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感想 魍魎回廊 京極夏彦他 ホラーアンソロジーです。恐怖の競作とでも言うのかな。なかなかです。

ホラーアンソロジー、短編の競作でした。
収録作品は「水族」宇佐美まこと、「雨の鈴」小野不由美、「鬼一口」京極夏彦、「眠らない少女」高橋克彦、「三つ目達磨」都筑道夫、「カルキノス」津原泰水、「冬の鬼」道尾秀介の七篇。

道尾、宇佐見、津原作品はミステリー要素の強いホラーです。
宇佐見さんの「水族」はラストのどんでん返しが綺麗に決まってます。
京極堂さんの作品は、「鬼」についての考察っぽいかな。

一番楽しめたのは「雨の鈴」小野不由美。
主人公が見える体質の人。
喪服の女にお悔やみを言われると家族の人が死ぬという話しが、その街にはあり、その主人公の体質と融合しなかなかに良い感じに湿っぽく仕上がってました。
喪服の女は見えざるもの。その女はゆっくり古い町並みを動いている。
少しずつ明かされていく真実、真綿で首を締め付けられるような恐怖でした。

「三つ目達磨」都筑道夫は、民俗学の伝承というのか宗教儀式みたいなものが現在進行中という
その謎めいた展開がちょっといい。

「眠らない少女」高橋克彦は、自分の娘が不眠症。奥さんが絵本を読んで聞かせる。
瓜子姫のオーソドックスな話しから、だんだん、残酷な昔話に変化していき、その同じ話しのルーツであろう残酷な物語へと変化していき・・・。そこに自分や妻や娘の前世が絡んでくるというもの。
グリム童話とかの本来の原型は残酷だったという話しを読んだことがあるのですが
日本の昔話も継承されるたびに角がとれていき腑抜けた感じになっていると聞きます。
残酷で不道徳なシーンは、時代という検閲がかかってカットされたわけです。
その原型昔話に迫り、さらに、悲惨なオリジナル?にという展開はかなり怖いものがあります。
この話しは構成がいいと思いました。

読んでいて印象に残ったのは「人肉を食べる」というシーンでした。
それはタブーであるだけに、その行為はゾッとする。
やってはいけない時に、それをやってしまう。
そこに「魔」が宿るということなのでしょうか?。


2022 4 4



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