書評 娼年 石田衣良 青年が売春をする話し。空洞だった彼の心に、ゆっくりと何かが詰まってく感覚が心地良い。
*原作が映画化している小説を読む企画をしています。
タイトルですが、少年でなく、娼婦の娼年なのが、この作品の内容がよくわかります。
つまり、売春をしている青年の話し。
最初、彼の印象は空洞のように何もないようでした。
若いのにセックスも女も興味がない
どうでもいい
というか、何もかもがどうでもいい・・・
虚無の空洞みたいな感じです。
そんな彼をある女性がスカウトします。
本当はテストに不合格だったのですが、彼女の娘が気にいり合格となります。
彼の性格を、売春の女社長がこう見ています。
ふたりですれば素敵なことを、あなたはいつも一人でしている。退屈になるのも無理ないな
・・・まずは女性やセックスを退屈だなんて思うのをやめなさい。人間は探しているものしか見つけない
そうです。
人間は見たい物を見て、探したいものを見つける生き物なのです。
売春のシーンはかなりリアルと生々しかった。
余命短い夫が自分の目の前で妻をレイプさせるとか、おしっこをしているところを見せるので興奮するとか、その辺にいる浮浪者っぽいおっさんと彼と若い客の3P。客は汚いおっさんにやられるのが本当は興奮するとか・・・。
かなり細かいところまで描かれています。
例えば、最初の客・・・
ひろみさんですが・・・
30代後半の主婦
文学的な表現で胸の特徴を描写しています。
こういう表現が好きです。
張りは失われているけれど、指を刺したらどこまでも埋まっていきそうな際限ないやわらかさ
思わず想像してしまいます。
性描写を文学的に表現するのもおもしろい。
そんな彼が人気が出るのには理由があるのです。
それは、どんな相手でも許容してしまう優しさ
どんなド変態相手でも嫌な顔1つしない
理解しようとする。文句も言わない
これは簡単なようでできないことです。
彼は娼年の仕事をこう表現しています。
女性ひとりひとりの中に隠されている原型的な欲望を見つけ、それを心の陰から実際の世界に引き出し実現する。それが娼年の仕事だと・・・
最初の空洞のようなイメージが、この仕事をしていくうちに、だんだんとその中に何かが入ってきているような感覚があるのです。
これが、この小説の魅力だと思います。
でも、少しエロいですよ。要注意です。
2020 9/13
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