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2023年3月の読書日記

読んだ本の数:12
読んだページ数:3823


今月のおすすめ本は五冊です。


三月に亡くなった大江健三郎さんから一冊
死者の奢り・飼育(新潮文庫)
短編集ですが見事。読み応えがあります。

映画化の原作から、池井戸さんの初期の名作
シャイロックの子供たち
お金に支配された人たちを描いた作品でした。
なかなかの力作短編集です。

瀬尾まいこさんのそして、バトンは渡された (文春文庫)
たくさんの親に育てられた子供の話し
親の数だけ愛情を受けてきた物語です
面白かった

新刊の二冊

時代物では、今村さんの平家物語である
茜唄(上) (角川春樹事務所) 茜唄(下) (角川春樹事務所)
上下二冊と長編ですが、今までにない平家物語の世界でした。

sfから一つ
新川帆立さんの短編集
令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法 (集英社文芸単行本)
架空の法令なのですが、不思議な世界。世にも奇妙な物語の数々。

この五冊はかなりのおすすめです。





以下、簡単な感想


リブリアの魔女感想
魔女の宅急便が好きなので読んでみた。少し全体的に盛り上がりに欠けるが、最初の導入、師匠のキャラ設定から弟子が修行に入るプロセスは魅力的でよかった。少し中だるみがあって、試験の旅。三つあるが、巨大イカとの闘いとかは面白い。師匠の仕事は魔導書作りなため、その製作過程のディテールが細かくそこが本書の魅力の一つなのかと思った。冒険の物語としては、それほど盛り上がるわけでもなく、ようするにワクワクドキドキの要素が不足していた。惜しい。
読了日:03月02日 著者:日野 祐希

シャイロックの子供たち (文春文庫)感想
課長代理の失踪と100万円の現金の消失。この二つの出来事の真相が最終的にわかる短編集。ある銀行の支店の話し。主人公は毎回違う短編だが、読んでて感じたのは銀行って何?という感覚だった。僕は絶対に今度生まれ変わってもバンカーにはなりたくないし、子供ができてもバンカーにはしたくないと思う。銀行が顧客に対して存在しているのではなく、自分たちの保身や出世のために個々の人たちは働いている。そんな印象を持ってしまった。
読了日:03月05日 著者:池井戸 潤

ガウディの遺言感想
スペインのガウディ建築を舞台にしたミステリーです。逆さづりの死体、父の失踪、ガウディの残した遺書。謎めいた展開なのですが、主人公の女性のキャラがあまり魅力的ではなく前半は少し厳しい展開ですが、ラストの怒涛の伏線回収で一気にテンションが上がりました。おもしろいと思ったのは、アリバイ崩しに、スペイン語ともう一つの地方言語では時間の表記が違うという証明。そこで恋人が犯人と思いきや、もう一発あってという、ここが盛り上がりました。ガウディの遺言についても、これしかないという感じで良かった。
読了日:03月07日 著者:下村 敦史

すぐに結果を出せる すごい集中力感想
気になった事柄はマルチタスクはできないということ、ながら勉強などは効率が悪いので避けたいと感じた。事前に、やるべきタスクを決めておき、粛々とそのタスクに向き合っていれば、不安の空回りを防ぐことができ、集中して目の前のタスクに取り組むことができますという考え方も賛同できます。あらかじめやることを決めておく、それしかできない環境に自分をはめこむなどが大切なように思いました。
読了日:03月09日 著者:荘司雅彦

そして、バトンは渡された (文春文庫)感想
父親が3人と母親が2人いるのですと聞かされると親戚中をたらいまわしにされた不幸な人のように思われるのだが、彼女はとても幸せだった。最後の父親の愛はとても深くて感動すらも感じた。血の繋がりなんて、そんなものは少しも意味ない人の思いがすべてなんだと感じた。二人目の母親であるリカさんの言葉がいい。これは親になる意味を語った言葉だ。「明日が2つになる。未来が倍になる」。それが誰かの親になるということだというのだ。なるほどと思った。たぶん、それを彼女も感じていたのだ。それぞれの親の愛を浴びて生きた彼女は素晴らしい。
読了日:03月12日 著者:瀬尾 まいこ

エフォートレス思考 努力を最小化して成果を最大化する感想
がんばれば成果がでるとは限らない。効率を重視した取り組み考え方である。最小の努力で最大の効果を生むという方法。雑念を取り除く、集中する、ゴールを明確に決めておく。勝手に回る仕組みをつくる。などなど、少し抵抗はあるが、なるほどと思うような考え方の数々でした。さて、どれだけ実践できるのかな。
読了日:03月14日 著者:グレッグ・マキューン

死者の奢り・飼育(新潮文庫)感想
大江さんの追悼ということで初期の未読作品を読んでみました。極めて政治臭が強い短編集、そこらへんに戦争というのか戦後の匂いがだだ漏れしていました。死者の奢りは、やはり強烈で死体を移動させるバイトの話しの中に、死体を物として見ている。その死体のバイトをしていることへの差別みたいなのを感じた。飼育は面白いが人は簡単には靡かない。飼育などできるわけがないのだと感じた。好きなのは、人間の羊という作品。バスで米兵に理不尽な暴力を受ける話し、その後の執拗に迫ってくる正義感むき出しの教師が滑稽だった。
読了日:03月16日 著者:大江 健三郎

令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法感想
ディストピアというのか、架空世界というのかミステリー的なSFという感じだった。動物に人間と同じような権利が付与されている動物裁判の最後の展開はかなり面白かった。禁酒法で家庭で酒を造るのが当たり前になっている自家醸造の女のオチはなかなか鋭角的で鋭かった。健康なまま死んでくれは、近未来にありそうな話し。最後のYUKICHIは、紙幣がなくなった世界。かけ麻雀が合法な世界である接待麻雀士は、新川さんらしいオチ。どれも新感覚のミステリーであり、たぶん、読者を選ぶのかと思います。僕は好きです。
読了日:03月19日 著者:新川 帆立

覇王の轍感想
相場さんの作品は読み応えがある。本作は警察小説だ。北海道は一種の独立国みたいで、警察も鉄道会社も理不尽。警察キャリアの樫山順子が、この独立王国の不正に挑む形。二課の課長だから、横領とかの不正を追う。その事件と、彼女が不審に感じた殺人事件が重なっていき、話しはますます面白くなっていった。北海道の鉄道が赤字で、とくに新幹線はガラガラだという話しから、その拡張工事が予算の関係で短縮し・・・というところから、北海道の暗部が見えてきた。そして、最後の最後にあの男と向き合い敗北する。あのやり取りは迫力あり。
読了日:03月21日 著者:相場 英雄

茜唄(上)感想
下巻に感想あり
読了日:03月26日 著者:今村 翔吾

茜唄(下)感想
平家物語を今村流にアレンジした話し、史実を踏まえながら、想像もぶち込み、ラストまで一気に・・・。主人公の平知盛の目を通した平家物語は印象が今までと違い、平家より目線で見ると、この政権交代はとても複雑な感情が入り乱れます。戦闘シーンの描写が秀逸で楽しい。壇ノ浦の合戦の前に、知盛と義経が合うというシーンはしびれます。そして、最後の壇ノ浦の合戦の新解釈。そこにはまったく違う形の平家滅亡が見えてきて、平家物語を編んだ本当の意味が頼朝を卑劣な男に見せることで際立っていました。エンタメとしても一流でした。面白かった。
読了日:03月26日 著者:今村 翔吾

人は聞き方が9割感想
話し方のスキルは企業において重視されるが、聞き方はあまり言われない。でも、この本を読んでいると、話しを聞くことのほうが話すスキルよりも重要ではないかと感じた。本書は、聞き方の方法を述べた良書であります。とてもわかりやすい表現で示されているので腹に落ちます。本書を読むと今までとは違った価値観が手に入ったような気分にさせられます。とても良い本です。
読了日:03月28日 著者:永松 茂久

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