見出し画像

プレイドIPOの軌跡、連載の裏側と振り返り

これまで「プレイドIPOの軌跡」をお読みいただきありがとうございました。想定を超える反響をいただきながら、全10回を締め括ることができました。みなさまにお読みいただけていることが、良い形のプレッシャーとなり、まさにこの連載を進めるうえでの原動力となりました。

GW前に社内でアンケートをとって、チームでこのnote発信の振り返りを行い、GW中に自分自身でもnoteを読み返していました。編集後記・エピローグ的に、この連載自体について振り返りたいと思います。振り返りから、そもそもの連載の背景、そして連載後の出来事など。そして、最後に各回について私自身の感想をまとめてみました。今後、スタートアップでこのような発信をされる方々のご参考になれば幸いです。

note発信の価値

GW前のチームでの振り返りでは以下のような意見が出てきました。

チームで発信することが”みんなで赤信号をわたる”という意識で攻め切れたのもよかった
プロセスは知っていたものの、それぞれのメンバーの背景にあった考えや想いを相互に知れたのでよかった
”書き残す”ことにより、整理されておらず断片的だった知識や学びを整理する、自分自身にとっても良い機会だった

などの感想が振り返りで上がってきていました。

あとは広報の観点で

会社のカルチャーや想いをそのまま発信するよりも、IPOという一つのストーリーに乗せて、カルチャーや想いを発信することで幅広い共感をえられた

というような感想もありました。

このnote発信自体が、私含めてIPOチームにもたらした変化は少なくないと思っています。これまでもアクセラレーターとして発信することはゼロではなかったものの、今回の発信を機に、今後もIRやKPIの上場後の話など色々と発信していこうという機運が高まっています。社内外に対して発信することの心理的安全性が高まったと言えるかもしれません。

今回のnote発信について、スタートアップやVCの方々から感謝されることが多いのですが、こういう発信をすることで、発信側である我々がさまざまな学びや得るものがあり、大きな価値があったと感じています。

note発信の背景

そもそもなぜこの発信を始めたのかについて。

昨年12月、上場のプロジェクトが一段落した後、この2年以上に及んだIPOプロセスを振り返るオフサイトミーティングをやりました。そこで、IPOがスタートしてからの紆余曲折が思い出され、考えれば考えるほど、いろんなことがあったなと。同時に、いろんな「ああすればよかった」ということがでてきました。

そして、倉橋の「せっかくだから連載で発信してみては」という一言をきっかけに、この連載が始まりました。なぜ倉橋がそのような提案をしたのかについては、第4回インタビューで語られていた通り、管理部門であるアクセラレーターが”御用聞き”や”管理する部門”のような存在にならないためにも、このような機会に発信をして欲しいという思いでした。

IPOというのは最高のイベントだと思ったんです。アクセラレーターチームがアクセラレーターとして情報発信する、これ以上ない貴重な機会だなって。
第4回 IPOにおけるCEOの役割とは? から抜粋

連載を始める前に意識していたこと

IPOチームだけだとこれらの発信の経験が限られているので、広報やブランディングのメンバーに入ってもらい、どのように発信していくか事前にいろいろと考えていました。

1. 長さやスタイル

「僕が全体の構成かんがえますね」ということでプロローグのドラフトを僕が最初に作成した時は、なんと全18回の構成でした。当然ですが、「長いね」ということになり、今回の10回の構成になっています。

文章を書くのも大変かと思い、今回のような記載形式ではなく、対話形式を中心にしようとしたのですが、広報のyukkiこと櫻井の「適切に伝えていくためには、第三者によるインタビューよりも本人の文章」というオススメで、倉橋以外はそれぞれが文章を書く形式になりました。

2. プレイドらしさの(幻の)軸

ブランディングのNJこと長島の以下の提案によって、プレイドらしさが現れる何かを軸と定め、それをタイトルに織り込もうということになりました。

テーマ、シナリオの軸としては...問題の解決方法、乗り越え方が、よりPLAIDらしく、よりPLAIDのユニークさを印象づけられるような軸を探したいですね。

そこから議論をして、最終的に決まったタイトルがこちらです。

常識を超えていく 〜プレイド IPOの軌跡〜

IPOを進めるさまざまな局面で、慣習に従わずに、常識を疑いながらIPOに取り組んできました。確かに、管理体制や審査のところもそうですし、無理に期超え上場でグローバル・オファリングをするなど、オファリングの局面でも、この「常識や慣習を疑う」というスタンスでした。

そしてプロローグ文中にも、以下のように明確にタイトルを記載してスタートします。

画像1

しかし、ここで、問題が起きます。

せっかくNJが考え出して、みんなで選んだ「常識を超えていく」という軸を表すタイトルが、気づいた時には使われなくなっていたのです。どこから使われなくなったのか確認してみると、なんと第1回の小島からです。小島は、いきなりこの「常識を超えていく」という軸を表す、思いをこめたタイトルを使わずに書いていました。

画像2

残念ながらタイトルは消えてしまったものの、それぞれのnoteを見ると、この軸は残っていると感じています。それぞれの局面において、プレイドの文化や価値観に立ち返って判断をしてきていることが、それぞれのnoteから感じられます。

3. どこまで”リアル”に書くか

この点はかなり悩みました。これだけ赤裸々に書いて…と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際に書く前には相当悩みましたし、当然ながら、書かれていないことも多数あります。今回のnoteはIPOの所謂”ハードシングス”から我々が学んだことを書きたいというのが思いであり、”ハードシングス”について書かないことには、そこからの学びも伝えにくいのです。

そこで、可能な範囲でリアルに、赤裸々に書きつつ、一定の判断軸を持とうとなりました。それは「誰かに嫌な思いをさせない」「批判するような内容にしない」というものでした。それぞれが書くときに、この前提で書き、相互にその観点からチェックして細心の注意を払っておりました。ただ批判や嫌な思いをさせることが目的ではないにしても、いろいろな見方があったのも事実でして、複雑な思いをされた方々にはこちらで、改めてお詫び申し上げます。

実際に発信して何が起こったか

1. プロローグに対する想定外の反響

プロローグとはこちらです。

流石に全10回、全然みてもらえないと書く張り合いがないなと思い、プロローグを出す時にはSNSでの拡散を頑張りました。知り合いのTwitterインフルエンサーの方にも「シェアお願いします!」的なお願いもしてみたり。おかげさまで、本当に多くのみなさまからコメントやシェアなどの反響をいただきました。

その反響はかなり想定外だったので、特に第1回を書く小島がかなりプレッシャーを感じることになりました。すでにプロローグをだした時には、第1回の小島はほぼ書き上げていたのですが、その反響の大きさをみて、小島の顔色が変わり、ほぼ全てを書き直していたのが思い出されます。

2. さまざまな出会いとIPO市場の変化の兆し

多くの皆様にお読みいただいた結果、スタートアップのCFOの方や上場準備に従事されている方、VCの方、あるいは外部からIPOを支援されている方などさまざまな方々とIPOの実務や日本のIPOの課題などについて、意見交換をさせていただく機会に恵まれました。

それらの意見交換から見えてきたのは、本当に多くの方々が日本のIPOや資本市場のあり方について問題意識をもたれているということです。VCの方々は一様にそうですし、既に上場されたスタートアップの方々も、いままさに上場に向けて動いている方々もそうです。それはスタートアップ界隈にとどまらず、IPOの公開価格の決定方法の見直しが、政府が主導する成長戦略会議で取り上げられるなど、いろいろな変化の兆しも見えつつあるようです。

政府はこのほどIPO市場の活性化などの議論を本格化している。3月の成長戦略会議では未上場株投資を促進する制度整備などが提言されたほか、加藤勝信官房長官は「公開価格の決定方法の見直しといった対応を検討する」と述べた。(出所:日本経済新聞、以下リンク)

皆様とお話しできるのは僕らにとっても価値ある機会ですし、それがスタートアップにとってのIPOや資本市場の変化に繋がっていくのであればなおさらです。まだお話しできていない方々ともどこかで意見交換させていただきたいですし、スタートアップの観点からよりよい日本のIPOや資本市場の方向性を一緒に考えていければと思います。

3. 社内メンバーからのフィードバック

チームでの振り返りに際して、社内メンバーにアンケートを答えてもらったので、一部のコメントをご紹介させていただきます。

IPOの話は、社内のことではあるが、あまり聞けていなかった話なので、その詳細が知れるのは面白い。
社員としてもすごく勉強になりますし、こういう内容を社外に公開していくこと自体がすごく画期的だなと思いました。
noteの内容も書いている人の個性が出るもので、読んでいてすごく読みやすく楽しかったです。世の中で発信されているIR関連の情報をもっとキャッチアップしなきゃなぁと思いました。
「アクセラレーター」って名前が大好きなんですが、まさにPLAIDのアクセラレーターなんだってことを内外に知ってもらえたのが良かったです。
ここまでオープンに開示するのは会社のカルチャーを明示する観点でもとても素晴らしい取り組みだと思います。

概ね、みんな好意的に感じてくれていました。そして、思ったよりも社内のメンバーはIPOだとかファイナンスのプロセスに興味を持ってくれていました。また、そのような興味にあえて社内向け(だけ)ではなく、こう言った形で外部発信することが社内にも届くというのは発見でした。

ちなみに、社内メンバーからのアンケートで個人的に一番嬉しかったコメントはこちらです笑

勢いつけるために、いいね&シェアをもっとアピールしても良かった。(私はいつも複数ブラウザでいいねしてました笑)

10回の振り返り

締めくくりとして、この連載の全10回を振り返りたいと思います。「常識を超えていく」は幻のタイトルとなってしまったものの、この価値観かつ判断基準は、確かに僕らのIPOの軸でしたし、それがそれぞれの回からも感じられるものとなっています。

第1回 プレイドの上場準備・審査プロセスについて

内部管理体制の整備について「テンプレート通りに整備するだけでなく、会社の組織文化や価値観を体現したものであることが重要」であるとか、形式的になりがちな審査プロセスから「自分が個別の計画修正の内容、差分の説明に終始しており、その前提となる一貫した経営判断への理解が抜け落ちていたことに、ここで気が付きました」というような気づきとか、小島独自の上場準備・審査プロセスについての見方が書かれています。

内部体制整備や審査を必ずしも義務的なもの・形式的なものとして捉えず、そこから学べたんだというメッセージは幅広い共感を産むものであり、個人的にも良い捉え方をするなと学ぶべきものがありました。

第2回 「共創」を目指した証券会社との付き合い方

共同推薦体制」や「透明性の確保」などによって証券会社との適切なパワーバランスを保つことや、「機関投資家主体の価格決定プロセス」とすること、そして新しいことに一緒にチャレンジする気持ちを証券会社と共有することなどについて書いています。

この記事以降、前述したように、多くの方々とIPOに向けての主幹事選定や、証券会社との付き合い方について意見交換をしました。それらの議論を通じて、主幹事はどこの証券会社が良いか、という単純な図式ではなく、担当者の方やチームのコミットメントをどのように引き出し、共創するような関係を築けるかという観点が大切だと改めて感じています。

第3回 IPOプロセスにおける計画策定と予実について

プレイドの中で「存在意義が整理できていなかった」事業計画の策定・運用での苦労や、「”ゲームルール”思考」など独自の考え方で、なるべく管理や”やらされ感”を感じさせないように予実を合わせて行ったことや、審査プロセスにおいてKPIを説明する上で「”主導権をもって”説明していく姿勢」などについて向江が書いています。

ビジョナリーな経営者と事業計画」という多くのスタートアップも直面するであろう課題について、実際のストーリーに併せて、その時向江がどう感じていたかについて詳細に書かれていて、チームメンバーである向江の新たな一面を発見できました。

第4回 IPOにおけるCEOの役割とは?

IPOのプロセスを”審査”ではなく、学習期間と捉える」ことや、「長期思考の株主を見つけるために”作りたい世界”と現在地のギャップを伝える」ことの大切さ、そしてIPOにおけるCEOの役割はIPO(の準備チーム)を会社の「ビジネスに”溶かしていく”」ことだと倉橋が語っています。

IPO準備のプロセスを通じて、倉橋の考えは十分把握しているつもりでしたが、改めてこのような形で話してみると、まだ聞けていなかった倉橋独自の見方や考えが聞けて個人的に価値のある対談でした。

第5回 なぜグローバル・オファリングか?そこから何を学んだか?

小さいからこそグローバル・オファリングをやる非常識」として、興味から始まった小さなグローバル・オファリングの価値や、そこに向けて準備を進める中での学びについて書いています。

この第5回を書きながら、グローバル・オファリングをやるという意思決定は、客観的な評価やロジックによるものではなく、興味や情熱だったと改めて気付かされました。それと同時に、客観的でロジカルな選択肢が必ずしもベストとは限らず、みんなで情熱を持って目指せる非常識なゴールの大切さを学びました。

第6回 IPOにおけるマーケティングプロセスの実務

投資家向けマーケティングプロセスの中で重要となるロードショーマテリアル(インフォメーション・ミーティング及びIPOロードショーで活用)、成長可能性資料の作成過程や違いに加えて、成長可能性資料の作成に自身が逆に「プレイド”初心者”」であることを活かされた話など実務担当者の視点から書いています。

社歴だけでなくキャリアもチームで一番短く、初めてづくしの業務で色々と大変だったことや学びも多かったはずで、そういった”苦労”も感じられるのがこの回の良さだと思っています。

第7回 資本政策と株主の関係

どうしてもルールでガチガチになるガバナンスについて「ルールのような形は極力少なく、柔軟に」というプレイドなりの考え方や、IPOに向けて戦略的にGoogleやT.Roweを株主として受け入れる資本政策、そして「国内外のたくさんの投資家の中から、高い確度で、プレイドの事業成長を支援してくれる投資家に株主になってもらう機会を確保するための流動性」をつくるために、VCといかに向き合うかについて澤井が書いています。

法務の立場で「ルールのような形を極力減らす」スタンスという意識を持ち、ガバナンスから株主対応までマルチに対応している澤井の対応力にはいつも驚かされています。

第8回 オファリングの設計と実務

グローバル・オファリングの実務・ドキュメンテーションについて、特にその中でもコアとなる英文目論見書の概要について詳しく書きつつ、英文目論見書の作成を単なる事務作業として捉えるのではなく「会社が今後大きく成長していくための基礎を固め、その後間もなく訪れる数多くの国内外の投資家とのコミュニケーションに必要な武器やスキルを磨いていくことができた」と村井は書いています。

私の知る限り、ここまで詳しくグローバル・オファリングの実務について記載されたものはほとんど存在せず、IPOに限らず、セカンダリーでのオファリングも含めてグローバルオファリングを準備する担当者にとっても価値のあるnoteだと思っています。

第9回 上場直後に何が起こる? IRについて

IRのDay0として上場直後に起こった出来事や対応について書きつつ、向江が日々模索中のプレイドのIRをどう設計するかについて書いています。現時点では、「”現在地”を伝えることも非常に重要」としつつ「"今ではないところ"への共感をアップデートし続ける」というのが現時点での向江なりのIRの定義のようです。

初の決算発表等の初めてづくしの上場企業としてのIRを、この5ヶ月間で創ってくれつつあります。早くも、プレイドのIRはどうあるべきか考えてくれて、頼もしい限りです。

第10回 SaaS KPIと開示について

当社のKPIマネジメントを紹介しつつ、スタートアップでのFP&Aの役割は「複雑高度なKPI Metricsをガチガチに自社の財務モデルに落とし込む」ことではなく「チーム個々人のパフォーマンスを最大化させ、出せる最大速度で会社を進みたい方向へガイドすること」と新井は書いています。また開示についても「プレイド自体の将来性・中長期の成長ポテンシャルに向き合って欲しい」として、求められる数字(例:Churn Rate)をそのまま開示するのではなく、当社がみて欲しい数字を開示するという新井の意志があらわれています。

紆余曲折を経てたどり着いた、今の当社のKPIマネジメントの形がわかりやすく記載されています。上場直前にジョインしたばかりとは思えないぐらいプレイドのKPIマネジメントでリーダーシップを発揮している新井が、まだまだ未完成のKPIマネジメントや開示をどう進化させていくのか、今後の進展に期待してしています。

Special Thanks❤️

このnoteの連載にあたって、企画から各回のコメント・写真の撮影やデザインまでやってくれたプレイドのyukkiNJつむTゆっけアルファ
第4回のインタビューを書き下ろしてくれたライターの鈴木陸夫さん
SNSなどで拡散してくれたプレイドのメンバー(特に複数ブラウザーを駆使し、”いいね”カウントを増やしてくれたMさん!)
そしてお読みいただきSNSなどでどんどんシェアしてくださったみなさま

本当にありがとうございました。

今後もいろいろと発信していこうとチームでも話しているので、引き続きよろしくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?