解し、その欠損に対して
具体的な対策を講じることが求められます。

例えば、
自分のコミュニケーション能力に
欠損があると気づいたならば、
そのスキルを磨くための
具体的な行動を取るべきです。
また、英語や数学など、
ビジネスで必要な基礎的な能力に
欠損がある場合には、
それを補うための学習を行う必要があります。

社内で、顔見知りの人たちと、
知り尽くしたルーティンワークを
ローカルルールに従って
効率よく丁寧に高いモチベーションでこなしても
あなたの欠損は解決しません。

このプロセスは簡単ではありません。
多くの場合、自己認識を深めるためには、
他人からのフィードバックや
異なる環境での経験が必要です。
また、自分の限界を認識することは、
時に痛みを伴うかもしれません。
しかし、これを乗り越えることで初めて、
本当に意味のある成長が可能になります。

真の成長のために

結論として、ビジネス書は
自己成長のためのツールとして役立つ一方で、
個々の欠損を補うためには
不十分であると言えます。
日本社会が提供する「そこそこの生活」の中で、
自己の欠損に気づかずに生きている人々にとって、
ビジネス書は一種の慰めであり、
次の成功への希望を提供するものです。
しかし、その希望が現実のものとなるためには、
自己認識を深め、具体的な行動を起こすことが必要です。

これからの時代、
自己啓発やビジネス成功のためには、
表面的な知識の追加だけでなく、
根本的な問題に向き合う姿勢が求められます。
ビジネス書を読むだけではなく、
自分自身の欠損を理解し、
それに対して適切な対策を講じることこそが、
真の成功への道を開くのです。

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