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書評  人もいない春 西村賢太 私小説だと聞いたが・・・、この人に女性を愛する資格はあるのか?。

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西村さんと言えば、芥川賞をとった時のインタビューが強烈だった。

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鬼畜キャラで売っているのだが・・・。
私小説だということは、つまり、自分のことなので・・・。
相当の変人だと思える。

いくつかの短編により構成されていて、正直に言うと惹きつけられた。
おもしろい小説です。
「悪夢」という鼠が主役の話しは計算された構成だったが、他の作品は無軌道に言葉を羅列している。感情のままに言葉という弾丸を詰め込んで目標を定めずに乱射したという感じの荒々しさが、この作品の魅力なのだ。故に、しまりがなかったり、話しの中に別の話しがあったり、まるで雑談か何かのように話しが飛ぶ場面もあった。
破壊力はすさまじい。一度、読み始めると目が離せなくなる。主人公に1ミリも共感できないし、少しも羨ましいとか感情移入すらしたくないのだが、何だかよくわからないパワーが内在していて、まるでガソリンか何かを定期的にぶちこんだように爆発している。噴火に近いかもしれない。

本の印刷所のような所で肉体労働をしていた時の社員や仲間に対する態度。意味不明だ。
喫茶店の女に一目ぼれする純粋さと、フラれた後に紹介された女に対し暴言を吐く態度。
女を性欲の処理道具のように考えているのか、傲慢さや支配したいという欲が見え隠れしている。
学歴に対するコンプレックスが文字の中からあふれ出し、言葉にできない怒りで蒸されたようになっている。
恋人の昔のアルバムを見て一人で興奮している姿は、変態性欲者だし、子供の頃の乞食のような彼女の姿で萎えたと怒るのは自分勝手すぎる。勃つか、勃ないかだけが人生なのか?。

恋人が病気になり寝込んで、看病をするも急に嫌になってキレるところは鬼畜だ。
病気の人に向かって悪態をつくなどありえない。
人間としての何か大切なものが欠落しているように思えた。そんな男が中心にいるから、小説として面白い。しかし、これが私小説。現実だとしたら地獄だ。

女を見ると、やることしか頭にない発想は、高校生で卒業すべきだ。
30も40もなって、これでは人間として男として困る。
暴力や暴言は、相手を支配という欲求であり、彼は弱い相手にだけ、それを発動する。
本当は、大切にすべき恋人に対してまでも弱肉強食の論理を当てはめて上から目線で支配を強制する。
脳みその飛び散ったイメージで麻婆豆腐が重なり合い食べれないというのに無理に彼女に食べさせようとしたり。
最高の女で毎日やりまくっていた。その女に、自分の物。いつでも抱ける女だと確定すると勃たないとか・・・。キレると、俺は中卒だ。お前は大卒の癖にクズだと罵って。そんなの学歴コンプレックスじゃないかと思ってしまう。
人間の生々しい感情が瘴気のようにモワモワしていて、それがいいのだが・・・。
毒がいささか強すぎのような気もした。
結局、自意識が肥大している残念な人なのだが、そういう人が物語の中核にいると楽しいし、内省的に自己分析したりもするのも楽しい。
読んで損はない。そういう本なのである。

2020 4/17


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