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感想 死にぞこないの青 乙一 サイコパス教師に虐められていた生徒の前に、彼にだけ見える青という怪物が・・・。

乙一さんは、優秀なホラーの書き手で
僕の夏の定番です。

200ページほどの中編ですが、サクサク読めます。
読書時間は3時間強というところでしょうか。

舞台は小学校。
アニメオタクっぽい普通の小学生が、サイコパスな教師に目をつけられて
集中攻撃を受けます。
そのうち、クラス全体から白眼視され浮いてしまう。

本書では、バランス係と言っています。
クラスのバランスを取るために存在する生贄だそうです。

江戸時代、農民は税金が重く大変でした。
その不満を解消するため、その下の身分である穢多非人という下の階級を作りました。

これをクラスの中で、この担任は作ったみたいです。
例えがおかしいですが、そういうイメージです。
無理に作られた差別対象。

そのことに不満を漏らすと、彼を理科室に連れていき
その子がどれだけ無能でカスでゴミなのかを教えというか脅し洗脳し
彼は本当に自分がゴミクズだと思ってしまい。
差別され、無視され、ひどい目に合わされるのは当然と思ってしまう。

夏の水泳で、彼は目立ちます。
水泳教室に通っていたことがあり上手なのです。
すると、教師は下手な奴らを笑うという君の態度は傲慢だと非難するのです。

もう、ここまでくると
この教師。
異常です。

僕が子供の頃もいましたよ。
近い感じの先生。
隣のクラスの女教師でしたが、友達がずっと一年間スルーされてました。
彼も親とのハワイ旅行とかで運動会サボったり平気でしてた人なので
まぁ、色々とあったのですが。・・・。
教室は閉鎖空間だから、担任がこういう感じだとサイアクなことになります。

この小説の主人公は、いつしか青という化け物
彼にしか見えない存在を見えるようになります。
それは過去の自分
彼は、交通事故で一度死にかけていて
たぶん、その姿なのだと思うのです。

その青が、残酷なアドバイスをしてくる。
放課後にクラスメートに虐められていた時は、彼の中に青が入り込み
いじめっ子たちに噛み付いて撃退したり

彼にとっては味方なのです。

先生に復讐ということになり
アパートを見つけ出し、部屋に忍び込むが見つかってしまい
ボコボコに殴られる
さらに拉致監禁。

教師が、ここまでやるのだから、完全にサイコパス。
睡眠薬を飲まされて、森に連れて行かれて殺されそうになる。

生徒を殺すという発想が信じられない。

そこで反撃し撃退というラスト。

少しも怖くなかった。
青の容姿描写はたしかにオドロオドロシイが
急に、イジメだす生徒たちのほうがホラー
そして、異常なサイコパス先生

怪物より、このクラスの奴らのほうがよほど怪物に見えました。

《Truth is stranger than fiction.》
世の中の実際の出来事は、虚構である小説よりもかえって不思議である。 英国の詩人バイロンの言葉。
というのがありますが、この小説の中の先生や生徒たちは
怪物の青よりも、確実にモンスターでした。

2022 7 24
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