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書評 壺の中にはなにもない 戌井 昭人  このふざけた感じが、慣れてくると心地よくなる。

モチーフは「多様性」なのだろうか?
主人公の男は、まぬけである。やる気がなくて、無気力で野心も何もない。
有名陶芸家の祖父から、何故か溺愛されている
好きになった女性からも好きになって貰えている

彼が他の人と違うところは
何物にも執着しないことだ。
それは、お金持ちに産まれたから、そういう性格になったのかもしれない。

仕事で祖父の陶器をお客さんに届ける
新幹線に忘れた上、落として割ってしまう。
それで数千万の賠償ということになるが・・・
まったく気にしていない
仕事を解雇されても無関心である。
気にしているのは、鬱陶しい姉の存在だけ

別荘の専属料理人のお婆さんにしても
彼が好きになるミナミさんにしても
性格が爽やかだ。
転職先のダルさんにしてもそうだ。
まるで、別世界にいるような気分になる。

ダルさんの発明品をセールスに出る旅で出会った人たちにしても
なかなか魅力的だ。

壺の中にはなにもない  というタイトルが気になる。
祖父の作る壷はとても高価だ。
しかし、それは変だと彼は感じている。
物は誰かによって評価され値段が決定される
でも、違う見方があったっていいはずなんだ。
この物語の主人公のような生き方もありなんだ。
成功とは言えない生き方かもしれない。
でも、この人の人生は、とても楽しいのではないかと思えるのだ。


2020 12/19



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