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書評 億男 川村元気 落語の芝浜の世界を土台にして、「お金」の本質に迫ろうとしたアプローチはいいが、結論が曖昧すぎてイライラした。

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 落語の芝浜という話しがある。
 富くじに当たって、どんちゃん騒ぎしたのだが、朝、起きたら金だけがなかった。
 アレは・・・夢だったのか?。
 奥さんが隠していたのですがね。
 このままじゃ、全部、飲んだり食ったりして使ってしまうに違いないと思ったからなのです。

 この世界観を使った小説です。
 3億の宝くじが当たった。
 大富豪の友人に持ち逃げされた。
 彼の「お金」の本質に迫る旅が始まるということです。
 自分探しの旅のような感じの物語です。

 元々、「お金」の本質なんて何かよくわからないし、結論もでない問題だから、物語の結論も曖昧になるので、ちょっと締まりの悪い終わり方となります。

 お金があれば幸せだ。ということは、もはや誰も信じていない。
 けれども、お金がなくても幸せだ、というのがまやかしであることも皆が知っている。


たくさんの有名人の「お金」についてのコメントが紹介されています。

うまくお金を使うことは、それを稼ぐのと同じくらい難しい。
BY、ビル・ゲイツ
お金は鋳造された自由である。
BY、ドストエフスキー
人生に必要なもの。それは勇気と想像力と、ほんの少しのお金さ。
BY、チャップリン
諸悪の根源はお金そのものではなく、お金に対する愛である。
BY、サミュエル・スマイルズ
動機はお金ではない。本当に面白いのはゲームをすることだ。
BY、ドナルド・トランプ
富は海の水に似ている。それを飲めば飲むほど、喉が渇いていく。
BY、ショーペン・ハウワ-
世間は金持ちを尊重し、偉人として認識する。
BY、アダム・スミス
お金は世界に君臨する神である。
BY、トマス・フラー
どんな人間でも金に買収されないものはいない。問題は、その金額である。
BY、ゴーリキー


友人の九十九に彼は言われる。

金が好きでないものが金持ちになれるはずがない。
大抵の人は、金を汚いものと嫌悪している。
そんな人たちが金持ちになれるわけがない。
・・・と。


お金で、愛は買えない。
誰もがそう信じている。そう信じようとしている。だが、果たしてそうなのだうか?。
きっと、お金で、愛は買える。人の心も買える。だからこそ、僕らは、お金では買えない愛や心を探しているんだ。


この言葉に、私はすごくシンパシーを感じた。
それが大切だと思った。
金で買える人や愛が溢れている世界で、金で買えない何かを探す。
それが大切なことだ。

彼は、弟の借金3000万を引き受けて
妻と娘と別居し、Wワークしている。
つまり、3000万の金に縛られている。

でも、奥さんは、お金のせいだけではないと言っている。
離婚を突き付けられ、彼は感じる。
金を言い訳にしていたと。
金がなくても、どうにかすることはできたのだ。
彼が幸せになろうとしたかどうかが問題だったのだ。

最後は、3億の金が戻ってきて
娘に自転車を買ってやるという曖昧な感じで終わる。

彼にとって「お金」とは何なのか?。
それは自分の不幸の言い訳材料だったのか?
私にとって「お金」は何なのか?。
それは生きるための1つの手段にすぎない。
本気で、そう思っている。
金がすべてだなんて言う人間は嫌いだ。

2020 6/28


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