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速いパッセージで躓いた時に修正すること

ピアノを弾いていると、どうしても速いパッセージが上手く弾けないということがあるものだ。そんな時は、闇雲に同じことを繰り返しても、手が疲労するだけで、時間が無駄になる。何をどう見直せば、効率的に、短時間で弾きこなせるようになるか、考えてみる。

前提として、どれほど複雑で、入り組んだ音型の連なりでも、最小単位まで分解すると、必ず基本テクニックで弾ける音型となる。弾けない弾けないと言っている場合、まだ分解が足りない。試しに、隣り合う2音だけ弾いてみると、簡単に弾けるはずだ。

部分部分は弾けても、全体が上手く繋がらない場合、相当な練習をしたにも関わらず、一向に上達しない場合、以下のような部分を見直してみると、すんなり弾けるようになることがある。

1、運指
指使いに無理があると、いくら練習しても弾けないことがある。楽譜に記載されている運指が、常に万人に最適とは限らない。手の大きさはもちろんだが、指の長さの比率も重要な要素だ。例えば、指をくぐる時やまたぐ時、支点とする指を3にするか4にするか。オクターブの連続を1と5で通すか、4も使うか。アルペッジョを弾く際、こまめに手を返しながら弾くか、手を広げて最小限の返しだけにするか。アクセントをつけやすい指使いを優先するか、ミスタッチを防ぐことを最優先の運指にするか。さらに、左右の手を交互に使う方法や、左右を入れ替えることも可能だ。特に、片方の手が割と暇な部分であれば、暇な方の手を参加させることによって、驚くほど弾きやすくなることがある。

2、鍵盤を押さえる場所
ピアノの鍵盤は、白鍵で15cmほど、黒鍵で9cmくらいの長さがある。このどの部分を弾いても問題はない。鍵盤は左右の幅は短いが、前後にはこんなに長いのである。この長さを最大限に活用すると、楽に弾けるようになる。速いパッセージを弾く場合、弾いた箇所を線で繋いだら、綺麗な流線形になるイメージだ。いきなり奥に突っ込んだり、黒鍵を弾く前に白鍵の手前側を使ったりすると、動きがスムーズに繋がらない。音の詰まった和音を弾く時も、真ん中の指を置く位置を調整すると、非常にやり易くなることがある。

3、手の傾き
人間の手は、上下左右前後自在に傾けられるようになっている。動きに応じて、最も安定して弾ける傾きを作ることが重要。そしてこれも、万人に同じ形が最適という訳ではないので、自分に合った形を探す必要がある。トリルがスムーズでない時も、どちらかに、若干手を傾けると綺麗に弾けることがあるので、やりにくい時は色々試してみる価値あり。無意味にリズム練習するより、ずっと効率的かと思う。

4、1(親指)の運指と位置
5指の中で最も扱いが厄介なのが、1である。これをどう使いこなすかが、上手さを左右する。この指は他の指では難しい奏法を担える反面、他の指より制約を受けるという、曲者である。例えば、速い連続パッセージで、無闇に黒鍵に1を使うと非常にやりにくい。しかし、常に支点として使える指であり、広範囲の動きが可能だ。また、隣り合う2音を同時に押すことも出来る。さらに和音を弾く際、1の指は無理なく内側に回して使える。(例えばド♯レラという和音を弾く時、215という運指で使えるということ。これは125でも弾けるが、前者は鍵盤の手前側を、後者は奥を弾くことになるので、前後の動きなどからよりスムーズになる運指を採用する) いかに親指の特性を活かせるかというのは、速いパッセージでも大事。

5、ブレスを挟む
これは、管弦楽器の速いパッセージが登場する曲を聴いてみると、参考になる点だ。ピアノを弾く手にもブレスは必要。ただ物理的に感覚を空けるというよりも、フレージングの始まりと終わりを意識して、ダラダラ弾かないということ。

6、音を抜く
常に勧められるものではないが、直前に難解な楽譜を貰って、なんとか仕上げなければいけないような場合。無理矢理楽譜の音全てを拾って崩壊するよりは、全体の流れを優先し、潔く音を抜いた方が良い。音を抜く場合、運指も変わってくるので、なるべく早い段階で、できれば譜読みの時に省略する音を決めてしまう。特に伴奏譜は、オーケストラの楽譜をピアノに移しただけのような、全くピアノの特性を考えられていない楽譜が多々ある。手の構造上、そのままだと演奏不可能なものもあるので、音を抜いたり、移動させたり、工夫が必要。

客観的に手の動きを観察してみると、どこに改善の余地があるか見えてくる。そして自分の手の特徴、指の長さの比率や、動きの良い指、それぞれの指が何度の音程まで掴めるか、など分かっていると、修正がしやすくなる。
何かの参考になれば幸いです。


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