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書評 陰翳礼讃  谷崎 潤一郎 日本家屋の薄暗さの中に、日本の美意識は存在していたのだった。

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谷崎潤一郎の文章に、大川さんの写真で構成された作品
日本の美意識がモチーフです
それは日本家屋と深く関係しているみたいです。

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光と影のコントラストというのでしょうか?
これらの写真が谷崎の評論を視覚化してくれるのです。

陰翳とは、うすくらさのことです。
日本人がなぜ、このうすぐらさが好きなのか。
日本人の美意識とは何かがモチーフでした。

日本の家屋において、トイレは別棟に存在し
そこには日本人の美意識が凝縮されているのです。

日本の厠は精神が静まるようにできている。それは必ず母屋から離れて、青葉の匂いや苔の匂いのしているような植え込みの影に設けられてあり、廊下をつたわっていくのであるが、その薄暗い光線の中にうずくまって、ほんのり明るい障子の反射を受けながら・・・

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次に、西洋の紙と日本の紙の比較の場面・・・

奉書や唐紙の肌は、柔らかい初雪の面のように、ふっくらと光線を中に吸い取る。

西洋と日本の違い

日本人に「なれ」という言葉があるのは、人の手が触って・・・自然と油が染み込んでくる・・・、われわれの「雅到」には幾分の不潔が・・・西洋は垢を根こそぎ・・・取り除こう・・・
われわれは一概に光るものが嫌いというわけではないが、浅く冴えたものよりも、沈んだり翳りのあるものを好む。

料理屋に行くと座敷にろうそくが・・・

日本の漆器の美しさは、そういうぼんやりとして薄明かりの中に置いてこそ、・・・発揮される・・・。

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書院の障子のしろじろとしたほの明るさには、ついその前に立ち止まって時間の移るのを忘れるのである。

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思うに西洋人の言う「東洋の神秘」とは
かくの如き暗がりが持つ
不気味な静けさを指すのであろう

暗闇における金について・・・

たった今まで眠ったような鈍い反射していた梨地の金が、側面へ廻ると、燃えるように輝いているのを発見して、こんなにくらい所でどうしてこれだけの光線を集めることができたのかと不思議に思う・・・

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本作には、日本人の美意識が日本家屋に住んでいることの影響を多大に受けているとの指摘があった。
伝統芸能の能や歌舞伎の衣装。坊主の袈裟の色。そして、女性の服装やお歯黒。
日本には西洋とは異質の美があったのだった。

子供の頃から洋風の家に住んでいる。それが当たり前と思っている僕の世代には、少しわかりづらいのですが、こういう風に説明されると「なるほど」と腑に落ちるのです。


2021 6月19日




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