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感想 じんかん  今村 翔吾 この男、人がなせぬ大悪を一生の内に三つもやってのけた。と言われた松永久秀の半生を描いた作品。


松永久秀というと、信長の大軍に包囲され
国ひとつの価値のあるという茶器「平蜘蛛」とともに爆死するのが見どころだが、それは描かれていない。
この話し、エンタメ要素が強く楽しかった。
松永のイメージが激変する内容になっています。
正直に言うと、リスペクトしすぎのように思える。

とにかくカッコいい。

松永というと、悪人で、信長を二回も裏切った男として有名。
彼の行った三悪とは、

主家(三好家)乗っ取り。

室町幕府第13代将軍足利義輝の暗殺。

東大寺大仏殿焼き討ち。


しかし、本書を読むと、彼は三好元長に見いだされた恩義と
元長の理想
それは堺の町衆たちが統治していた、あの民の統治する国という理想
それを実現しようとしていて、最後の最後まで三好家をかばい続けた
良き家臣であったのです。

将軍暗殺には関与してなくて、息子の独断
息子の罪は、自分の罪ということで彼はそれを引き受けたのでした。

東大寺大仏殿焼き討ちを正当化する場面は、多少無理があるが、滅びるか攻めるかしかなかった。
敵がそこに陣を構えていたからです。

松永は、三好元長の理想を受け継ぎ
民の統治する世界
堺の町のような世界を理想としていた
それは武家のない世界であり、争いのない世界だった。

しかし、人は戦います。
戦いをやめない。

人間の本質を語っている場面があり
とても興味深かった。

「それが百年後の民にいくら有益であろうと、今の暮らしが奪われれば民は怒り狂う。 結局のところ、民はみな、快か不快かだけで生きている


これは現代社会批判も兼ねているように思えた。
化石燃料を無責任に大量消費し、次世代に気候変動という名の悪を押し付ける
今しか見ていない近視眼的な考え方

つまり、民はみな、快か不快かだけで生きている
自分のことしか考えてない

ウクライナの戦争をめぐるやり取りを見てたらわかります。


それが人間の本質であり、それと松永が戦っていたというのが
この物語の骨格となります。

松永は、そんな理想的な人だったのだろうか?
僕は疑問に思う。

違う解釈の欲望に、まみれた松永の小説が読みたいですね。
たぶん、そちらのほうがリアルです。



2023 6 17



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