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不登校・発達障害のある姉妹をお引き受けしたら、学校に行くようになった

二人の女の子との出会い

2021年7月、体験レッスンのお申し込みが入りました。
発達障害のある小3の女の子です。
1週間後にお約束をしたその日、お母さんと女の子の二人だと
思っていたのですが、中3のお姉ちゃん、小1の妹さんも一緒です。

ご兄弟が一緒に来られることはよくあるのですが、
事前にお伝えしていただいていることが多く、思いがけず
レッスン室が賑やかになりました。

いえ、嘘です。
4人で来てくださったのに、子ども達は誰もご挨拶をしてくれません。
中3のお姉ちゃんが「こんにちは」と、小さな声でゆってくれたっきり、
部屋の中はシ~ンとなりました。

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不登校+発達障害

5人兄弟で、他のお子さんも軽重はありますが、不登校だったり
発達障害があったりとのことでした。
登校できるようになったお子さんもいるそうです。

実は私は、この春から、国語の先生の免許と、長年の経験を活かし、
ピアノと知育を合わせた60分コースを開講していました。
じっくりピアノにも知育にも向かえて、子どもも私も、そして保護者も
様々な改善策を話し合いながら進めることができて、
とても良い効果を上げています。

小1の妹さんも通わせたいと、60分コースを希望されるとのことでした。

でもしばらくすると、ささいなことで小3のお姉ちゃんが泣き始めました。
よくあることなのだそうです。
声をあげず、涙が次々に溢れ、お母さんの後ろに隠れてしまいました。

もう一人の小1の女の子も、お母さんの足元に寝っ転がって
ダラダラしています。

うそ・・?
わたし、教えるの?・・教えられるの?

学校に行っていない。少し知的遅延がある。しゃべらない。
(発語がないのではなく、家以外でしゃべろうとしない)
すぐ泣く。大丈夫?お引き受けして大丈夫?

発達障害というより、他に何か問題があるのかな?
・・・全く思いもしなかった体験レッスンの展開に、長年の経験も自信も
吹き飛び、どうやってお断りしよう?と、私は焦り始めていました。

寝っ転がってダラダラしている下の子にも、
レッスンに通わせたい気持ちがあるのであれば、
少し厳しく話してもいいか?お母さんにお伺いをした上で、
しっかり伝えました。
「人のお家に来て、ご挨拶もしないで寝るなんて失礼です!」

もちろん想定内の号泣!

あぁ~時間ばかりが流れる・・😅

それでもお母さんは、現実を打破しようと何年もがんばって来たのです。

そして、育て方が悪いだとか、もっと褒めろだとか、
反対に叱れだとか、いろんな所でいろいろ言われ、
混乱してるみたいにお見受けしました。

二人とも、幼いころに病気や大けがをしたことがキッカケだったり、
学校生活で我慢をし過ぎた多くの出来事で、不登校になったらしいのです。

ほとんどをホームスクーリングで補い、行っても行かなくても、
学校まで毎日送り届けるのだそうです。
二人とも体操着を着ていました。

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口をついて出た「お引き受けします」の言葉

そうこうしているうちに、次の生徒さんが来てしまいました。

もう体験レッスンの時間は過ぎています。
私は自分でも無意識に(今でも何故こんな風に言ったのか、
自分の気持ちをはっきりとは覚えていません)

「お母さんも辛い想いをされてきたのですね。
いろいろなことを言われても、お母さんの努力や辛さは
他人にはわかりません。わかりました。とりあえず3か月、
お引き受けします。来週からどうぞお越しください。」

と、言っていたのです。

その夜、お母さんからメールが届きました。

「初めて他人に気持ちをわかっていただいて、嬉しくて、
帰りの車の中で泣いてしまいました」

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しゃべった妹さん

翌週からレッスンを開始しました。
妹さんの方は、お母さんが退室すると、すぐに小さな声で
話してくれるようになりました。
お母さんがいると恥ずかしくて、話せなくなるのだそうです。

これ、なんとなくわかります。
私と二人だけだと、とてもがんばれるのに、
お母さんがいるとダラダラしてしまう子。わりと多いのです。
恥ずかしいのかな?甘えてるのかな?・・わかりません。

すぐ夏休みに入ったので、鍵盤ハーモニカを練習したり、国語の本を
読んだり書いたり、新しいテキストに取り組んだり。。
進み始めました。
お母さんもお家でしっかり宿題をさせてくれます。

夏休みが終わってからは学校にも行き始め、
いろんな話をしてくれるようになりました。

知的遅延があると聞いていましたが、記憶力も理解力も高く、
じっくり取り組みさえすれば伸びると感じています。

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3か月目の奇跡 それは音楽の効果だった

しかし、お姉ちゃんの方は、全くと言っていいほどお話をしてくれません。
少し何かを促しただけで涙が溢れます。

ある日、ピアノはもう少し先かなあ~?と思いながら、
ピアノの前に促してみるとスンナリ座ったので、歌を歌うことにしました。
ぞうさんだったかな?きらきら星だったかな?
私は独唱を覚悟していましたが、なんと小さな小さな消え入るような声で
歌ってくれているのです。

あ~音楽の力の偉大なことよ。

それから指番号を教え、真ん中のドレミを教え、しているうちに、
この子はお母さんに、「わたし、ピアノ好き。ピアノやりたい!」
と言ってくれたのだそうです。
バイエルを導入し、本格的なレッスンが始まりました。

幼い頃の怪我が元で、胃のほとんどを切除しています。
そのせいか、見た目は少し弱弱しい感じはするものの、
打鍵力はしっかりしていて、きっと芯は強い子なのだと推測しています。

それまでは、国語も算数も、何を尋ねても答えてくれず、
ほぼ筆談のような状態が続いていましたが、ピアノや歌の後は、
私の質問にも答えてくれるようになりました。

国語も、平仮名がすらすら出てこなくて迷っていましたが、
ずいぶん書けるようになってきました。

「ここに来てよかった」
こんな嬉しくありがたい言葉を、何度もお母さんからいただきました。

お約束の3か月まで、あと一週間という時期でした。

何故?話してくれたの?

こうして、話してくれるようになったこと、
そして、教科の学びも素晴らしく進み始めたこと。

何故かな?と。

それはお母さんが変わったのだと思います。

私が3か月という許容の中でしたが、ご自身が受け入れられたと
感じてくださったことで、お母さんのやる気と安心と喜びが
子ども達に伝わり、その努力が実を結んだのだと思います。
間違いありません。

そして、音楽の力。

私は今回ほど、ピアノの先生をしていて良かったと
心から思ったことはありません。

お母さんにも、そう、伝えました。

そして冗談ぽく、
「〇〇ちゃんは、私が敵ではないとわかってくれたんだね」
と、お母さんに言いました。

今の目標は、「3か月がんばる」から、
「ピアノが弾けるようになって、それが自信になって、
明るく元気に学校に通う」に変更されています。

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