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書評 伊達女 佐藤巖太郎 伊達家の女性たちを描いた優れた短編集。政宗の母義姫の話しは号泣させられた。

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奥州伊達家の話しでした。
時代物短編集なのですが・・・
女性たちが主人公です。

伊達政宗の母義姫。正室の愛姫。政宗の乳母片倉喜多。政宗の娘五郎八姫。片倉小十郎の側室で真田幸村の娘である阿梅。

伊達包囲網がしかれた時の政宗の母義姫の気丈さはびっくりする。
そして、彼女は息子と伊達家のため
自分を悪女に落としてまで守った話しは読んでいて眼がしらが熱くなった。

最初は自分の存在感を見せたかったのだと思う。
息子政宗と張り合っていたともとれる。
しかし、義姫主催の宴席で政宗が毒を盛られ
次男が政宗に切られ、自分が犯人と疑われていると思った時
政宗は義姫を呼んだ。彼女は殺されるかもしれないのに息子に会いに行った。
この時の二人の会話が痺れる。

それがしは、こう考えたのです。母上が毒を盛って殺す企みを巡らしていたのなら・・・
毒殺を仕損じ、さらに、小次郎を失った今、・・・恥をさらして生きているはずはない。・・・ここに現れたことが、母上の潔白を物語っています。

そんな息子に母は、自分がやったことにしろと命じます。
母に毒殺されかけた。それを豊臣秀吉のところに行くのが遅れた言い訳にしろというのです。

この場面は痺れます。
母の家や子を思う気持ちがよく表現されているエピソードでした。

政宗の乳母片倉喜多も、また、伊達家を守ります。
政宗の留守中に現れた関白豊臣秀吉を接待中
秀吉は政宗の側室の藤姫を気にいる。
難癖をつけて藤姫を寄越せという
藤姫も行きたいと言う。片倉喜多は独断で藤姫を秀吉の元にやるのだった。

藤姫は自分がいなければ生きてはいけない女だと、政宗は思っている。藤姫が自ら秀吉のもとに行くことなど微塵も考えていない。
本当のことを言ってはならぬ。
言えば、政宗が折れる。
だから、政宗に理由を聞かれても沈黙した。
彼女は失脚し永蟄居にされるのだった。
もし、真実を知ったら藤姫を政宗が切り捨てていたら
秀吉はどうしたのか?
この乳母の行動は義姫の行動と似ている。
こういう家を思う女性の存在が伊達家を支えていたのだった。


5つの話しすべてがおもしろい。
最後の真田幸村の娘の話しもいい話しでした。
読み応えのある時代物短編集です。


2020 12/20

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