感想 三十の反撃 ソン・ウォンピョン言葉が強く刺さります。感情が揺り動かされまくりでした。日本以上に若者が生きづらい韓国社会がよく伝わってきました。名作です。
この著者のアーモンドという作品を前に読みましたが、それも良かったが、本書は、それ以上の出来でした。
韓国社会はよく、日本よりももっと若者が生きづらい社会だと言われている
ジヘは、驚くほど自己評価が低い女性です。
半地下に住み、仕事はインターン、恋人もなく、貧乏です。
人間関係が苦手で上司と食事をしたくない時は、架空の友達からの呼び出しがあったと言って逃げます
彼女は建物の隅の薄汚れたベンチに座り時間を過ごします。
彼女はインターンです。。
韓国の映画やドラマ、小説などでよく話題になる地位であり
たいてい、この地位にある人は厳しい生活をしています
会社に入ると、たいてい研修期間があります。
日本では、この期間がインターン研修期間であり、インターンは会社が合わなければ辞めます。会社側もダメ社員は解雇します。そういう期間ですが、日本では、それは形だけであり正社員と変わりないし、インターンが終われば正社員になれます。
しかし、韓国のインターンは違う。
ジヘは、途中で正社員になれるからいいのですが、他の作品などでは正社員にはなれない場合が多く
インターン歴数年という人もざらにいます
日本で言う派遣社員みたいな制度のようです
当然、まともな仕事はさせてもらえない待遇も悪いのです
つまり使い捨てです。
だから、ジヘは自己紹介の時、アルバイトですと言いました。
そんな彼女が、同僚のインターンの男の人や、ウクレレ教室で出会った人たちと仲間になり
この理不尽な社会にちょっとした反撃を食らわそうとしたのでした。
それが三十の反撃というタイトルに繋がります。
弱者はいつも不満を口にし、問題を起こした人間を見つけては批判し
日常のうっぷんを晴らすかのようにがなりたてる
ネット民の炎上もその一つです
彼らは自分の内在的な不満のはけ口を外に求め
罵倒してもいい相手を探し、その人に対して罵詈雑言を吐き出します
ホリエモンは、こういう あほ は相手にするな、時間の無駄だと言います
不倫した俳優を責めたり
無能な総理をバカにしたりするのも、そういう事のような気もします。
それは生産的な時間の使い方だとは思えません
ホリエモンの言う通り、ただの あほ です。
そんな彼らに対し、ジヘは、その態度は間違っていると言います
同じようになって悪口を言ったりなんかしません
ジヘの心は健康です。だから好感が持てる。
大人とは何だ。
これが本書のモチーフなのでしょうか。
これは、ジヘの恋の相手ジオクの言葉です
それを行動にして表現したのが、稚拙な反撃の数々なのでした。
かなり稚拙でバカみたいです。
例えば・・・
営利主義の牧師のところに行って、木魚を叩きながら南無阿弥陀仏を叫んだ
賃金未払いのスーパーでは、支払えと書かれた大きなマスクをして現れ、踊って歌い一分で立ち去った
レシピを盗んだ男には、生卵をぶつけて、それを写真にとった。
それで何かが変わるわけではないのです。
でも、現状を少しでも変えたいという思いはわかります。
これは韓国の若者の立ち位置がよくわかる言葉です。
この作品に描かれている底辺の弱者が、どういう立ち位置なのかがわかります。
あとがきにある著者の大人についての言及が面白いので
最後に、この言葉を紹介します。
2023 11 6
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